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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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海へ――

「よければ、一緒に戦ってくれないだろうか?」


 俺の誘いに、クウザはこちらを見返し、沈黙する。

 気付けば街道の真ん中で俺達は立ち止まっていた。シルヴィやソフィアはクウザの答えを待つ構えのようで、見守るような雰囲気。


「……確認だが、そちらの目的は魔族――ひいては魔王を打倒するということでいいのか?」

「どこまでできるかはわからないけどね」


 俺は肩をすくめ、クウザに応じる。


「それに魔王と戦うには、大陸の人々の力を結集する必要がある……まずは、大陸各地で暴れまわっている魔族を倒すことが、当面の目標だと思う」

「なるほど、わかったよ……私もその目的と合致する。よろしく」


 ――こうして、クウザが仲間になった。南部へ色々な理由で来たわけだが、彼と出会うことは想定していなかったが……ともかく、今後の戦いで活躍してくれるだろう。


 俺達は再び歩き出し、町へと向かう。その途上、シルヴィがクウザへ質問した。


「クウザはなぜ、一人で放浪しながら魔物などを倒していたんだ? 魔族などに対し、恨みがあったのか?」

「そう深い理由はないんだけどな……旅をし始めたのは魔法の修練が理由だったけど、そうなったら当然魔物と戦うことになった。で、色々と騒動……シルヴィも関わった騒動などを解決するなどしていたら、いつのまにか『放浪の魔法使い』などと言われるようになった」


 ――深い憎悪といった、魔族に対する感情はないということなのだろう。


「ただ、元々人助けをしたいという思いから魔法使いとなった身だからさ。性に合っていたのは事実だな」

「……ずいぶんな理由だが、これからさらに激しい戦いになる。覚悟はできているのか?」

「無論だ」


 即答。理由はどうあれ、彼自身戦い抜く覚悟を持っているのは間違いなかった。


「さて……話は変わるんだが、お二人さんは剣を手に入れにここまできたんだよな?」


 クウザはソフィアとシルヴィに質問。二人は小さく首肯する。


「問題は、その後だが……」

「情報を集め、大陸の状況によってどう動くかは判断しないといけない」


 彼の言葉を遮るように、俺は口を開いた。


「ただ、まだやることは残っている」

「それは?」


 俺はソフィアへ視線を流した後、告げる。


「精霊との契約……最後に残ったサラマンダーの所へ行き、契約を」


 サラマンダーは大陸中央部……ただやや北よりに位置する場所に住処が存在している。さらに近い場所に神霊フェウスがいるとされている。必ず行かないといけない。


「そうか、サラマンダーと……それなら一つ提案がある」

「提案?」

「ソフィアさんは剣技と魔法両方使うんだろ? その中で精霊と契約しているのならば魔導技も使用するはずだ」

「そうですね」


 ソフィアが頷く。するとクウザは笑みを浮かべた。


「私はサラマンダーの住処があるナテリーア王国のアカデミア出身なんだけど……精霊の力を効率的に引き出す手法を研究する人物もいる。もしよかったら、そちらにも寄ってみないか?」


 ――ナテリーア王国とは、大陸東部に存在する国家。アカデミアが存在する国は多いが、この国のアカデミアは大陸の中でも屈指の規模を誇っている。その証拠に宮廷に所属する魔法使いの数は大陸一であり、そのせいもあってか幾度も魔族の侵攻を阻み、魔族に制圧されず存続している国家の一つだ。


 魔族側も強国であるのはわかっているので、相応のリソースを投入している。結果国自体は今のところ大丈夫だが、他国を助ける余裕はない……ゲーム上ではそういう設定だったし、現実となった今もそういう状況だ。


「国は、大丈夫なんですか?」


 ソフィアが尋ねる。クウザはそれに小さく頷き、


「今のところは魔族を追い払うことができているらしい。町などが制圧されたなんて情報もないし……」

「その辺りも、現地へ赴き確認しなければならないかもしれませんね」

「かもね」


 ソフィアの言葉に相槌を打ったクウザは、俺達に「どうだ?」と尋ねてくる。


 ふむ、そうだな……ソフィアは剣技を中心にして現在戦っている。今更魔法をメインにするようなことはないので、アカデミアへ行って魔法を修練するといったことはあまり考えていなかったが……精霊と契約する以上、その辺りを強化できる余地はあるのか。 


「確かに、精霊達の力を有効に引き出すことができれば……さらに技の威力などが上がるかもしれませんね」


 ソフィアもクウザの説明に納得の様子。シルヴィも同意見のようで――ここで俺が話し出す。


「確かに、その方針でよさそうだな」

「なら、決まりかな」

「ただ、一つ疑問がある。そっちが率先して提案するのは、なぜだ?」

「彼女は技量的にもかなりのものだろ? そうした人物が精霊の力を引き出した結果どうなるのか……直に見たいと思ってさ」


 つまり好奇心というわけか。この辺りはアカデミアに在籍していた魔法使いだからこその考えだろう。


「そうか……ソフィア、それでいいか?」

「はい」

「なら、決まりだな。次の目的地はサラマンダーの住処と、ナテリーア王国のアカデミアだ」


 ――クウザに対し、ソフィアの素性などをいつ話すかという問題もあるが、そう急ぐ話でもないだろう。旅の途上、適切なタイミングがあればその時に語ればいい。


 剣が完成した後、南部を離れ今度は北に向かうわけだが……現状五大魔族と戦うようなイベントは発動していないし、フィリやエイナ達が動き出している様子もない。当面は大丈夫そうな雰囲気。


 もしサラマンダーの住処へ向かう途中に何かが起これば、都度対応すればいい――ただ、他にもイベントはある。その中で介入したいものもあるので、イベントが発動するタイミングを見逃さないようにしないといけない。


 ともあれ、今後の方針は決定。しかし剣の完成までは時間もあるため少しの間は南部に滞在することになり……その間に、俺はやらなければならないことがある。


 水王アズアとの、決戦だ。






 洞窟を攻略したその夜、滞在一日目の時と同様宿を抜け出し港へ。そしてアマリアから「居所がわかった」と情報を得て――その翌日、俺は情報を集めてくると仲間に言い、アズアの住処がある場所へ赴くことにした。


『一応我も話をしてみるが……期待はしないでくれ』


 頭の中でガルクの声が響く。俺は「わかった」と了承しつつ、移動魔法でおよそ数時間。該当場所に到着した。


 そこは綺麗な砂浜のある海岸……リゾート地にできそうな雰囲気のある場所だが、水棲系の魔物が存在しているということで、あまり人々が近づかないらしい。


 もっとも、漁をする人を見かけることはできるのだが……ここでガルクの声が。


『アマリアの話によると、この海岸から少し沖へ進んだところに海底洞窟があるらしい』

「魔法を使えば俺でも行けるけど……水中となると、大丈夫かな?」


 さすがに海中での戦闘となると、しんどいのだが……考えていると、ガルクの返答が。


『大丈夫だろう。水王アズアは水と闇を司る……闇の形質が地上での活動を優先させ、洞窟内も空気で満たされているはずだ』

「それを期待するか……ちなみにだがガルク。アズアを見たことは?」

『一度だけ、な。神霊と呼ばれる存在の中でも、特に姿を現さないのは貴殿も知っているだろう?』


 ――確かに、ガルクやフェウスについては色々と噂を含めた情報が出回っているが、アズアについてはほとんどない。場所が南部で情報が伝わりにくい面もありそうだが、ほとんど活動していないというのも要因に上げられるだろう。


『準備はいいか?』


 ガルクが問う。俺は深く頷き、


「ああ、行くぞ」


 言葉と共に魔法を使用し――俺は、海へと入った。


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