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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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技の名

 案内された場所は、訓練場……というか、敷地の端の方にある空き地とでも言えばいいのだろうか。土には何やら実験をした形跡らしい黒く焼け焦げた箇所とかも見ることができるのだが――


「さて、やる前に二つばかり確認しないといけないわね」


 ソフィアとヘッダが向かい合う形で立つ。俺とクウザやシルヴィは彼女達の横に立って事の推移を見守る。


「一つは、ソフィアさんが精霊の力を融合させた結果、どういう技を編み出すかということ」

「どういう、技?」

「融合した力を活用し、どういう形に昇華するのか……例えば魔力を凝縮して魔法とするのか、それとも剣に力を乗せて技とするのか」


 ――ソフィアとしては、もう答えは決まっているだろう。


「技で。この場合、魔導技ということになるのでしょうか?」

「そうね。となると剣に力を注ぐわけだけど、その剣だとちょっと心もとないかもしれないわね」


 ソフィアの剣を見ながらヘッダは言う。まあ剣についてはいずれ魔王に対抗するべく作成するのは決定しているので、どうとでもなる。


「よし、魔導技を最終目標としてやるわけね。なら二つ目」

「はい」

「名前を決めましょう」


 沈黙が生じた。言っている意味がわからない……名前?


「名前、ですか?」

「魔導技として融合した精霊の力を利用するのでしょう? 技名はあった方がいいわよ」

「必要、ですか?」


 ソフィアの問いかけに、ヘッダは「もちろん」と答えた。


「名前というのは非常に重要なのよ。例えばこの場にいる人なら『ホーリーショット』と聞けば光弾を生み出す魔法だと理解しているはず。名前をつけることによって技や魔法のイメージができる。新たな技や魔法を編み出す時、名称をつけた方がイメージしやすい分完成が早まるなんて研究結果もあるくらいなのよ」

「へえ、そうなんですか」

「というわけ、ソフィアさん。名前決めて」


 言われ、彼女は沈黙する……まあ、無理もない。唐突に名前を決めろと言われても、戸惑うしかないだろう。

 静寂が周囲を包む。ソフィアは僅かに俯き何事か考えている様子なので、どうやら指示を受けて必死に考えているらしい。


「名前というのは、結構重要よ。自分が納得するものにしなさいね」


 その言葉と共に見せるヘッダの様子は、過去に何かあったような雰囲気……もしや実体験なのだろうか。

 ソフィアとしては、そんな態度をされては必死に考える他ないわけで……あ、頭抱えて悩み始めた。


「始める前からつまづくとは予想外だ」


 シルヴィが言う。俺も内心同意した時……突然ソフィアが俺達へ向いた。


「……あの」

「いや、ボクはそういうネーミングセンスないから」

「私はほら、魔法はいけるが技はほら、専門外だから」


 二人して見事に逃げる。となると当然、ソフィアの視線は俺に向けられる。


「ル、ルオン様はどうですか?」


 そんなすがるような目で見られても困るんだけど……さすがに俺も咄嗟に思い浮かばないぞ。


「もしもの場合、例えば好きな物語の技名とかから拝借するのもありね」


 ヘッダが語る……って、おいおい。


「似せて名前をつけたりすると、逆に気恥ずかしくなって駄目になったりするのよ」

「……実体験ですか?」

「聞かないで」


 ヘッダは目を逸らす。教授という肩書だが、元冒険者であるためか色んな思い出をお持ちのような。

 しかし……物語から拝借するといっても。当然『エルダーズ・ソード』の世界における名称はそのまま現実でも同じなので、拝借する以前の問題である。


 じゃあ他に……と考えたところで、一つ思いついた。


「何か浮かんだようね」


 目ざとく言及するヘッダ。結果、ソフィア他仲間達から注目を集めてしまい……俺は、口を開かざるを得なくなった。

 けど、一つだけ浮かんだ。それはゲームにおける『エルダーズ・ソード』の、副題。


「……ス」

「ス?」

「スピリット……ワールド……」


 精霊が多く住む大陸ということで、そうした副題が付けられていた。実際主人公達は大なり小なり精霊の力を借りて戦っているわけだし。


「それ、どこから引っ張り出してきた名称だ?」


 シルヴィの問い掛けに、俺は頭をかきつつ答える。


「……よく俺が話す物語があるだろ。それの副題だ」


 その言葉でソフィア達にも理解できたらしく、シルヴィも「なるほど」と声を上げた。

 ソフィアもなんだかそれに納得している様子で……ここでヘッダが述べた。


「うん、ソフィアさんが納得しているみたいだし、いいんじゃないかしら」


 いいのかそれで? 俺が言い出したためなのか、それとも物語の副題だから納得したのかわからないけど……とりあえず、決まったようだ。


「はい、というわけで魔導技改め『スピリットワールド』の訓練を始めるわよ」


 そして改めて……ソフィア達の訓練が始まった。






 さすがに開始して一日目でどうにかなるようなものではなく、絵的にはソフィアが剣に魔力を込め、それをヘッダが検証するというのを繰り返す地味な作業。シルヴィは早々に飽きたのか「敷地の中を見回りたい」と言い出し、案内役としてクウザが同行。ちなみに二人が戻って来るまでに一時間くらい経過した。


「ルオン、様子は?」

「見た目はまったく変わっていないな」


 シルヴィの問いに、草むらに座り込んだ状態で俺は答える。


「そっちは何か目新しいものはあったのか?」

「いや、敷地は広くて探索に時間は掛かったが、興味をそそられるようなものはなかったな」

「剣士のシルヴィにとってみれば、研究機関である以上仕方がないな」


 クウザは言うと、ソフィア達の訓練風景を見ながら、俺に言う。


「ただ……一つ気になることが」

「何だ?」

「人が、ずいぶんと少ない気がしてね」

「学生が少ないってことか?」

「特に教授がほとんど見当たらない。講義も結構な数が休講しているみたいだが……」

「それは当然ね」


 ヘッダの声。目を向けると、ソフィアと共に俺達へ近寄ってくる。


「ひとまず休憩にするわ……で、クウザ君。あなたの言う通り、今人が少ないのよ」

「何か原因が?」


 問い返したクウザに対し、ヘッダは一度黙ってしまった。話しにくいことなのかと思っていると、こちらを窺うような目をしながら、言った。


「……ま、アカデミアの関係者もいるからいいかな。けど、私が話したというのは言わないでもらえるかしら?」

「構いませんよ」

「実は近日中に、大規模な魔族討伐があるのよ」


 魔物、ではなく魔族……視線を送っていると、ヘッダは続ける。


「ナテリーア王国は現在まで、魔族にどうにか侵略されずにすんでいる。けど、魔族の攻撃がゼロというわけではないの。魔族側は単純に軍勢を率いて攻撃するだけでなく、密かに領土内に侵入し拠点を作成。魔物の数を整え、王国領土内で一斉に攻撃を仕掛けようという動きがあるみたい」


 ゲリラ戦みたいな感じだろうか……同時に外からも侵攻するようにすれば、ナテリーア王国側としても厄介だろう。


「で、今はその対策に教師達も駆り出されているというわけ」

「へえ、そうなんですか」


 相槌を打ったクウザは、俺に目を向けた。物語の中にこの話があるのか――という確認だろう。

 しかし俺は首を左右に振る。ナテリーア王国自体が魔族と戦っているという事実はゲーム上に存在していたが、どういう戦いがあったのかというのはほとんど語られなかった。


 一応南部侵攻に際し、カナンの要請を受けナテリーア王国も宮廷魔術師を中心とした援軍を寄越したはずなのだが……活躍をした、という話は出てこなかった。


 俺は口元に手を当てて考えてみる……魔族の侵攻を防いでいるという事実があるのに、ゲーム上では目立った活躍が無い。描写が足りなかっただけなのか、それとも何か理由があるのか――


「どうしたのかしら?」


 ヘッダが問う。俺は「何でもありません」と答えはしたが……クウザは嫌な予感がしたのか、どこか険しい表情を見せていた。


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