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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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洞窟の詳細

 武器の素材の中で『霊鋼』は強力な部類。他にも『聖鉄』とか退魔性を保有する物はあるが、その中でも非常に優秀な特性がある。


「わかった。その素材で剣を作ろうじゃないか」

「剣を二振り作るとなると、どのくらい掛かりますか?」

「ざっと五日だな」


 それなら……ということで素材を渡す。直後、シルヴィが口を開いた。


「面白い素材だな……しかし、ずいぶんと癖のある物だ」

「だが、その特性が今後役に立つ、だろ?」


 俺が問うとシルヴィは肩をすくめる。すると今度はソフィアが問い掛けた。


「あの、どういうことですか?」

「あ、ソフィアは特性を知らないのか。この霊鋼は、魔力を注げば注ぐほど威力が増すんだよ」


 ゲーム上では確か魔力によって攻撃力が増減する仕組みだったはずだ。ゲームでは魔法戦士系の力も魔力も高い人間なら強いが、魔法を使わないキャラについてはあまり利用価値もなかった。


 しかし魔力障壁などを戦士でも使う現実では、ゲームの時と比べて多くの人間の魔力が高い。ソフィアやシルヴィの二人もそうなので、この霊鋼が使えると思い、今回素材に採用した。


 しかしこの素材は相当な癖があり、使い手によって細かな調整が必要。自分用に作るのなら簡単だが、ソフィアやシルヴィに合わせた武器を作るのは可能であるとしても結構時間が掛かるため、ここでお願いすることにしたというわけだ。


 それから値段交渉に入り――俺はガナックに言われた料金を渡し、店を出ることになった。

 町の中を歩き出してから、俺はソフィア達に告げる。


「さて……少しの間、ここで待つことになるが」

「ギルドで依頼でも受けるかい?」


 シルヴィが問うと、俺は頷き、


「ああ、そうだな。俺がギルドに行ってくるから、二人は宿を頼む」

「わかりました」


 ソフィアが了承し、いったん分かれる。一人となり、ギルドへ向かうことに。


 ガナックが語っていた海岸線の洞窟――その辺りについて少しばかり調べてもいいかな……そんなことを思っている間にギルドに到着。中に入ると、そこそこ人がいた。


 まずは受付へ。男性が声を掛け、俺は依頼のリストを眺める。

 一応、ゲーム上に存在していた依頼もあるが……海岸線の洞窟云々というのはない。


「……そういえば、立ち寄った店の人に聞いたんですが」


 俺は受付の男性へ問い掛ける。


「海岸線にある洞窟に、魔物が出現したそうですね」

「ん? ああ、まあな。厄介な話だよ。敵も強いから警戒しているが、今のところ大事には至っていない。その辺りの依頼はここではなくて役所だな」


 町そのものが依頼主というわけか……そんなことを思っていた時、


「そこの冒険者、その話に興味があるのかい?」


 軽快な……いや、どこか軽薄そうな雰囲気を持った男性の声が背後から聞こえてきた。

 俺は振り向く。そこに、驚くべき人物が立っていた。


「実は私がそれを受けたんだが、協力者を探していたんだよ」


 年齢は二十代そこそこ。短い真紅の髪は少々立つくらいのもので、格好は旅につかうマントを羽織り、その下は冒険者風の革鎧。


 声に合わせ、顔立ちもどこか軽そうな印象。ここまでだと以前出会ったギルバートと同じようなタイプかとも思えるが、手に握る杖が単なる戦士でないことを物語っている。


「もし興味があるというのなら、話をしないかい?」


 勧誘でもするような口調……俺は相手を見返し無言となる。しかしそれは軽薄そうな印象を与える男性の様子がおかしかったからではない。見覚えがあったためだ。


 ――『三強』の一人、クウザ=バファット。


 心の中で名を呟きながら、俺は彼に問い掛けた。


「……あんたが、役所から依頼を受けたってことか?」

「そうだよ。いやあしかし、仲間を集めるのって大変だよな」


 ハッハッハッと笑うクウザ。どことなくお調子者のような感じの彼だが、依頼などはきちんとこなし人助けなんかもするキャラ。陽気な性格は生来のもので、ムードメーカー的な立ち位置の人物である。


 ここで彼が登場か……ふむ、シルヴィから話を聞いたことがあるという話を利用して、上手く接近するか。


「……俺はルオン=マディン。そっちは?」

「クウザ=バファット」

「クウザ……? ああ、聞いたことがある」


 そこでシルヴィについて説明すると――彼は「ああ」と声を上げた。


「あの剣士か」


 あ、そういえば彼はシルヴィが女性だって認識していないんだよな……その辺り、どうしようか。

 悩んでいると、彼は俺に告げる。


「彼女とはかかわったことがあるね」

「……ん、彼女?」


 聞き返すと、途端にクウザは「しまった」という顔をした。どうやら察してはいたらしい。

 それなら話は早いか……と思いつつ、俺は言及。


「私は女性であることは認識しているよ」

「あ、そうなのか。いや、それならいいんだけど」

「その辺りは、彼女と再会した時少し話をすればいいか……さて」


 俺は話を戻し、クウザへ言う。


「……海岸線にある洞窟については、確かに興味があった。話をしようか」

「悪いね」


 笑みを浮かべるクウザ――その後、俺は彼と共に店を出た。






 クウザの要望により飯でも食べながらということになり……店探しの途中、ソフィア達と再会。シルヴィがクウザに驚き、ソフィアも自己紹介を済ませ――やがて店に入り、テーブルを囲むように席についた後、彼が話を始めた。


「私が依頼を受けたのには理由がある。最近この周辺でも魔物の質が上がってきているんだが、海岸線に存在する洞窟の魔物がその質を上げているっぽいんだよ」

「……つまりそこに、魔族もしくはこの周辺の魔物を統括する親玉がいるってことか?」

「私はそう思っている」


 俺の質問にクウザは頷く。


「どういう魔物がいるかまでは判断できないんだけどさ。だから少々興味があって調べようと考えた」


 ……使い魔で調査するか? いや、洞窟奥にいるとするとさすがに魔物に見つかるだろうし、難しいか。


「……協力者を探していると言ったな」


 ここでシルヴィが口を開いた。


「ボク達でいいのか?」

「ああ、構わないさ。というか、君が共に行動している面々なら、実力は担保されているようなもんだろ」


 語るクウザにシルヴィは小さく息をつく。


「……ボクは構わない。ソフィアは?」

「構いませんよ」

「なら、決まりだな」


 指を鳴らしクウザは言う……ふむ、その実力を確かめる機会でもあるか。


 彼の能力――それはステータスの高さとは別のところにある。ゲームでは魔法使い系の隠し能力として詠唱速度というものが存在していた。下級魔法だと差はないのだが、中級魔法以上だとはっきりわかるようになる。


 基準の速度に対しプラス補正やマイナス補正がかかる感じなのだが……基本的には特定の属性魔法が得意というパターンが多かった。例えばフィリとのイベントで一時共に戦ったカティならば炎属性の詠唱速度が早くなり、代わりに氷や水属性に遅くなる補正がかかった。


 これは隠しパラメーター扱いなので知らない人も多い情報なのだが……一人だけこの能力がズバ抜けて高い人物がいた。それが『三強』のクウザである。


 彼の能力は他の魔法使いと比べてそれほど高くはない。だが詠唱速度が他と比べダントツに早く、下級魔法ならほぼノーモーションで放つことができる。

 それがどういう結果をもたらすのか……下級魔法を連続で放つことにより、一人で攻撃をつなぎ魔物に対し完封できる魔法使いだった。


 技の場合は攻撃を行った後、必ず硬直してしまうためこういうわけにはいかない。だが、魔法は次の動作までのタイムラグがないため、絶えず攻撃を行うことができるというわけだ。


 欠点はクウザ自身のMPが低めでやや燃費に難ありという点だが……その辺りはいくらでも補えるので、大した障害ではなかった。

 その能力はおそらく現実でも……と思っているのだが、確認するいいタイミングになるだろう。


「……それと、何やら面倒なこともあるらしい」


 クウザがさらに続ける。その言葉に俺達が注目すると、話し始めた。


「どうもその海岸線の洞窟は元々海の精霊ネレイドの住処だったらしい。だから町の人も神聖視していたらしいんだけどさ……そういう事情があるから役所の方が動いたって感じだろうな」


 精霊……地水火風を司る精霊以外にも存在するわけだが、どうやら次はそういった者とかかわることになりそうだった。


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