41(愛梨) ちょき
城上女子VS音成女子。
18―18で迎えた終盤。城上女はタイムアウトを取り、マチ子、北山、セッターと攻撃に難のある前衛を強化するため、セッターを変えてきた。
さらに、向こうはブロックのポジションを変更。判断力を要求されるミドルブロッカーをあの両利きの子が務め、北山梨衣菜はライトブロッカーに。
初心者の北山がマンツーマンコミットで私をマークする限り不可能に近かったサイドへの二枚ブロックを成功させる。
和美さんからワンタッチを取り、Aクイック―レフト平行のコンビからマチ子が決めて、逆転。
19―18。
ぼたり、と指先から汗が落ちる。
「ヘーイ、腕大丈夫かー、愛梨?」
美波さんが揉んでくる。が、ちょっと今はリアクションを取っている余裕がない。
「大丈夫です。いえ、めちゃ痛いですけど……それより、点数が」
「あー、まーね。あっちの作戦がハマった感はあるわ。私も驚いてる」
美波さんは苦笑して、私の背中を叩く。
「とは言え、焦る場面じゃあない。落ち着いて、切っていこう」
「……はい!」
相手のサーブはつばめさん。ボールは後衛のマリチカさんへ。
「そーら! 上がるぜぃ!!」
カットはセッターへ。私は速攻に入る。
「――ちょき!!」
両利きの子が何か言っている。よくわからない。私は踏み込みの途中で切り返して、Cクイックへ。踏み切る。トスが上がる。
「っ!?」
目の前に両利きの子のブロックが。なぜ? それにマチ子はどこへ? 思ったけれど、トスが上がっている以上打ち抜くしかない。私はブロッカーの左、空いているコースへ。
「りあゃーっス!!」
「なあ……っ!?」
北山が横から!? 何が、どうなって――、
だんっ、と私のスパイクはいきなり現れた二枚目のブロックに阻まれ、こちらのコートに落ちる。
20―18。
ハイタッチをかわす両利きの子と北山。私はまだ何が起きたのか理解できていない。と、呆然と立ち尽くす私を、美波さんが揉んできた。
「ひゃっ!?」
「やー、ごめん、愛梨! 完っ全に読まれてたわ!」
「美波さん、こんなときに――えっ?」
振り返ると、美波さんは両手を合わせて私を拝んでいた。
「だから、今のCクイック。私のトスが読まれてたんだって。マチ子が場所を譲ったのも、サイドにいた初心者の子が追いついてきたのも、ミドルブロッカーの両利きの子が指示を出したからよ」
読まれた……? 今のが?
「そうよね、マリチカ?」
私が状況をうまく飲み込めずにいると、美波さんが視線を横に移した。マリチカさんはにっと口元を吊り上げて笑った。
「おーよ。こっちは何度かマチ子とのミスマッチを狙ってセンター線を使ってるしな。レフトのバタミが捕まったんだから、お次は速攻ってなもんよ。あたー適当に合図決めときゃいい。あの初心者の身体と反射なら、それに応えられんだろーよ」
マリチカさんは私に近付いてきて肩を組むと、耳元で囁いた。
「ああいうことをやってくるってこたー、ああいうことでもしなきゃ止まらねーってこった。一点読みさえされなけりゃ、てめーの速攻は十分通用する。だから、ちょっとシャット食らったくらいで萎縮すんなよ。それこそ向こうの思う壷だぜぃ」
ぽんぽん、と私の肩を叩くと、マリチカさんは守備位置に戻っていった。
「っしゃあ、気張っていけよぃ! てめーら!」
威勢のいい声が後ろから飛んでくる。ここに来て、ようやく私は先輩たちに励まされているのだと理解する。
そうだ。しっかりしろ、私。
次は……決める!
「もう一本! お願いしますっ!」
私が言うと、セッターの美波さんはにやりと微笑んで、親指を立てた。




