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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第十章 AT和田総合体育館(II)
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C-14(つばめ) 必要性

 小学生のときも、中学生のときも、そして高校生の今も。

 私は望んで、また望まれて、キャプテンになった。


 性格的に向いているのだろうと思う。周りからそう言われたこともある。チームのまとめ役という立場にやりがいを感じるし、他チームや外部の人と関わるのも世界が広がるようで面白い。

 四強・音成女子の主将キャプテンになってからは、特に充実した日々を送っている。

 しかし、いつもいつも良いことばかり、といわけにはいかない。

 時々だが、「なんだかなぁ」と思ってしまうことだってある。

 私がキャプテンである必要性ってなんだろう――と、悩むこともあるのだ。


 ――――――


「次で、決めなさい」


 開口一番、腕組みした監督が私とマリチカに視線を合わせて、そう言った。


「……私からは以上よ」


 全員の表情を見回したあと、問題ナシと判断したのだろう、監督はそのままパイプ椅子にどかっと腰を下ろし、長い足を鋏のようにさっと開閉させて足を組んだ。恐らく、監督がタイムアウトを取ったのは、私たちに何かを伝えるためではなく、相手の流れを断つためだったのだろう。そうして試合を仕切り直せば、私たちなら自力で状況を打破できる、と考えている。

 ならば、私は主将キャプテンとして、監督の信頼に応えねばならない。あるいは、これが監督の与えた試練だとしても、同じこと。乗り越えるべく力を尽くすまでだ。


「「ありがとうございました!」」


 監督に一礼したのち、私は今後の方針を話し合うためにスタメンを集める。


「さて……と。決めろと言われたからには私はそうするつもりだけど、そっち(マリチカ)は?」

「言わずもがな、ってねぃ」

「というわけで、美波みなみ、あとはあなたの判断に任せるわ」

「良きに計らえ、ね。オーケー」


 確認作業は終了。本題はここからだ。


「で、その後のことなんだけど――一つは、藤本ふじもといちいね。打てる手があるなら、打っておきたいわ。さやか、あなたから何かある?」

「そっすね……もっさんに限った話をすんなら、今のままだと後手っす」


 言って、さやかは和美かずみへ目を向けた。和美はさやかの意図(言わんとすること)を理解したようで、にへら、と表情を緩ませた。


「じゃあ~、さーちゃん、わたしと場所ポジション代わろっか~」

柴田シバっさんがいーなら、お願いすっす」

「構わぬよ~。さーちゃんの好きにやっちゃって~」

「あざっす」


 どうやら二人の間で既に対応を練ってあったらしい。その事実だけでも安心できる。さやかと和美が動いているなら、私があれこれ口を出すまでもない。実際、そうと決まるや、さやかは細かく指示を出した。


「もっさんのブロックっすけど、とにかく隙間を作らないように。あと、できれば常に三枚ほしいっす。マリチカさん、いけっすか?」

「あたぼーよ」

「しくよろっす」


 ふーぅ、とさやかは集中を高めるように長く息を吐いて、あたしからは以上イジョっす、と軽く頭を下げた。細長く垂れるツインテールが波打つ。その狭間に浮かぶ表情が少し硬く見えるのは、相手が同期の藤本だからか。しかしそれも、幼馴染みの愛梨あいりがさりげなく後ろに立って何か囁きかけると、すぐに和らいだ。うん、問題なし――と。


「じゃあ、守備については、今さやかが言った感じで。それと、決めておきたいのはもう一つ。次のローテの攻撃のことだけど――って、ちょっと芽衣めい、さっきからどこ見てるの」


 状況が状況だけに私は厳しめに言った。しかし、芽衣は――春先、ふと梅の花でも見かけたみたいに、うっとりとAコートのほうを見ていた――まるで悪びれることなく、優美な微笑を湛えてこちらに振り返り、言う。


「ごめんあそばせ。もがき苦しむ愚妹が可笑しくって、つい」

「つい、ってあなた……」


 私は呆れを隠さず溜息をついて、こめかみに手を添える。まぁまぁまぁ、と場を取り成す美波。それは芽衣を庇うというよりも、私を労るためのものだった。私は有難くその気遣いに癒されることにする。


「まあ、そういう次第わけなので――」


 胸の前で両手の五指をぴたりと合わせ、瞳にぎらぎらとした光を宿して、芽衣は言う。


「姉として、道を示してあげないとね」


 ぱきぱき、と合わせた指が不穏な音を立てた。その漲るやる気をもっと早くに出してほしかったわ……などと、無意味と知りつつやや非難めいた視線を芽衣(自由人)にぶつけながら、私はこっそり嘆息する。

 なんだかなぁ……まったく、これだから音成(四強)に集う仲間メンバーってヤツは――。


「……ええ、是非そうして頂戴」


 私は肩を竦めて、苦笑する。

 マリチカも、さやかも、和美も、芽衣も、それに愛梨だって――。

 どうしてこう、みんな、私がとやかく言うまでもなく、各自が独自にやるべきことをやってしまうのかしら?

 私がキャプテンである必要性、あるかしら?


「いつもお疲れ様です、つばめ(キャプテン)

「肩揉んでくれる、美波(副キャプテン)?」

「ヘーイ、お安い御用で!」


 ぐにぐにぐに、と美波の指が器用に私の凝りをほぐしていく。その手が肩ではないところへ移動しかけたところで、ありがとう、と私は払いのけた。「約束が違うよ! この人でなし!」と美波が涙目になっているが、今は放置。私は腹筋に力を込めて、気炎を吐く。


「――全員、状況はわかってるわね!」

「あいよ!」「ヘーイ!」「はい!」「うっす」「お~」「ええ」

「やること頭に入ってるわね!」

「あたぼー!」「ヘイヘーイ!」「はい!!」「っす」「おお~」「ええ」


 チームの危機に、誰もが己で対応策を講じる。

 そんな頼もしい仲間メンバーに囲まれて、キャプテンである私がすべきことは何か。


「ならば良し――だったら後は、実行あるのみッ!」

「「応ッ!!」」


 この一騎当千の曲者たちを、バラバラにならないよう、束ねておくこと。


成女なるじょおおおおおおお!!」


 そのために私は、今日も声を張り上げる。


「「ぶぅぅぅっっっっっ――殺おおすッ!!」」


 ……ところで監督、この掛け声、保護者からクレーム入ったりしませんかね?

『A-14』も更新されています。↓

https://book1.adouzi.eu.org/n5390ct/338/

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