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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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本当の戦い

「――この攻撃を受けて無傷とは、直接やり合うのはやはり厳しかった様子」


 煙の奥にいた人物は『ソフィア』その人――俺と相対していた彼女が立っていた。


「マスターのやり方では、当然ながら征伐は不可能だったようで」

「……先ほど戦っていたのは、偽物か?」


 俺が問い掛けると『ソフィア』は笑った。それはこの世界のソフィアが決して見せることのない、妖しい笑みだ。


「偽物? そもそも私達は仮初めの体でしょう? 本物も偽物も検証の意味はないのでは?」


 ……その言葉を聞いて、俺はなんとなく理解した。おそらく、彼女達は一体だけではない。ただ、


「今のはマスターの魔族が指示を出したのか? それにしたって、自爆攻撃なんて許可しなかったと思うが」

「我らがマスターは私達に様々な制限を課しましたが、惜しむらくは力の差によってそれが容易に突破だったこと……とはいえ、私達自身でマスターを始末してしまうと魔法の効果により強制送還される。よって、他者に倒してもらわなければならなかったわけです」

「だからわざと、俺達にやられるように仕向けたと」

「ええ」

「……なぜそこまでして、作戦を遂行する?」

「この世界を訪れ、思ったのですよ。星神の力……それによって崩壊がもたらされる。けれど」


 ニコリと――満面の笑みを浮かべ彼女は告げる。


「私達がお仕えし、制御することができれば……この世界もまた、星神という存在が支配することができるでしょう?」

「……まったく、心底厄介な敵が来てしまったな」


 最初から、一介の魔族が手に負えるような存在ではなかったのだろう。星神はそれをわかった上で、手を貸したに違いない。

 やがて『ソフィア』は俺達に背を向けて走り出した。一度態勢を立て直す気かと俺は即座に追撃を仕掛けようとしたが――それよりも先に、跡形もない拠点の大地からさらなる魔力が生じた。


 反射的に俺は立ち止まり……次の瞬間、再び魔法が炸裂した。大地から湧き上がる膨大な魔力……とはいえ、先ほどの規模と比べれば劣るし、これが目くらましの効果であることは明白だった。

 それでも突撃すれば『ソフィア』を追うことはできたかもしれないが……まだ何か仕掛けがあるかもしれないと、俺は仲間達に警戒するよう指示。その後、魔法が消え周辺を調べ、何もないことを確認した後に話し合う。


「ガルク、索敵できるか?」

『ふむ、どうやらこの先に新たな拠点があるらしいな。認識阻害系の魔法により隠蔽されていたようだ』

「ガルクを欺くレベルだし、敵の能力は今までよりレベルアップしていると考えていいだろうな」

『そもそも、もう一人の王女が先ほど語った内容を吟味すれば、わざとやられていた節がある』

「……気合いを入れないといけないみたいだな。どうする? 拠点に近づいて調べるか?」

『少し時間をくれないだろうか』


 ガルクから思わぬ提案が。


『フェウスや複数の精霊を呼び、この場所で相手の魔法を無視して情報を取れないか試してみる』

「それができたら何よりだけど……勝算はあるのか?」

『新たに発見した拠点にある魔法の強度は、ここに張られていた魔法とほぼ同じだ。フェウスなどの力を借りて魔法の射程距離の問題を解決すれば、おそらく調べることはできるはずだ』

「なら、こちらの拠点と連絡を交わしつつ待つとしようか」

『うむ』


 俺の言葉にガルクは頷く。周りの仲間達も同意し……ひとまず、周辺に問題はないのか調べることにした。






 フェウスや精霊が到着して調査し、数時間後には結果が出た。ガルクの言う通り相手の拠点についてはある程度確認できたようで、もし敵の動きがわかれば即座に察知できるような手はずも整えた。

 そして俺達は一度拠点まで戻った。そこで改めて話し合いを開始して、次こそ決着を付けるために動くと決めた。


『敵の主戦力は相変わらず天使や竜だ』


 ガルク――テーブルの上に子ガルクが乗っかって話を進める。


『人間はソフィア王女を始め、最初に交戦し滅んだオルディア殿もいる』

「つまり、今まで戦ってきた賢者の血筋を持つ敵も復活しているというわけか」

『うむ、数そのものは少なくなっているが、それは天使や竜、魔族が数を減らしているようで、人間の数はほぼ同数だな』

「シェルダットなんかも復活していそうだな」

『魔族などの詳細は完璧に把握しているわけではないが、可能性は高いだろう』


 再戦を余儀なくされたが……いや、敵からすればここからが本当の戦いってことだろうか。


「ガルク、攻撃を仕掛けるにしても人員は?」

『今回攻撃を仕掛けた者達だけで動くにしても、援護要員は必要だろうな』

「なら援護を天使が請け負う」


 と、話し始めたのはデヴァルス。


「主戦力はあくまで星神との決戦に準備をしてきた組織の者達。それ以外の面々は退路確保など援護要員として動くとしようか」

「ならこちらも」


 次に手を上げたのは幻獣ジン。


「援護のなり手は一つじゃなくてもいいだろう。後顧の憂いは取り除かないといけないよな」

『今回の敵に幻獣はいない。それを踏まえると、援護要員としては最適かもしれんな』


 ガルクからの言葉。それでジンは「なら」と応じ、


「神霊ガルク、敵の動きは?」

『現時点で変化はない。待ち受けるつもりなのかもしれん』

「なら明朝、出陣することにしようか」


 それで話し合いは終了し、攻撃を仕掛けた面々は一度休息をとる。俺もまたテントに入って眠ることにする。


「……次で決着をつけたいところだが」


 相手の目的……それを踏まえると、星神については相当執着している。よって、さらに逃げて策を、という可能性も否定はできない。

 ただ、さすがに敵も二度三度と続けるだけのリソースはあるのだろうか? 星神から力を得ているとしたらその限りではないが……。


「……ガルク」

『どうした?』

「敵は星神の力から仮初めの体を維持しているとしたら――」

『微妙なところだな。もしそうならこの戦いは長期化する可能性もあるが、短期で終わらせるための方法がないわけでもない』

「……それは?」

『とはいえこれは、星神に対する策の一つを潰すことにも繋がる』

「つまり、切り札ってことか?」

『その一つであるのは間違いない』


 ここでそれを使うかどうか……俺は一考し、ガルクへ口を開いた。


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