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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第二章(城上女子) VS音成女子高校
38/374

34(美波) 四人レシーブ体制

 あいたたた……やってくれるわねー、あの一年生。


 確か、霧咲きりさき音々(ねおん)。自己紹介では元セッターって言ってたけど、全然アタッカーでやっていける子だわ。まるで一年前の愛梨アイリーを見ているみたい。


 12―13。なかなか引き離せない。少し、ヤな感じ。


 サーブは、万智(マチ子)。ボールは和美かずみへ。レフト方向へややズレたBカット。


「わぁ~、みーちゃん、ごめ~ん!」


「問題なっしん!」


 定位置から少しズレたとは言え、レフト方向へ二歩分程度。しかもボールの軌道はほどよい山なり。コンビを使うのに支障はない。


 こういうとき――サーブの勢いが思ったよりもあって、『あ、これはカット乱しそう』ってなったときに、無理にAカットを狙わず『リカバリーの利くBカット』へ持っていけるのが、和美の美点だ。


 いつもいつも最善ベストの結果を出すなんて理想論。和美はそれを理解していて、コンスタントに次善ベターの結果を残す。心憎いねえ。


 たたっ、と私は素早く落下点に入り、ジャンプトス。いっそツーアタックでも打ってやろうかと思ったけど、視界に入る巨体ふじしまの圧力が恐ろしくて断念。マリチカに平行を上げる。


 マリチカはそれを一発で決める。こちらは常に最高ベスト狙い。それを可能にするだけの〝強さ〟が、彼女マリチカにはある。


「ヘーイ! ナイスキー、マリチカ!!」


「あたぼーよー!」


 何度も交わしてきた決まり文句。


 これで、12―14。


 ローテが周り、私が後衛、芽衣サマメィが前衛。


 本日二度目の、マリア様(鞠ア佐間)ローテ。


 私は、サービスゾーンに立ち、ボールを受け取って、ふうっ、と呼吸を整える。


 相手は藤島とリベロとマチ子の三人レシーブ体制。


 藤島はさっき散々イジめたし、リベロの子はかなり上手いから、やっぱここはマチ子かな。


 主審の笛が鳴る。サーブの軌道をイメージしたのち、私は助走に入った。


 たっ、と片足で踏み切って、ボールの中心を押し出すように叩く。


 サーブは狙い通り、マチ子の左、その足下へ。マチ子は落下点を予想し、アンダーハンドで取りにいく。


 ただ悪いけど、そのサーブ、けっこう落ちるわよ?


「う、わぁ……っ!?」


 急激に落下フォークするサーブ。マチ子は腰を落として両手を伸ばすも、コントロールの利かない拳にボールが当たり、ががっ、とレシーブは浮くことなく地面に跳ね返る。


「うぅ……ごめんなさぁい」


 しょげるマチ子。ドンマイ、と励ましながらその周りに集まる一年生たち。


 スコアは、12―15。あと3点くらいは最低でも取りたいところよね――ん?


 相手のセッターとリベロ、それに霧咲が何か話している。二、三のやり取りを終えると、三人はコートに散っていった。


 リベロは、先ほどまでより、ややレフト側に。


 霧咲は、セッターの位置に。


 セッターだった両利きの子(スイッチアタッカー)は、コート中央ややライト寄りに。


 そして、彼女に押し出されて、マチ子がバックライトに。


 ―――ネット―――

      音


  透     実


       万

   ひ  梨

 ―――エンド―――


 セッター変更の上、四人レシーブ体制。


 この切り替えの速さ。元々想定していた守備位置フォーメーションのパターンだとは思うけど、今の一本を見ただけでそっちにしちゃうんだ。守備位置フォーメーションもそうだし、試合の中でセッターを変えるとか、思い切ったことするわ。


 役割ポジション変更してまでレシーブに参加したということは、あの両利きの子(スイッチアタッカー)、少なくとも霧咲よりはレシーブに自信がある、ってことよね。思い返せば、サーブカット練習のときも普通に上手かったし。


 ……そう言えば。


 あの両利きの子(スイッチアタッカー)、地元民じゃないらしいけど、中学のときはどこのポジションをやっていたのかしら。


 特に不具合なく、ごく自然にセッターをやっていたから、元セッターなのかな、と漠然と思ってたけど。


 まあ……ひとまず今は、置いておくか。


 私は、ボールの感触を確かめ、サーブの構えを取る。


 ぴぃ、と短い笛の音が、鳴った。

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