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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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見立て

 次に始まった攻防は、幾度となく剣がぶつかり合う高速戦闘の様相を呈した。俺と『エイナ』の剣がぶつかり魔力が飛び散る。衝撃が腕を通して伝わってくるが、腕が痺れるといった結果にはなっていない。

 けれど、相手はどうやら違う……最初は笑みを浮かべるくらい余裕だったが、次第に違和感を抱くようになったか顔が変わってきた。


「貴様、何をしている……?」


 俺が何か仕掛けでもしているのかと考えたのか、そんな質問すらとんできた。けれど俺は答えないまま、周辺の状況を窺う。

 リーゼを始めとした味方が、敵の精鋭部隊の数を大きく減らしていた。最初一気に決めようと敵は攻め立ててきたのだが、こちらの奮戦によって数が減り、やむなく防戦を強いられている。


 仲間は負傷一つしていないので、この戦況は紛れもなく俺達の方が圧倒的に強いということを如実に語っている。星神の力によって魔族が招き寄せた兵団なわけだが、例え星神の力を使っていても……相当な修練を行ってきた俺達の方が強い。そういう結論でよさそうだ。


 とはいえ、油断はできないし目の前にいる『エイナ』は……違和感が痛みに変わったか、数え切れないほど剣戟が激突した後、彼女は顔をしかめた。


「何だ……!?」


 それでもなお俺へ仕掛けようとする『エイナ』だが、やはり刃は弾かれる。


 ――ここまでの戦いぶりで、呼び寄せられた魔族から情報を受け取っているにしろ、俺達を侮っていたことが推測できる。その実力をつぶさに理解できているのかは不明だが、能力を把握しているにしろ過小評価をしているようだ。

 星神を討とうとする存在……彼らからすれば不届きであり、だからこそ思い知らせてやろうという気持ちが大きいのかもしれない。


「はっ!」


 俺は『エイナ』へ向け追撃を仕掛ける。相手は防戦一方であり、また同時に周囲にいる魔族や竜達も数を減らしていく、退却しようにもタイミングを逸してしまったのが現状。残された選択肢は、味方を見捨てて全力で逃げるほかないが――


 ここで『エイナ』は大きく引き下がった。視線を変えないにしても俺の仲間が自分の配下を倒したことは認識したことだろう。


「……見立ては甘かったと言うべきか」

「仮に調査で能力の詳細がわかったとしても、態度は変えなかったんじゃないか?」


 俺の指摘に対し『エイナ』は押し黙る。


「そちらからすれば、星神を討とうとする輩に実力の違いを見せつける……そんな思いに固執していたわけだろ?」


 リーゼ達がさらに猛攻を仕掛ける。数はもう多くない。


「どうする? とはいえ、ここで退却しようにももう手遅れかもしれないが」


 問い掛けに相手は一切答えない。そればかりか、こちらをにらみつけるだけだ。

 どうするのか……残る敵をリーゼ達が倒そうとした矢先、とうとう『エイナ』も動いた。魔力を発し、これまで以上の速さで俺へ向かって踏み込んだ。


 それはまさしく達人の領域――だが、俺はしっかりと捕捉できた。彼女が放った渾身の一撃を容易く弾く。相手は瞠目し、俺は剣を一閃した。

 ヒュン、と風切り音が響くと同時に彼女は動きを止める。感触そのものは、まるで肉体を斬っているようではあるが、魔力の多寡などから今まで経験のない感触のようにも思える。


「……ソフィア王女、ご武運を」


 そして『エイナ』が呟いた矢先、その体が消え失せた。星神を信奉にしているにしろ、彼女はソフィアに付き従う存在……だからこそ、最後に王女のみを案じたか。

 周囲に目を向ける。残った敵も全て倒しきり、俺達の完全勝利に終わる。援軍の気配はなく、敵はこれだけの数で倒せると思っていたのだろうか。


「……大丈夫?」


 リーゼが近寄っていて問い掛けてくる。


「斬れるとしても、同じ顔だし――」

「そこは心配しなくてもいいさ……少なくとも剣の動きが鈍るようなことはない」


 俺は軽く剣を素振りした後、リーゼへ質問する。


「敵の能力はどうだった?」

「今までよりは強いけれど、それでも問題はなかったわね」

「同じく」


 アルトが近寄ってきて言及。星神を討つための修行は、きちんと実を結んでいるわけだ。


「精鋭部隊なのは間違いないが、この調子だったら勝算は十分だろうな」

「……問題は敵本陣にいる『ソフィア』の存在か。こちらの戦いぶりはしかと観察したはず。やり方を変えるか、あるいは身を潜めるか……」

「身を潜めると厄介ね」

「ああ。だからそれをさせる前に進む……で、いいか?」

「ええ」


 リーゼが応じ、他の仲間も同調。それで方針は決定し、俺達は先へと急いだ。






 敵の精鋭部隊と交戦後、幾度となく敵と散発的に交戦するが問題なく撃破する。その手勢は魔族や竜と基本的にスペックの高い面々で、人間は皆無。


「人間ばっかりで編成したのは正解だったな」


 俺の言葉に仲間達は頷く。


 現状、一番怖いのは同一人物と交戦することによって生じる弊害。現時点では短期決戦で応じているため何も影響はないみたいだが、警戒するに越したことはない。

 残る懸念としては、俺達のことを無視してこちらの本陣である魔王城前の拠点を狙うことだが、


「ガルク、俺達の拠点はどうなっている?」

『変化はなしだ。精霊などが索敵しているが敵の気配もない』

「引き続き観察を頼む。もし向こうのリーダーである『ソフィア』とこちらの世界のソフィアが出会ったら……そこが一番不安な部分だからな」

『現時点で相手のリーダーは敵本陣にいる。心配はないだろう』

「なら向こうがあえて俺達を無視しても、この距離なら俺達が攻撃する方が早いかな」


 もう少しで観察していた敵本陣へ到達する。道中では魔物なども向かってくるが、それも問題なく俺達は倒すことができている。

 拠点の守りも盤石で、後は魔族とリーダーを倒すだけ……とはいえ、警戒はし続ける。仲間達もそれは同じようで、敵を倒しながら目つきは厳しいままだ。


「……誘い込まれているという可能性もゼロではないでしょう」


 と、リーゼはハルバードを握りしめて言及する。


「先ほどの敵、精鋭部隊と称していたけど……それをどれだけの力で倒すのか、残る敵は観察していたでしょうし」

「ああ。これで終わりとは思えないな」


 俺がそう言及した時、とうとう森を抜け敵の本陣が姿を現した。


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