63(ひかり) 特に意味のない奇声
城上女子高校VS南五和高校。
試合がまもなく始まろうとしていました。
今回、城上女のローテは、VS音成女子のときと少し違います。
ポジションは、ライトのセッター対角が私になった以外、前回と同じ。
レフトのウイングスパイカーが、藤島さんと岩村先輩。
センターのミドルブロッカーが、霧咲さんと北山さん。
ライトのセッターが、宇奈月さん。
前回との相違点は、ローテと初期位置。
すなわち、こうです。
―――ネット―――
宇奈月 藤島 霧咲
北山 岩村 三園
ちなみに前回は、以下の通り。
―――ネット―――
藤島 霧咲 宇奈月
相原 北山 岩村
まず前提として、前衛で戦力外の私が入る位置は、常に三枚攻撃となるセッター対角以外にありません。なので、前回は相原先輩が務めていたポジションに、私が入ります。
ただし、前回の相原先輩の位置に私がそのまま入ると、私が前衛をする回数が多くなってしまいます。そのため、私の初期位置はBRとなりました。
また、戦力外の私と初心者の北山さんが前衛で長く重ならないようにするため、音成戦では霧咲さんの隣にいた宇奈月さんが、北山さんの隣に移動しています。
また、ローテ表からは読み取れませんが、私のプレイヤーポジションが、今回は後衛限定でBCとなっています。その際、北山さんと霧咲さんのプレイヤーポジションはBR。私が前衛のときは、通常営業です。
私はコートに入り、BRの初期位置から相手チームを見ます。
まずは前衛。
レフトは赤井雫先輩。身長は宇奈月さんより少し高いくらいで、セミロングの髪を首の後ろで一つ結びにし、楕円形の眼鏡を掛けています。練習では力強いスパイクを打っていました。
センターは佐間田珠衣先輩。身長はお姉さんの佐間田芽衣先輩より高く、170を超えています。佐間田先輩と同じくクイックが得意のようですが、芽衣先輩のクイックが速く鋭いものだったのに対し、珠衣先輩のクイックは高く重いもののようです。
セッターは逢坂月美先輩。身長は宇奈月さんと同じかやや低いくらい。落ち着いた雰囲気で、動きもゆったりとしていますが、トス回しはスピードのあるものでした。
続いて、後衛。
レフト対角は江木小夜子先輩。南五和のスタメンの中で最も背が低い選手です。後衛スタートなのはそのためでしょうか。恐らくは、音成の柴田先輩と同様、守備の得意なレフトなのだと思われます。
センター対角は結崎はる先輩。南五和で二番目に長身の選手。頭の上に二つお団子があります。ムードメーカー的存在のようで、かなり明るい方です。
セッター対角は生天目信乃先輩。『県内最高の左』とのことで、その身長は藤島さんを超えるというのだから驚きです。
それから――と、私はコートの外に目を向けます。
肩をぐるぐる回しながら、試合開始を今か今かと待っている、リベロの有野可那先輩。
曰く、南五の〝暴れ金糸雀〟。
一目見たら忘れない真っ黄色の髪と、体育館に響き渡る澄んだ声は、まさに金糸雀そのもの。
それでいて、最初に体育館の扉を開け放ったときの、あの荒っぽい言動。
身長は私と同程度――150あるかないかとかなり小柄ですが、存在感は抜群です。
中央地区一位の南五和高校で、一年生の夏から三年生に混じって活躍していたというのですから、その実力の高さは疑いようもありません。同じリベロとして、気になる相手です。
そして、いよいよ試合開始の笛がなりました。
「しゃあああああああああ!!」
「やっはああああああああ!!」
笛と同時に、甲高い叫び声を上げてハイタッチをする結崎先輩と有野先輩。二人は入れ替わり、結崎先輩はベンチ、有野先輩はコートへ。
「っさあああああ!! しまっていくぞおおお前らあああああ!!」
「「おおおおおお!!」」
す……すごいプレッシャーです。喩えるなら宇奈月さんがコート内に三、四人いるようなものです。ちょっとした合戦です。有り体に言うとかなりうるさいです。
「うおおおおおお!! さああああこおおおおおいいい!!」
宇奈月さんが負けじと声を張ります。プレーが始まる前からお祭り騒ぎです。
サーブは、南五和から。部長の江木先輩が、サービスゾーンで構えを取ります。
ぴっ、と笛の音。
「「「いえああああああああああ!!」」」
特に意味のない奇声が入り交じる中、サーブが、放たれました。




