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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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魔法使いの能力

 そもそもこのゲームでは、海に関連する魔物自体が少なかった……登場していなかったということは俺の知識ではどの程度の強さなのか判別できなかったりする。


 俺の『ファイアランス』で足を消し飛ばすことができたが……考える間にさらに足が海面から伸びてくる。それにすかさず対抗するクウザ。俺と同様『ファイアランス』を撃ち出し、その足を迎撃する。


 一撃では倒せなかったが、連続でさらに炎を浴びせることで対処し、声を上げた。


「どうやら大物らしいな……!」


 宣言と同時にさらに攻撃する……クラーケンの攻撃速度も中々のものだが、クウザのそれは魔物を上回る。ほとんど無詠唱に近い魔法攻撃は、的確に足を焼いていく。


 するとクラーケンは負けじと足を再生させる……ふむ、クウザの能力でも十分通用することから考えて、おそらくソフィアやシルヴィで対抗できる能力だろう。


 そう考えた直後、今度はソフィアが『ライトニング』を放った。雷光がクラーケン――海中にいる本体へ向かい――海水全体を刺激する。間違いなくダメージは入ったはず。


 負けじと俺も『ホーリーショット』を利用し足に撃ち込む。光弾は貫通し足が動きを止めたところで、さらにクウザの炎が追い打ちをかける。


「これは、ボクの出番はなさそうだな」


 シルヴィが言う。というより海中にいるため手出しできないといったところか。


 ゲームならば問答無用でダメージを与えられるのかもしれないが……考える間にさらなるクウザの魔法。残りの魔力を気にしている様子はなく、俺は彼の近くへ移動し、尋ねた。


「魔力はいいのか?」

「そんなことを言っている余裕はなさそうだし……な!」


 さらなる火炎。その全てが下級魔法だが、それでもクラーケンの足を撃ち滅ぼしている。

 そこへソフィアが雷撃により本体目掛け魔法を放つ。この攻撃により足の動きも最初と比べ鈍いのは明白で、確実にダメージを与えることはできている。


「シルヴィ、ソフィアの援護を」


 俺は指示をしつつさらなる魔法の構えを見せる……ここで、クウザが魔法を放った後に口を開いた。


「足はどうやら再生する。となれば本体を狙うしかないわけだが……このままソフィアさんに攻撃を続けさせると逃げられる可能性がある」

「確かに。海中に逃げられれば追うのは難しいかもしれないな」

「そこでだ。少し時間を稼いでもらえないか? とっておきの魔法で決着をつける」

「――わかった」


 作戦に乗っかり、俺はソフィアやシルヴィへ指示を出す。結果、クウザを守るようにして俺達三人が剣を構える形となった。

 足が絶えず襲ってくる。それを俺とソフィアは剣技と魔法でいなし、シルヴィも援護する。背後からクウザの詠唱が聞こえ……どういう魔法を使うのかをはっきりと理解する。


 これは――俺はクウザの魔力がさらに高まるのを認識。この一撃で、一気にクラーケンを削り切るつもりか。


 するとクラーケンも負けじと足をのばしてくる。おそらくクウザの魔力に反応し、仕留めようとする動きだろう。だがそれを俺達は封じる。俺の『ファイアランス』で焼きつくし、ソフィアの『ライトニング』で撃ち抜き――その時、クウザの魔法がとうとう完成した。


「天よ! 我が命に従いかの敵を滅せ!」


 クラーケンがいると思しき空中の空間が歪む。俺は即座にソフィア達に「耳を塞げ」と指示。直後、白光と共に雷撃が迸った。


 雷属性上級魔法『スカイクリーヴ』……敵の頭上から大量の雷を浴びせる魔法であり、エフェクトが派手なのが特徴。実際クウザが放ったのも相当派手であり、閃光と爆音が俺達を包む。


 そして、魔法が終了し……残るは静まりきった入り江だけ。俺はしばし警戒していたが、クラーケンの足すら姿を見せないことを理解すると、言った。


「倒した、みたいだな」

「――その、ようですね」


 聞き慣れない声だった。すぐさま全員が一様に首を向ける。


 入口付近に、精霊と思しき存在が。見た目は少女。簡素な服に身を包み、エメラルドの色の髪を持った存在。見た目、年齢は十二、三歳くらいだろうか。


「ネレイド、ですね」


 レーフィンが出現。するとネレイドは驚き目を見張った。


「あなたは……!」

「ネレイドの住処が魔物に制圧されていたと聞き、助力に」


 レーフィンが言うと、ネレイドは俺達を一度見回し……その後、礼を示した。


「助けていただき、ありがとうございます」

「先ほどの魔物が、大将だったのか?」


 俺が質問。ネレイドは大きく頷き、


「はい。あの魔物が出現したことにより、私達はここからさらに洞窟奥深くへと避難を余儀なくされました」

「攻撃はされなかったのか?」

「私達精霊の動きを止める役目を担っていたようで……もちろんこちらから攻撃すれば、容赦ない反撃が来ました」


 その言葉により、俺はなんとなく魔物の目的を理解する。


 神霊を警戒していることからもわかる通り、魔王は精霊に注意を払っている。その中で海にまつわる精霊の足止めをしているというのは、おそらく南部からの侵攻準備をしているためだろう。


 魔物がネレイドを積極的に倒そうとしなかったのは、警戒しているためだろうか……いや、刺激して水王アズアが出てくるのを避けるため、魔族がこれ以上干渉しないよう命令でもしていたからだろうか。どちらにせよ、魔族達は北部の侵攻に合わせ、南部でも動きを見せているのは間違いない。


「他の精霊の住処についても調べた方がいいのか?」


 クウザが魔物のいなくなった海面を眺めながら声を発する。


「精霊の住処はここだけじゃないが……」

「その辺りは、私達にお任せください」


 レーフィンが、彼に応じる。


「精霊の住処は数多くあります。その全てを回っている時間はないでしょう。ここは我ら精霊同士が連携して対処するべき場所かと」

「そっか……しかし、魔王は北部で大きな軍を興しているが、南部でも色々と動き回っているのは間違いないようだな」

「それについては、我々が調べます」


 ネレイドが言う。その言葉に俺は「お願いするよ」と返答した。






 洞窟における戦いは終了。それとクウザの実力も証明された。


「しかし、上級魔法まで行使できるとは思わなかったよ」


 帰り道、俺は彼に言及する。


「あの魔法は、クウザの得意魔法なのか?」

「そういうわけじゃないって。ま、旅をしつつ魔法の研究をこなして体得した魔法の一つってことさ。一人だと隙も大きいから使用機会は皆無だったけどね」


 クウザは俺の方へ視線を向けつつ語る。


「今回は本当に助かった。さすがに単独で赴くつもりはなかったけど、町にいる戦士とかだと対処できない可能性があった」

「魔族や魔物と戦っている俺らからすれば当然のことだ。で、そっちは今後どうするんだ?」

「そうだなぁ……」


 空を見上げ考え始めるクウザ。さて、どうした方がいいのか。


 実力は確認できた。加えゲームで持っていた『三強』の特性もまた所持している。

 パーティーのバランスを考えると魔法使いを仲間にしようという考えもあった。シルヴィの時のように偶然出会った形ではあるが、ここで会ったのも何かの縁であることを考えれば――


「クウザ」


 ふいに、シルヴィが彼の名を呼んだ。


「今後、特に考えがないと言うのなら、ボクらと共に戦わないか? 放浪の魔法使いなんて異名を持ちつつ魔物と戦っている……ボクらと目的は合致するはずだ」

「目的……確かに」


 クウザは声を発し、さらに考え込む。

 俺はソフィアを見た。彼女もまたシルヴィと同意するように頷いている。


 実力も含めてのことだろう……俺は彼女に頷き返し、クウザへ話すべく体を向けた。


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