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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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最強の戦士

『星神に対抗するために、完成した技術……それが本物であるのは、間違いないようだ』


 ラムハザは俺達が生み出した技術を認め、深々と頷いた。


『そしてこのまま打ち合えば、どうなるのか……』

「降参するか? それとも、力を認めたが故に、終わりにするか?」

『そういう選択肢もある。だがここで終わりにするのはもったいないだろう?』


 もったいない、ときたか。どれほどの力なのかを体感したいという思惑があるのは間違いないようだ。


『では、最後の勝負といこうか……さすがに打ち合いをすればこの島を取り巻く結界すらも壊れてしまいそうだ。故に、勝負はたった一度で良いか』

「その一撃に、全てを込めると」

『そうだ』


 ラムハザの魔力がさらに高まる……それに俺は応じるべく、感覚を研ぎ澄ませ、刀身に魔力を収束させる。

 俺はラムハザと目が合った……その瞬間、まったくの同時に俺達は間合いを詰めた。数秒にも満たない時間。しかし俺達にとっては恐ろしいほど長い時間。ほんの一瞬、その間に俺とラムハザは目線と動きで、見えない攻防を繰り広げた。


 そして、俺達は同時に剣を振り抜いた。読み合いを行ったけれど、結局最後は真正面からの突撃――剣同士が、触れる。魔力が弾け、それが俺達の周囲に竜巻のように変じて結界内を乱れ飛ぶ。

 その攻防は、下手をすると最果ての島を砕いてしまうくらいの魔力量、だったかもしれない……やがて乱気流が収まる。その果てにあったのは、剣がぶつかり……ラムハザの剣がボロッと崩れ落ちる光景だった。


『……耐えられなかったか』


 俺は何も言わず剣を引いた。それに対しラムハザはボロボロとなった剣を見据え――やがてそれを消した。


『完敗だ、英雄。そして誇るといい……君こそがこの地上において、最強の戦士であると』

『うむ、相違ないな』


 ガルクが同調。それに俺は頭をかき、


「例え最強だとしても……星神を討てなければ、意味はないさ」

『それでも、星神を討つ資格を持ったのは間違いない』


 ガルクがさらに続ける。俺はそれに対し……小さく頷いた。


「そうかも、しれないな。ただ、そうなると賢者は途方もないことをやろうとしていたわけだが……」

『自分では届かないからこそ、未来へ託したのだろう。その結果ルオン殿がこの世界へ辿り着いた』

「そうだな。さて、ラムハザ。手を貸してもらう――ってことでいいんだよな?」

『ああ、無論だ。しかし戦いの前にも言ったとおり間接的なもの……主に情報を託すことになるか』

『我らが仲介して、分体を送り込んでも良いのだぞ?』


 ガルクが一つ提案すると、ラムハザは肩をすくめる。


『本体と意識のリンクはできないぞ?』

『ならば本体が保有する情報を詰め込むだけ詰め込めば』

『ふむ、なるほど。星神との戦いに必要な情報を……というわけだな』


 話が勝手にまとまっていく。まあ俺の方から言及することはないし、ここはガルクに任せておけばいいだろう。

 俺をよそに話を進めていく神霊達を眺めつつ、俺は剣を消して息をつく。旅はこれで終わりとなる。いよいよ――最終決戦だ。


「ガルク」


 話が一段落したタイミングで、俺はガルクへ声を掛ける。


「これでひとまず戻る……で、いいんだよな?」

『うむ、バールクス王国へ戻るとしよう』

「ちなみにだが、星神は動いていないのか?」

『ひとまず何もない……大陸各地を調査しているが、その兆候もない』

「なら、後は魔王城にある扉から踏み込んで、決戦か」


 ガルクも、ラムハザも表情を引き締めた。いよいよ戦いが終わりに差し掛かっている。俺も生まれ変わり、必死に強くなり、その旅の果て……賢者の真実を知り、星神へ挑むという果ての戦いも、最終局面に差し掛かっている。

 長い旅……その終わりを自覚し、俺は少し感慨深い思いを抱いたが……すぐにそれを消した。振り返るのは、戦いが終わってからにしよう。


「それじゃあ戻る……にしても、今日のところはどうする?」


 太陽が傾き始めている。あと一時間くらいで、光は赤く染まるだろう。


『今日一日くらいは、ここでゆっくりしていけばいい』


 と、ラムハザは俺達へ告げた。


『あれほどの戦いをした後だ。体に影響が出ていないとも限らない。その関係で海を渡れず溺れるなんてことになったら、悲惨極まりないぞ』

「確かにそうだな……一日くらいは体を休めるか」

『では、島へ戻るとしよう』


 ラムハザの先導により、俺達は島へと戻った。そこから俺は食料調達として魔法を使って魚なんかを捕まえる。ついでに木の実を拝借して――


『ルオン殿、いよいよだな』


 砂浜でたき火をしていると、ガルクが声を掛けてきた。


『魔王との戦い……そこから始まった長い旅路だが、決戦をもって終わりを迎える』

「ガルクの方も、何か感じ入ることがあるのか?」

『当然だろう。我からすれば……神霊として生を受け、これほどまでに激動だったことはいまだかつてなかったからな』

「そっか……」

『それだけ途方もないことをやり遂げようとしているのだ、ルオン殿は』


 ……正直、相手が大きすぎるから自覚も薄い。というより、全体像をつかみ切れていないと言うべきだろうか。それでも俺は自分が成すべき事がなんなのかを理解しているし、それに全力を立ち向かおうとしているけれど。


「先に言っておくが、決戦で終わりじゃないからな」


 と、こちらは釘を刺すようにガルクへ告げる。


「ガルクには、戦いが終わった後にもやってもらいたいことが山ほどあるわけだから」

『うむ、そうだな……』

「だから、今後も頼むぞ……ガルク」

『任された』


 俺は笑みを浮かべ、砂浜に寝転んだ。空は夜を迎え、星々がずいぶんと綺麗だった。


「……バールクス王国へ戻ったら、すぐに決戦かな」

『そうなるだろうな』

「段取りとかは残っているソフィアがやってくれるだろうから、俺のやることは……」


 頭の中で算段を立てつつ、俺はどこまでも空を眺め続ける。今回の旅を通してやるべきことは全て終わった。後は、星神をこの手で討つだけだ――


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