拠点の完成
――結局、築城については丸三日を要し、その間に星神との決戦準備を進めた。物資面についてはまだ余裕はあるが、この物資を奪われないように注意しつつ……ここまでは順風満帆といったところだろうか。
一方でガルクが索敵を行った結果だが……地中や空中にそれらしい敵はいなかった。ただ、街道にいた面々に加えて魔王城の裏側……距離はあるが、森のまっただ中に気配があった。
俺達の動向については捕捉しているだろうけど、三日の間に攻撃はしてこなかった。平行世界の者達を早期に撃破したことも関係しているだろうけど、一番の理由は……恐ろしい早さで城壁を完成させ、拠点と魔王城へ繋がる道まで固めた土木工事の素早さにあるだろう。
「改めて思うけど」
完成報告をしに来たデヴァルスに対し、俺は告げる。
「天使って無茶苦茶だな」
「まあこのくらいはな……さて、とりあえず魔王城の入口周辺までは問題なくなった」
そう告げるデヴァルスだが……拠点周辺は綺麗な木製の城壁によって囲まれ、なおかつ門まで存在している。物資を搬入するとかいう可能性は低いけど出入り口は当然必要だし、デヴァルスの判断でそこそこ大がかりなものとなった。
なおかつ、魔王城への道に沿って城壁は続いている……城からそう遠くない場所に俺達は拠点を構えたわけだが、だとしてもそれなりの距離を囲ったわけで……材料集めから相当無茶をしているはずなのだが、天使達は表情を変えることなく作業を終えていた。
「城壁を構築したことで、見張りも楽になった。現在は天使でローテーションを組んでやっている」
「そこまでする必要あるか? 神霊達が索敵とかしているけど」
「必要性について神霊達と相談したが、肉眼で確認できる存在はいた方がいいと言われたからな」
「……そうか」
なら何も言うまい……防衛については相当強固になった。
「ルオンさん、築城についてだが……場合によってはさらに追加で工事もするが、ひとまずこれで終わりだ」
「わかった……防衛については問題ない、でいいのか?」
「少なくともいきなり拠点を攻撃されて天幕が破壊されるなんてことにはならない。そもそも城壁には魔力障壁も付与しているからな」
……下手すると並の城壁よりも強固かもしれないな。
「なら守りについては任せる」
「ああ……そっちは攻撃か?」
「ガルク達が可能な限り索敵を行った。それによってわかったのは二ヶ所……俺達を中心に南北に敵がいること。ここからどうするか……打って出るにしても、星神の力を有している存在だ。作戦は立てないと」
逃げられるのが一番厄介なので、その辺りの対策をどうするのかが鍵となる……俺はデヴァルスと共に拠点中央の天幕の中へ入り、ソフィアやリーゼと協議を開始する。
「敵は動いていないことから、こちらから仕掛けるべきだと思うんだが……」
「メンバーはどうしますか?」
ソフィアの質問に対し、俺はリーゼへ顔を向ける。
「敵の戦力などについては……今以上に調べてからだから、それ次第というのもあると思うが」
「問題は、敵に逃げられないようにすることよね?」
「そうだな……その顔だと、俺が何を言いたいのか理解しているみたいだな」
リーゼは頷く。これ以上敵がいなければ、合計二ヶ所……そこへ同時攻撃を仕掛けて、一気に倒しきる。
「問題は、倒してからだよな。こんな辺境で敵を倒しても、誰かが牢屋に入れてくれるわけでもない」
「その辺りについてもある程度話をつける必要があるわね」
「話……周辺諸国ってことか?」
「バールクス王国でも構いませんが」
と、ソフィアが言う。けれど俺は、
「魔王城周辺は、どこかの国が領土主張をしている状況でもないが、バールクス王国が名乗り出たら混乱が生じるんじゃないか?」
「確かにそうですが、重要なのは星神を打倒すること……私達が対応に苦慮すること自体、相手の思うつぼだと考えられますし、多少無理にでも攻撃を仕掛け、捕らえるべきだと思います」
ソフィアの言葉に、リーゼも同意するのか幾度か頷いている。
「そうね、優先すべきなのは星神打倒……ここで起きた騒動については、後でいくらでも誤魔化せる」
「国際問題になったら面倒だけど……今、そんなことを気にしていたら戦えないってことか?」
「そうね」
「なら今回の敵について倒したら後のことはソフィア達に任せるよ」
「はい、わかりました」
倒した後のことについてはこれで良いとして……。
「なら、話を戻そう。逃げられないように、同時攻撃を仕掛ける……が、さらに敵の居所があれば、二ヶ所から三ヶ所の同時攻撃になる」
『そこについては、我が全力で対応しよう』
今度はガルクが発言した。
『戦闘中についても索敵は継続する。敵に怪しい動き……または周辺に何か生じれば、すぐに連絡する』
「わかった……あと、こちらが仕掛ける場合は可能な限りバレないようにしたいところだけど……ソフィア、どう思う?」
「ある程度接近はできると思いますが、完全に隠れて奇襲を……というのは、厳しいでしょう」
「なら敵にこちらの動きが露見した時点で、問題なく倒せるだけの距離を詰めていればいいというわけだな。なら――」
そうして作戦会議は進んでいく。議論は絶えることなく続き、全ての予定が済んだのは深夜を回った時間帯だった。




