45(美波) 見せ場
24―21。
土壇場。瀬戸際。土俵際。
さて、この場面、この状況、セッターである私はど
「よーい、ヅカミー。ごちゃごちゃ考えてねーで私に上げやがれー」
レフトからじゃじゃ馬の声。つばめがいなくなって気付く。私にあいつの手綱は握れない。
「いいけど、しくじらないでよね?」
「てやんでー、あたぼーよー」
言い返す言葉が見つからないわ。
私は相手を見る。
サーブはたった今派手にツーアタックを決めてくれやがった両利きの子。今回のサーブは右打ち。
ばしっ、と綺麗なフォームのフローターサーブ。ボールは和美へ。和美は特に緊張した様子もなく、いつものように適度なカットを返してくる。
私はトスをマリチカへ。
マリチカはボールを相手コートの床へ。
24―22。
まるで呼吸をするように、成女のエースは点を奪う。
「よっしゃ! 見せ場だぜぃ、ドロメダ!!」
相手方から転がってきたボールを掴むと、笑顔でそれをアンに押し付けるマリチカ。
ローテが周り、さやかが抜け、愛梨が前衛に上がって、サーブはアン。
アンのジャンプサーブは、今日は一本も入っていない。
それを、マリチカは、このミスしたら負ける点数状況で、強要する。
「えっ、で、でも」
当然、アンは戸惑う。しかし、マリチカはただ笑って送り出すだけだ。
「なあ、ドロメダ。2点差で相手のマッチポイントっつーこの今。てめーは苦しいか? 恐いか? 逃げたいか? ぶっちゃけどーでー」
「正直……全部、そうです」
「だろーな。で、『実は私もだ』って言ったらどうする?」
アンは目を見開いて、マリチカを見つめる。
「あと、4点だな」
マリチカはスコアボードを視線で示して、小指以外の指を立てる。
「てめーがあと4点、得意のジャンプサーブでサービスエースを決めてくれりゃ、こんな楽なゲームはねーよ。私はネット際で突っ立ってりゃいい。簡単だな」
マリチカは、ボールを持つアンの手に、優しく自分の手を重ねる。
「別にてめーが4本連続でヘナチョコサーブを入れるってんなら、それでもいいんだ。そんときは、カットとトスさえ上げてくれりゃ、私があと4点決めてやるよ」
手にぐっと力を込め、マリチカは口元を吊り上げる。
「いいか、ドロメダ。もう一度言うぜぃ。成女にとって、点は常に自分で奪うもんだ。相手から貰うもんでも、ついでに味方の誰かに取って貰うもんでもねー」
そう言って、マリチカはアンの背中を叩く。
「わかったら、決めてきやがれ! てめーならできるっ!!」
「はい!!」
マリチカの激励を受けたアンは、意を決してサービスゾーンへと走っていった。
ま、大変だとは思うけど、頑張りなよ。
「ヘーイ! ナイッサー、アンっ!!」
陰ながら応援してるからね、期待の一年生。
「行きますっ!!」
終わりは、近い。




