39(胡桃) チームの勝利
成女キャプテン・相原つばめのスパルタ指導によって東愛梨が沈み、スコアは17―17の同点。
サーブは引き続き藤島透。これを柴田和美がしっかりと返して、得意のコンビバレーから佐間田芽衣が速攻を決める。
17―18。
サーブ権が移動して、成女のサーブは、その芽衣。
サーブは岩村万智のところへ。万智はやや乱されながらも、許容範囲のBカットを上げる。万智はそのままレフトにトスをもらって、二枚ブロックを打ち抜いた。
18―18。
ローテが回って、セッターの宇奈月実花が前衛へ。
と、ここで実花がわたしに視線を送ってきた。わたしは意図を察して、タイムアウトを取る。
長めの笛が鳴る。実花以外のメンバーは表情に疑問を浮かべて、ベンチに下がってくる。
「どうしたの、胡桃? 何か気になることでもあった?」
サーブを止められた格好のつばめがまず尋ねてくる。チームの中でつばめだけがわたしと同学年、というのも、つばめが真っ先に口を開いた理由だろう。
「このローテの攻撃をどうするか……」
わたしは目で実花に確認する。実花はにこにこ笑っていた。これで合っているらしい。
「アタッカーが実質万智一人。そして、成女はあと二つローテが回ったら鞠川千嘉が上がって、さらに一つ回れば一番強いローテになる。ここで離されたら、逃げ切られておしまい。そうなる前に手を打っておきたい」
わたしが言うと、真っ先に手を挙げたのは北山梨衣菜だった。
「はいっス! 自分が、こうっ、愛梨殿みたいな、きゅ、ひゅ、ずばーんってやつを!!」
「半年早い」
「がーん!」
「いや、梨衣菜、半年であれができるようになったらあなた天才よ」
「ほ、本当ですか、相原殿!? 自分、頑張るっス!!」
次に発言したのは、リベロの三園ひかり。
「今すぐ攻撃力を上げるなら、このローテだけセッターを霧咲さんに変えるのが妥当ですかね」
「そう。でなければ、透がバックアタックを打つ、とか」
「バックは……じ、自信ありません」
「なら、やはり霧咲さんにセッターをやっていただくのが良いかと思いますが」
ひかりは音々に視線を送る。音々は頬を掻いて、「みんながそれでいいなら」と応えた。
「私もみんながいいのならぁ」(万智)
「自分は皆さんにお任せっス!」(梨衣菜)
「霧咲さんが入ると、三園さんは抜けちゃうんだよね。そのあとは……?」(透)
「私は、相原先輩さえよろしければ、サーブが終わり次第先輩と代わりたいと考えているのですが」(ひかり)
「私は構わないわよ。必要以上に出しゃばるつもりはないわ」(つばめ)
「で、当の宇奈月は?」(音々)
「私? 私はがんがん行こーぜ、だよ!」(実花)
「宇奈月さん、それ答えになっていませんよ」(ひかり)
話がまとまったようなので、わたしはぱんぱんと手を叩いてまとめに入る。
「じゃあ、ひかりと音々が入れ替わり。音々がセッター。それに伴って、つばめの守備位置をバックセンターに変更。透はそのままバックレフト。
向こうにサイドアウトを取られたら、つばめとひかりが入れ替わり。セッターは引き続き音々で、音々が前衛に上がったら、セッターは実花に戻す」
タイムアウト終了を知らせる笛が鳴る。これでもう、わたしたちはタイムアウトを取れない。
コートにみんなが散らばっていき、ひかりが音々と入れ替わる。成女サイドが僅かにざわついた。
「お疲れ様、ひかり」
ベンチに下がったひかりに声を掛ける。ひかりはぺこりとお辞儀をして、わたしの隣に立つと、デフォルトの何を考えているのかよくわからない目でコートを見つめた。
「立沢先輩。つかぬことをお伺いしますが」
「今のタイムアウトなら、実花だよ。『ちょっとタイム』って顔された」
先回りでひかりの質問に答える。ひかりは「そうですか」と相槌を打った。
「わたしは、つばめのサーブが終わってからでいいかな、と思っていたのだけれど。でも、実花的にはここだったみたい」
「何がどこまで見えているんですかね、あの人」
「わからないけれど、目指しているものはあなたと同じだと思う」
「と、言いますと?」
ひかりがちょこんと首を傾げてわたしを見る。わたしはひかりを横目に捉えて、微笑んでみせる。
「チームの勝利」
短い笛が鳴り、つばめがサーブを放った。
図解。
<現在のローテ>
―――ネット―――
実花 万智 梨衣菜
ひかり 透 つばめ
↑(コートポジション)
↓(プレイヤーポジション)
―――ネット―――
万智 梨衣菜 実花
透 ひかり つばめ
※ひかり(リベロ)は音々と交替中。
※前衛に実花(セッター)、梨衣菜(初心者)がいるので、実質攻撃が万智一人
<セッター変更>
―――ネット―――
実花 万智 梨衣菜
音々 透 つばめ
↑(コートポジション)
↓(プレイヤーポジション)
―――ネット―――
万智 梨衣菜 実花
透 つばめ 音々
※ひかり(リベロ)と交替していた音々をコートに戻し、セッターを実花から音々へ変更。
※実花がアタッカーになり、有効な攻撃が可能なアタッカーが万智と実花の二人に。
※セッターになった音々のプレイヤーポジションがバックライトに。
※それに伴い、つばめのプレイヤーポジションがバックセンターに。
<サイドアウトを取られたら>
―――ネット―――
実花 万智 梨衣菜
音々 透 ひかり
↑(コートポジション)
↓(プレイヤーポジション)
―――ネット―――
万智 梨衣菜 実花
透 ひかり 音々
※ひかり(リベロ)はサーブを打ち終えたつばめと交替。守備位置はバックセンター。
※セッターは引き続き音々。
<ローテが一つ回ったら>
―――ネット―――
音々 実花 万智
透 ひかり 梨衣菜
↑(コートポジション)
↓(プレイヤーポジション)
―――ネット―――
万智 音々 実花
透 梨衣菜 ひかり
※セッターを音々から実花へ戻す。
※プレイヤーポジションは、各々元に戻る。
* 要約
(1)攻撃力増強のため、実花にもスパイクを打ってもらう。
(2)実花がアタッカーになるとトスを上げるセッターがいなくなってしまうので、
(3)ひかり(リベロ)と交替していた音々(セッター経験者)をコートに戻し、
(4)音々にセッターをしてもらう。
(5)それに伴って(プレイヤーポジションやリベロの出入りなどを)色々調整。
(6)ローテが回って音々が前衛に上がったら、今まで通りに戻る。




