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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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拠点跡

 俺達は翌日になって、行動を開始した。リーゼを始めとした人間の面々が進み、戦う形。援護役として天使や幻獣が後に続き、彼らはあくまで退路を確保するなど、補助に終始する。


「連戦で悪いな、リーゼ」

「問題ないわよ」


 と、リーゼは明るく応じる。他の仲間も武器を掲げ元気であることをアピールした。

 賢者の血筋でさえも戦闘に参加できなくなってしまったため、組織内の人員で戦える人は少なくなってしまった……が、それでも戦意は衰えない。それに、俺以外にも切り札はいる。


「ガルク、ロミルダについては――」

『うむ、いたとしても竜の力を結集した武器などは所持していない……強大な魔力を前に干渉は不可能だろう』


 右肩に乗るガルクの言葉にロミルダも小さく頷く……その目は、今まで見たことのないほど力強いもの。

 こちらは必然的に少数精鋭という形であり、数的に不利なのは確実……だからこそ、自分もしっかりしなければと奮い立っているのかもしれない。


「ガルク、作戦はどうする?」

『敵の状況については逐一把握している。動向を観察しつつ有利に立ち回れるよう動く……抽象的ではあるが、そういう形にするしかないな』

「敵の出方次第ってわけだな。ま、情報が少ないしそれしかなさそうだ」


 会話の間に俺達は森の中を突き進んでいく……やがて最初に『ソフィア』と交戦した場所へ到達。地面は抉れ、ひどい有様だ。


「ここに敵の気配はないか?」

『ゼロだな』

「私の方もない」


 カティが続く。やはり相手は拠点に戦力を集中させている。


「拠点近くまではひとまず到達できるってことだな……何か魔法準備をしているというわけでもないか?」

『今のところはないな。とはいえこれ以上近づけばどうなるかはわからん』

「向こうは俺達の動きをつかんでいるはずだ。先制攻撃だってあり得るし、どこかのタイミングで奇襲が――」


 その言葉の直後だった。


「待って」


 カティが声を上げる。続いてガルクもまた、


『近づいてきている……かなり早いぞ』

「相手は竜か? 魔族か?」

『魔族だ。なるほど、速度に特化した移動魔法を使ってまずは様子見というわけだ』

「この拠点跡まで待っていたのは、何かしら意味合いがあるんだろうな――」


 刹那、森の中を駆け抜けてて魔族が襲来する。即座に俺達は臨戦態勢に入り――先んじて仕掛けたのはリーゼだった。


「はあっ!」


 気合いを入れた声と共に、一番槍を果たした魔族へ向かってハルバードを薙いだ。相手の得物は大剣。武器については双方互角だが、互いの刃が触れた直後――魔族の大剣は破壊され、リーゼの斬撃が魔族へと叩き込まれた。


 それによって、魔族は声を上げて消え失せる……それと同時にガルクが声を発した。


『消滅の仕方が、今までと違うな』

「どういうことだ?」

『これまでは魔物のように散って消滅するだけだった。しかし今は……体の内にある魔力が弾けて消えるようだ』

「その違いが意味するものは?」

『敵は相当力を体に叩き込んでいる……今回の敵を全滅させても次の敵が……という可能性もゼロではないが、少なくとも敵方は今回の勝負で決めに来ていると考えていい』

「向こうも実質、背水の陣ってことか」


 だが、リーゼはそうした魔族も一撃で……後続からさらなる敵がやってくる。それに対しこちらはコーリやシルヴィが前に出た。

 途端、クウザの無詠唱魔法が魔族へ降り注いだ。詠唱がないとは思えない威力を兼ね備えた彼の魔法……ただ魔族達も黙っていなかった。彼の魔法に対しては持っている武器を振ることで対応。敵は全てを等しく消し飛ばした。


 とはいえ動きを鈍らせたのは間違いなく、コーリやシルヴィが一気に詰め寄って剣を決めた。コーリは洗練された剣戟を見舞い、シルヴィは自らの剣筋を活かした高速の一閃。それで魔族は二体、消え去った。


「くっ……!?」


 そして魔族の中には突撃を中断した者がいた。仮初めの体ではあるが、相当な力を有している……にも関わらず、俺達は応戦するだけでなく一撃で対処できている。それを目の当たりにして、警戒感が強まっている。

 無論、こちらとしても油断は一切できないし、俺達は動きを止めた相手に策もなく突撃するようなことはしない……が、クウザが動いた。新たに放った魔法――それは先ほどよりも大規模かつ、威力の高いものだった。


 当然魔族達は警戒し防御しようとしたが……クウザの魔法が降り注ぐ。それらは光弾であり、轟音が鳴り響いてただでさえ抉れていた地面をさらに破壊していく。


「容赦がないな……」

「敵は相当な強さだ。当然、こちらもそれに応じるまでだ」


 クウザは冷静に語りつつ……魔法が終わる。そして魔族達だが、負傷している者もいるようだが戦意は消えていない。


「このくらいの威力では倒せないか」

「……クウザ、出力はまだ上げられるか?」

「ああ、どうにかなりそうだ」


 その言葉の直後、魔族達は一斉に俺達へ仕掛けた。同時に攻撃を仕掛ければ、対処できる――そういう意図があるのだと察した。

 だが、その行動は当てが外れる。即座に応じた俺達はそれぞれが武器で、魔法で応戦して魔族を一挙に滅していく。賢者の血筋はここにはいないし、決して仲間の人数だって多いわけではない……が、それでも敵の軍勢をはね除ける。


 リーゼが最初の敵を倒してから、およそ五分……そうした短時間で、俺達は魔族を蹴散らすことに成功。一息ついた後、俺は一つ感想を述べる。


「ガルク、魔族シェルダットのような因縁のある存在はいなかったな」

『まだ切り札は出さないということだろう。この場で戦った魔族達は確かに強いが、それでも高位魔族と比べればまだ劣っている』

「魔王候補レベルではないってわけだな……シェルダットとかはその可能性もあるか?」

『わからんが、最初に邂逅した段階でもなかなかの強さだった。あの強さに本来の器があれば……』

「奇襲を含め最大限に警戒した方がよさそうだな……ともかく、進もう」


 森の中で戦うことは避けたいが、そこは敵の出方次第か……胸中で呟きつつ、俺達は拠点跡を離れた。


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