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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第三章(城上女子) VS南五和高校
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59(静) 当日

 新生・城上女じょじょじょバレー部がみなみ五和いつわと練習試合をするという当日。


 私は完全に上の空で、授業が頭に入ってこなかった。


 放課後はどんどん迫ってくる。正直に言えば、逃げ出したかった。


 しかし、その気持ちは胡桃くるみに読まれていたようで。


「失礼しまーす!」


 いそいそと帰り支度を整えていると、元気な挨拶とともに見知らぬ子が現れた。すらりとした体型に、爽やかな黒髪ポニーテール。スカーフの色からすると、一年生のようだ。


 まさか……と思って見つめていると、その子に続いてもう一人、栗色のボブカットの子がひょっこり顔を出した。


 私はその子を知っている。岩村いわむら万智まち。年は一つ下。小学校時代に、バレークラブで私の後輩だった女の子だ。小柄で丸っこく、いかにもゆるふわ系のぽあぽあした雰囲気の持ち主だが、その内にとてつもないパワーを秘めている。


 万智は教室を見回す。ほどなく私と目が合う。それはそれは嬉しそうに微笑まれた。


 万智とポニーテールの一年生は、周りの三年生にぺこぺこ頭を下げながら私の元へ。


 観念して、私は少しぎこちない微笑で二人を迎えた。


「や、やあ、ごきげんよう」


 緊張して変な挨拶が出てきた。ごきげんようとか、何キャラで行くつもりだ、私。


「お久しぶりですぅ、しず――市川いちかわ先輩」


「久しぶり……だね、万智。畏まらないで、呼び方は昔のままでいいよ。それと、あなたは」


宇奈月うなづき実花みかと申します! 一年生です! 初めまして!」


 眩しいくらいの笑顔に、騒がしいくらいの声。なかなかインパクトのある子だった。


「初めまして。私は市川(しずか)。その……」


 どういう立場で接したらいいものか、と迷い、結局「三年生だよ」と至極わかりきったことを言った。


「というわけでぇ、静ちゃん。ちょっとご同行願いまぁすっ!」


「うん。まあ、そういうことなんだろうとは思ったけど……」


 万智が胡桃と二人だけでバレー部を続けていたことは知っていた。万智の入部は私が辞めたあとの出来事だが、それでも、若干の負い目があるのは事実。この状況で万智を突き返せるほど、私は強情な人間じゃない。


 けれど、かといって、ここでほいほいついていけるほどお気楽な性格でもない。そもそもそんなことができていたら、バレー部を辞めることだってなかっただろう。


 仕方ない、行くしかない、と思っても、身体はそんなに素直には動かなかった。


 腰が重い。あとは立ち上がるだけなのに、鞄の持ち手を掴んだところで、足が竦んでしまう。


 そこへ、


「お荷物お持ちしましょうか?」


 そう言って、ポニーテールの一年生――宇奈月さんは、持ち手を握り締めている私の手に自らの手を重ねてきた。驚いてその顔を見ると、彼女はにこにこと笑っていた。強張っていた全身が少しだけ弛緩する。


「あぁ、えぇ……」


「では、失礼しまして!」


 私の曖昧な返事をイエスと受け取って、宇奈月さんは私の鞄を軽々と持ち上げる。そればかりか、シューズ袋や、着替えの入った袋も彼女が持ってしまう。私はすっかり手ぶらになる。すると、その手を、今度は万智に掴まれた。


「じゃあ、行こぉ、静ちゃん」


「そ、そう……ね」


「ほらぁ、早くぅ!」


 万智に引っ張られ、私は自分の席を立つ。


 拒むことなど、できるはずがなかった。

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