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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第三章(城上女子) VS南五和高校
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71(史子) ナイスキャッチ

 どうも。烏山史子(ふみこ)です。『とりやま』じゃないです。『からすやま』です。


 私はみなみ五和いつわ高校の一年生。入学して数週間が過ぎ、バレー部にもだんだん慣れてきました。


 今日は本当は美容院に行く予定だったのですが、せっかくの練習試合なのでキャンセルして皆さんにくっついてきました。あ、私はバレーは全然初心者で、高校に入って部活何にしようかなぁとふらふらしてたら可那かな先輩に捕まった口です。黄色い! すごい! と思って気付いたら入部していました。スポーツに関わるのも初めてな私ですが、皆さんよくしてくださるので楽しくやっています。今日はスコアの付け方などを教わりつつ、初の試合観戦です。


 今は私たち南五なんいつがリードしています。5―9。


「向こうのレフトの人……私と同じくらいの身長なのに、すごいですね」


 私は隣の珠衣ミィ先輩に話しかけます。


「あの人――岩村いわむらさんは……うん、すごい人なんだよ」


「そうなんですか?」


城上女じょじょじょの二年生って岩村さん一人しかいないの。三年生もマネージャーの人しかいない」


「あっ、どうりで人数が少ないんですね」


 と言って、すぐ気付きました。


「あれ? じゃあ大会とかはどうしてたんですか?」


「出てないんだよ。去年の夏に三年生が引退してから、今の今まで半年以上、あの岩村さんって人はマネージャーさんと二人で部活を続けてたの。練習は近くの他校に頼み込んで、そこの活動に混ぜてもらって」


「それはすごいですね……」


「部員の片方がマネージャーだから、実質一人だしね。しかも、混ざってたとこが音成おとなる女子」


「どこですか?」


「東地区一位――県四強の強豪校シード


「すごいですね!?」


「一年生で単身音成に乗り込むとか、可那さんレベルの無茶だよ。練習だって当然厳しい。県四強だから部員も多いし、門前払いされてもおかしくない」


「はわわ……」


 そんな話をしているうちに、プレーが始まります。


 こちらのサーブは信乃のの先輩。左利きなので、左手でサーブを打ちます(当たり前ですが)。相手の城上女じょじょじょは真ん中にいる小さな人がレシーブをきっちり上げて、ポニーテールの人がトス。レフトのすらっとした人が、ぱしんっ、と打ちます。ボールは月美るみ先輩の手に当たって、ぽーんとベンチにいる私のところに飛んできます。


 あまりにぴったり飛んできたので、思わず両手で受け止めてしまいました。


「史子お前えええええ!!」


「わあっ!?」


 いつの間にか黄色カナリア――可那先輩が目の前にいます。かんかんです。目が三角です。


「なにナイスキャッチしてんだよ! 落ちる前のボールに触るバカがどこにいる!? 正解はあたしの目の前だ!!」


「す、すいませんっ!」


「いいか、史子! バレーは野球じゃねえ! ファールフライもホームランもねえんだよ! だから落ちる前のボールにプレイヤー以外が触るな! 次ボールが飛んできたら速やかに避けろ! できればパイプ椅子ごと避けろ! そしてあたしの前に道を作れ!」


「はいぃぃ!」


「ちゃんと避けねえと次は蹴り飛ばすからなっ! よく覚えとけ!」


 可那先輩は言うだけ言うと私からボールを奪ってコートに戻っていきます。私は完全に涙目です。そんな私に珠衣ミィ先輩が優しく声をかけてくれます。


「ベンチにボールが来ることはたまにあるよ。まぁ……今のはさすがに取れるボールじゃなかったけど。でも、取れるボールだったら、可那さんは本気で蹴り飛ばしてくるから、暇なときに緊急避難の練習はしといたほうがいいかもね」


「わかりましたぁぁ」


 へなっ、と力が抜けます。お茶の間気分でベンチに座っていちゃダメなんですね。バレー、恐るべしです。


 さて、私がキャッチしてしまい、スコアは6―9。城上女は岩村先輩が下がって、信乃先輩(180センチ)級の方が前衛フロントに上がってきます。


「えっと……じゃあ、あの大きな方も一年生なんですか?」


「そうだよ。岩村さん以外はみんな一年生」


「皆さん、なんというか、すごくお上手じゃないですか?」


「うん、珠衣ミィも結構びっくりしてる。音成に勝ったっていうのもまるっきり嘘じゃないのかも」


「音成……って、さっき話してくださった県四強の?」


「ちなみに、珠衣ミィたちは一月にあった新人戦で音成にストレート負けしてる」


「それは……」


「いや、なんらかのハンデ的なものはあったはずだよ。でも、うーん……」


「何かあるんですか?」


「いや、珠衣ミィの知ってる音成女子は、ハンデ有りに甘んじて負けるようなチームじゃないから」


「普通に実力で勝った、とか?」


「それはない。……と思う。岩村さんはすごい人だし、とおるが強いのは知ってるけど」


「ふむぅ……」


 私はコートに目を向けます。岩村先輩のサーブは、小夜子さよこ先輩のところへ。小夜子先輩がカットを月美先輩に返して、はる先輩が速攻に入ります。トスははる先輩へ。はる先輩はそれをすぱーんとコーナーに決めます。


 これで、6―10。ローテが回ります。はる先輩が後衛バックに下がり、珠衣ミィ先輩はコートへ。入れ違いに可那先輩がベンチに戻ってきます。私はドリンクを渡しますが、可那先輩は「いいからいいから」とそれを押し返して、私の肩に手を置きます。


「よしっ! ボール避ける練習すんぞ!」


「はっ、はい!」


 可那先輩は休憩する間も惜しんで私に緊急避難のレクチャーをしてくれます。素早く立ち上がるために常に重心を前にしていろ、とか、スコアノートは邪魔だと思ったら投げろ、とか、パイプ椅子は最悪蹴り飛ばしてもいい、とか、過激なご指導をしてくださいます。もちろん他校の備品なので実際に蹴ったりはしませんが。


 と、ベンチから素早く立ち上がってパイプ椅子ごと移動する練習をしていると、審判の笛が鳴ります。


 あっ、いけません、プレーが始まってしまいます。記録ノートをつけなければ――。


「史子コラ! 記録そんなことより離脱こっちの練習のが大事だろうが! お前はあたしに蹴られてえのか!?」


「すいませんっ!?」


 私は試合そっちのけで緊急避難のシミュレーションをさせられます。とほほです。


 あっ、でも、プレー終了後に可那先輩が内容を教えてくれたので、記録に漏れはありませんよ!

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