83(史子) 全国レベル
どうも。烏山史子です。『とりやま』じゃないです。『からすやま』です。
市川静先輩と可那先輩のことはほとんど何も知らずに来ていたので、最初は何が起こったのかとびっくりしました。それは一緒にベンチにいた珠衣先輩も同じでしたが、珠衣先輩は『まあ可那さんのやることだし』と落ち着いて成り行きを見守っていました。私もそれに倣い、大人しくしていました。そして、事態はどうやら良い方向に転がったらしく、普通の試合に戻りました。
その際、城上女はメンバーチェンジをし、市川静先輩と、それからよくわからないバスケ部の人が新たに投入されました。
そのお二人が、これまたすごいのです。上手く表現できませんが、ひゅ、ばーん! って感じです。
「す、すごいですねっ! あのバスケ部員の方のスパイク!」
「うん……いや、それもそうだけど、今のプレーですごいのは市川さんのトスだよ」
「そうなんですか?」
「月美さんを見てみ」
言われて、私は月美先輩に目を向けてみます。ぽかんと口を開けて市川先輩を見つめていました。なんと言えばいいのでしょう、初めて可那さんに会ったときの私の顔が、ちょうどあんな感じだったような。
「んー……次のローテで決めておかないとまずいか……」
珠衣先輩は独り言のようにぽつりと呟いて、おもむろに腰を上げ、身体を動かし始めます。その真剣な横顔を見上げていると、なんだか胸がどきどきしてきます。顔立ちは彫刻みたいに整っているし、睫毛すっごく長いし、長く伸ばして二つ結びにした巻き髪は艶があるし……うむむ……プレー中のはっちゃけてる珠衣先輩もいいけど、黙ってる珠衣先輩もアリだなぁ。
「……史子?」
「ふぁっ!? な、なんでもありません!」
急に振り返る珠衣先輩。私はノートで顔を隠し、試合に集中します。
スコアは、16―18。
サーブは岩村先輩です。ばしっ、と放たれたボールは、すぅーと流れ星のように伸びのある線を描いて、雫先輩のところへ。若干カットがライト側に乱れます。それを見て、はる先輩は速攻に入らずライトでトスを呼びます。月美先輩はボールを追ってライトに走り、そのままライト側を向いてオープントス。はる先輩は軽やかに踏み込んで、跳び、ボールを上から叩きます。
ばだんっ!
「にょあっ!?」
はる先輩の打ったボールは、相手のブロックに跳ね返され、はる先輩目掛けて飛んできます。空中で避けられるはずもなく、ボールははる先輩にヒットしてそのまま落下。私は記録をつけるのも忘れて相手ブロッカーを見ます。信乃先輩と同じくらい背の高い一年生。よほど嬉しかったのでしょう、ものすごく喜んでいます。
「はる先輩があんなにぴったりブロックされちゃうなんて……」
「〝黒い鉄鎚〟――透は普通に全国レベルの選手だから。こういうこともあるよ」
珠衣先輩は肩を回しながら、なんでもないことのように言います。えっと、全国レベルって時点で全然普通じゃないと思うんですが……。
スコアは、17―18。
足音が、もうすぐそこまで来ています。




