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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第三章(城上女子) VS南五和高校
75/374

68(ひかり) 前衛

 スコア、3―5。


 とうとう前衛フロントになってしまいました。ネットから指先しか出ませんが、どうしたものでしょう。


 サーブは宇奈月うなづきさん。右打ちのフローターサーブは、FR(フロントライト)周辺を守る赤井あかいしずく先輩のところへ。少しレシーブを乱します。セッターの逢坂おうさか月美るみ先輩は、しかし、特に焦ることもなく、レフトに回った生天目なばため信乃のの先輩にオープントスを上げます。


 こちらのブロッカーは私と北山きたやまさん。生天目先輩は大きな身体を屈め、長い腕を振り、ぐわっ、と私の目の前で跳び上がります(その風圧だけで吹き飛ばされそうです)。迫り来る県内最高のサウスポー。遠近法が崩壊したような眼前の光景に、思わず「ぉふぅ」と変な声が出ます。


 改めて言うまでもありませんが、改めて言うまでもないのをわかった上で、改めて言いましょう。


 高い。


 だんっ!


 と生天目先輩のスパイクは、誰にも触らせることなくストレートに決まります。そのあまりにもあまりな角度と球速に、BR(バックライト)霧咲きりさきさんが目を白黒させています。180以上オーバーのアタッカーの実質ノーマークスパイクですから、無理もないでしょう。というか、霧咲さん、あの、本当にすいません……。


 スコア、3―6。あっという間にサイドアウト。こちらのサーブカットからです。


 前衛フロントは、レフトから私、岩村いわむら先輩、北山さん。セッターは霧咲きりさきさんで、宇奈月うなづきさんがサーブカットに参加します。


 サーブは赤井先輩。打ち出されたボールは、お返しのように宇奈月さんのところへ。宇奈月さんは無理なくカットを返します。北山さんがライトから速攻へ。霧咲さんはそれに合わせます。しかし、


 だんっ、


 とブロックに阻まれます。攻撃を読まれたわけではありません。トスを見てから跳ぶリードブロック。しかし、生天目先輩と結崎ゆいざきはる先輩はリードブロックでも十分な高さを発揮できます。北山さんと岩村先輩しか有効なアタッカーがいないので、ブロッカーも最初からセンターに寄っています。これでブロックをかわせというのも無茶な話でしょう。


 スコア、3―7。


「ねーねちん」


音々(ねおん)ちゃん」


 と、岩村先輩と宇奈月さんが同時に霧咲さんに声を掛けました。霧咲さんは二人を一度ずつ見て、年功序列に従い、まず岩村先輩のほうへ駆け寄ります。


「どうかしましたか、岩村先輩」


「うん。次なんだけどぉ、カットがどうなってもレフトセミをちょうだい。あっ、ネットから離しめでねぇ」


 岩村先輩はそう言ってにっこりと笑います。


「とりあえずぅ、決まるまで打ち込んでみるよぉー」


 ぐるぐると肩を回す岩村先輩。館一だていちの〝ガン(Transistor)タンク(Glamour)〟――ヤる気満々です。霧咲さんの頬が僅かに引き攣ります。生天目先輩と結崎先輩……おいたわしや。


「一発じゃ無理かもしれないからぁ、ひかりちゃん、ブロックフォローお願いねぇ」


「お任せください」


 私が前衛フロントでできる数少ないことです。全力で頑張りましょう。


「じゃあ、そぉういうわけでぇ!」


 るんるんっ、と楽しそうに守備位置コートポジションにつく岩村先輩。霧咲さんも元の位置に戻りながら、バックの宇奈月さんに声を掛けます。


「で、宇奈月のほうはなに?」


 宇奈月さんは「なんでもないっ!」とにこにこ顔で首を振りました。霧咲さんは首を傾げますが、間もなくサーブが来るので相手コートに向き直ります。


 サーブは引き続き、赤井先輩。私は岩村先輩がレフトへ回る際の邪魔にならないよう、且つ岩村先輩の分までサーブを拾えるよう、センター寄りの深めに陣取ります。


「……さあ、来いです」


 私は、私にできることをしましょう。

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