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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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歓声

 魔力の奔流のによって視界が上手く効かない中、俺とソフィアは剣を振り終えた後に魔力を探り、敵の姿を確認すべく待った。真正面にいるであろう気配は先ほどまでとは一変し魔力はか細く、どういう状況なのかは把握しつつも……、


『――これが、転生者の力とでも言うのか?』


 やがて声がした。視界が晴れ、見えたのは体躯を砕かれひび割れた体を持つ星神。

 そして問い掛けに対しては、俺が答える。


「俺だけの力じゃない。この場にいた仲間達……誰が欠けても勝てない戦いだった。人の力だけではなく、精霊や天使、幻獣に竜、そして魔族……この世界に暮らす者達が成した結果だ」

『……そうか』


 星神は笑う。これまでとは異なり、全てを受け入れるような穏やかな笑みだった。


『喜べ、星神の中心は砕かれた。膨大な魔力は残るだろうが、いずれ大地へと戻る……世界は壊れず、平穏が訪れる……だが』


 俺の表情――厳しいままの俺の顔を見て星神は察したらしい。


『理解はできているようだな。そう、今ここで止めても、いずれ魔力は結集し新たな星神が生まれる。魔力という存在がある限り、未来永劫……この星が死するまで続く』

「ならそれも止めるさ」


 俺の発言に星神は眉をひそめる。その所作は驚きに満ちており、ひどく人間的な反応だった。


『……この世界の魔力、法則そのものに挑む気なのか?』

「それを含めて、俺の役目だ」


 ――この世界とは異なる選択をとったルオンもまた、そうしていた。星神を打倒し、仲間と共に法則を相手に旅を始める姿。

 だから俺も……そういう決意を胸に、俺は星神へ語る。


「やり方は今から考える……差し迫った話でもないからな。もし俺の寿命が尽きても達成できていなかったら、その時は神霊とか、魔族とか天使とかに任せるさ」

『――そうだな』


 俺の右肩に子ガルクが出現し、応じた。それを見た星神は納得したのか、


『いいだろう……ならば抗ってみせるといい。星神という存在は、いつ何時この世界を蹂躙するかわからない。本当に成しえるのか……あの世で観戦させてもらおう』


 星神の自我が、消える。それと共に純白の平原が、崩れ始める。


「――ルオン! ソフィア!」


 その時、後方からリーゼが駆け寄ってきた。


「二人とも、無事?」

「俺は平気だ」

「私も問題はなしです」

「良かった……倒したはいいけれど、この空間は崩れ始める。私達は――」

『ここからは我らの仕事だ』


 子ガルクが言う。それと共に、フェウスやアズアが近づいてくる。


『莫大な力について、その流れはアナスタシアが請け負っている。我らはそれを束ね、いち早く大地へと還す。それによって、星神という存在が再び生まれる日を遠ざけることができるだろう』


 その言葉と共にフェウス達は作業を始めた。平原が消え、地底空間が俺達の視界に入ってくる。

 制御を失ったことで魔力が荒れ狂い始めたが、それを神霊やアナスタシアが制御し、大地へと戻していく……膨大な魔力を一度に戻して大丈夫なのかと疑問に思ったが、それに対しガルクは『問題ない』と答えた。


『我らは大地にある霊脈……巨大な河川に魔力を流しているに過ぎない。それは地底の奥深くで地上に影響を与えることはほとんどないまま、星を駆け巡ることだろう』

「そうか……とはいえ時間が掛かるよな?」

『うむ、さすがに膨大な魔力を戻すには時間を要する。とはいえ障害もない。作業そのものは神霊達が請け負う故、ルオン殿達は地上へ戻るといい』


 ――俺は仲間を見回した。全員が生存し、ようやく終わったのだと晴れ晴れとした様子。


「……じゃあ、戻るか」


 そんな軽い言葉と共に、俺達は地上へと帰還した。






 魔王城の入口まで到達すると天使達の歓声が待っていた。デヴァルスが駆け寄ってきてすぐさま俺から報告を聞くと、


「なら神霊達に協力し、後始末は任せてくれ」

「いいのか? デヴァルス」

「元々やるつもりだったんだ。ルオンさん達は先に戻っていてもいいぞ」


 バールクス王国に、か……ソフィアへ視線を向けると彼女は小さく頷き、


「帰還した後、宴をする準備などもしていますよ」

「抜かりがないな……さすがに疲労しているし、拠点で一泊してから戻るとしようか」


 一度そこで解散する……と、俺は何気なく空を見上げる。


『ルオン殿?』


 そこで子ガルクから声がした。


『何か思うところがあるのか?』

「……俺がこの世界へ転生した理由。それを倒すことができたわけだが……なんというか、あっさりとしているな、と思って」

『ルオン殿はそう感じているかもしれないが、あの戦いがまさしく死闘であり、ギリギリの勝利だったのではないか?』


 その問い掛けは正解だと思った。最後の攻防。あの時、俺はまさしく自分が持てる力を限界まで引き出した。あれで通用していなければ、返す刀でやられていたかもしれない。


『大きな目標を達成し、それがなくなったことによる開放感にルオン殿は戸惑っているのだろう』

「そういうもの、なのかな……」


 その時、仲間の誰かが声を上げた。そして何やら準備を始めている。


「酒もないのに騒ぐ気かな?」

『の、ようだな。ルオン殿はどうする?』

「さすがに、主役の俺が行かないと駄目そうだよな」


 そんな風に答えた後、俺は準備をする仲間達の所へ歩み寄り……途端、魔王城を出た時以上の歓声に包まれた――


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