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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第三章(城上女子) VS南五和高校
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80(ひかり) 代打の切り札

 いきなり交替と言われ、はてなと目を丸くしていると、立沢たちさわ先輩はバスケ部のほうに振り返り、その人の名を呼びました。


 網を潜ってやってきたのは、かなり背の高い御仁。ぱっと見て霧咲きりさきさん以上あるのは確実です。顔のパーツは全体的に猫っぽい印象。焦げ茶色のセミショートの髪は、ふわりと春風を受けたような軽いパーマが掛かっていて、しっとりと艶があるのに重く見えません。健康的なモデル体型で、Tシャツとハーフパンツからにょきっと伸びる手足がとても美しいです。


「こちら、わたしと同じ三年で、元バレー部員の」


油町ゆまち由紀恵ゆきえと申します! よろしくお願いいたしますっ!!」


 子供番組のお姉さんを思わせる、ハキハキと明朗な挨拶。さほど子供っぽく見えないのは、身長と、あとは声質のおかげでしょうか。有野可那カナリア先輩の声が耳に残っている分だけ、低く聞こえます。


 市川いちかわ先輩たちの反応から察するに、ちらっと話に出てきた、市川先輩と同時期に部を去ったという方だと思われます。


 立沢先輩は、こほん、と咳払いして、紹介と説明を続けます。


「いきなりで驚いた人しかいないと思うけど、そういうわけなので、タイムアウトが明けたらこの油町由紀恵をひかりの代わりに投入します。ブランクはあるけど、経験者だから、たぶん邪魔にはならないと思う」


胡桃くるみ、私のポジションってどこ?」


「ライトだよ」


「おっけー」


「はい。何か質問のある人」


 立沢先輩は私たちを見回します。まず手を挙げたのは、意外にも市川先輩でした。


「えっと、質問ではないんだけど、由紀恵は左利きだから」


 セッターらしい気配りです。言われた油町先輩は「こっちねー」と左手を上げます。


「……というか、もしかしなくても、私は続投なの?」


「少なくとも、由紀恵が前衛フロントの間は」


「そっか、そうなるか……」


 市川先輩が申し訳なさそうに宇奈月うなづきさんを見ます。宇奈月さんは、しかし、安定のにこにこ(ぶい)です。


「あ、あの、三園みそのさんは帰ってきますか……?」


 二人目の質問者は藤島ふじしまさん。私が聞くべきことのような気もしますが、先を越されました。


「由紀恵が後衛バックに下がったら、ひかりを戻すつもり。サーブはひかりに打ってもらうから、そのつもりで」


 立沢先輩は、途中から藤島さんではなく私に言います。


 と、ここで、タイムアウト終了の笛。


三年生わたしたちの都合でバタバタと申し訳ない。みんな、遠慮しなくていいから、気になることがあったらどんどん言ってやって。以上」


 立沢先輩に送り出され、私たちはコートに戻ります。立沢先輩はすぐさま副審の片桐かたぎり先輩のところへ行き、メンバーチェンジを申告。私は油町先輩と交替し、ベンチに下がります。その際、宇奈月さんが両手を広げて待っていましたが、ひとまずタッチをする程度にしておきました。


 のちのち再交替するとのことなので、身体を冷やさないよう、汗を拭いたあとはベンチに座らず立って観戦することにします。


 全員が守備位置コートポジションにつき、試合再開です。


 相手のサーブはレフトの赤井あかいしずく先輩。と、そのサーブが放たれる前に、宇奈月さんが立沢先輩に話し掛けました。


「ゆきりん先輩は、どういった方なんですか?」


 立沢先輩は少し考えて、答えます。


「その筋では、お助け油町とか、グレート()・ヘルパー()・ユキエ()とか、もっと直截的に代打の切り札って呼ばれてる」


「どういうことですか?」


「由紀恵はバレー部を辞めたあと、主にバスケ部とソフト部でピンチヒッターとして活躍してた。あの体型だし運動神経もいいから。ただ、由紀恵はいわゆる『スポーツ万能』とは違う」


 ふむ、と私も宇奈月さんも続きを待ちます。が、そうこうしているうちにサーブが放たれたので、立沢先輩も私たちもコートに目を向けます。


「まあ、見てれば大体わかるよ」

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