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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第十章 AT和田総合体育館(II)
351/374

C-7(明晞) 鎧

 ブロック大会県予選、第二日目。

 Cコート、準々決勝、音成女子VS石館商業。

 藤本ふじもといちい君のジャンプサーブで先手を取った私たちだったが、音成のエース・鞠川千嘉マリチカ御大の一足早い前衛フロント復帰でそのリードを埋められ、現在、7―7の同点。

 相手のサーブは裏エースの柴田しばた和美かずみさん。こっちに飛んできたボールを私がレシーブし(ごめんちょっと乱れた)、それをやなぎ千里ちさと――センリがレフトへ繋いで、尾崎おざき玲子れいこがクロスいっぱいに打ち込む。得意のコーナー狙い。やったかなあ? と安心したのも束の間、するすると滑るように動き回る向こうのリベロに追いつかれてしまう。


「さーちゃん、ナイス~」

「どもっす」


 あの子を抜くのは大変そうだなあ、なんて他人事のように思いつつ、迎撃ブロック準備。相手は二枚攻撃。ライトブロッカーである私はマリチカ御大の一発に備え、ややそちらに寄る。しかし――、


美波みなみ、私にちょうだいッ!」

「オーケー!」


 気迫を鎧のように纏って切り込んできたミドルブロッカー――相原あいはらつばめさんによって、私の思惑は外される。慌てて速攻のブロックに跳ぶも、間に合わず。


 どんっ!


 とブロックの間を抜かれてしまう。

 スコアは、8―7。逆転――やられちゃったねえ、と転がるボールを見送り、ちらりと相原さんのほうに目をやった。

 天下エースのマリチカ御大に頼ることなく、自らの手で決めてきた。これが四強・音成女子を率いるキャプテンかあ……頭が下がるねえ。

 どうしたもんかなあ、と周りに声を掛けつつ考えながら、レセプションに備える。サーブは、またしても私のところへ(あれ? もしかして狙われてる?)。今度はわりかしいいところに上がり、三枚攻撃のチャンス。そこから千里センリは、もう一度玲子へ。


「らああっ!」


 がんっ!


 と炸裂する強打。だが、


「ワンタッチ!」

「つーちゃん、ナイス~」


 と、決まるには至らない。そうこうしているうちに、一撃決殺を謳う攻撃陣が迫ってくる。


「「ヅカミー(美波)、私に寄越せ(ちょうだい)!」」


 エースとキャプテン、どちらも打つ気――いや、決める気満々である。となればやっぱりエース? と思いきや、トスは再び速攻に上がった。そんなのってないよ……!


「っしゃああ!」

「二度も……喰らうかっ!」


 おおっ、杏子あんずがやってくれた! かろうじて拾い上げたボールは、しかし、セッターのところではなく、ブロックに跳んだばかりの佐々木(ささき)郁恵いくえへ。


「ライト、お願いします!」


 郁恵はスパイクが抜けたライト方向――つまり身体を開いたライトのほうへ二段トスの構え。おっとっと、ここで私か……どうしたもんかねえ、と相手方をちらり。


「準備はどうでー、ツヴァイ?」

「どこからでも来いよ!」


 ……まるで打ち抜ける気がしない――まあ、運次第ってことで。


「よっ!」


 ぱあんっ!


 と私は真正面に強打する。が、スパイクは相原さんに阻まれネットを越えない。このまま落ちちゃったらかなりまずいんだけど……と祈るような気持ちで背後へ視線を送る。すると、


「っ、上がった!」


 うっし、ナイスフォロー! 信じてたよ、千里センリ


「――玲子、そっちいくからねえ!」

「おうっ! 持ってこい、明晞あき!」


 千里センリのフォローしてくれたボールを、私はアンダーハンドで逆サイド(レフト)へ繋ぐ。弾道はやや低め。玲子がぎりぎり踏み込めるタイミング。さぞ打ちにくかろうが、その分相原さん(ミドルブロッカー)もレフトに回るのがぎりぎりになるはず――。


「決まっとけ……!」

「このっ――!」


 ぱしんっ、


 と、トスがネットの上に浮いたところを狙い澄まし、玲子はボールを相手コートのフロントゾーンへ叩き込む。これはさすがに読んでなければ拾えない。


「っしゃあ!」

「ナイスキー、玲子。助かったよ」

「そりゃこっちの台詞だ。サンキューな、明晞」

「いいえいいえ」


 ぱちっ、と手を打ち合って、私はサービスゾーンへ向かう。これで私は後衛バック――すなわち、いちい君が前衛フロント

 スコアは、8―8。

 ローテが一周して、点差状況も振り出しに戻る……か。まあ、なかなかいい勝負をしていると言っていいだろう。

 でも、いちい君はもちろん、玲子も千里センリも杏子も郁恵も、あと瑠璃るり(ちょおーい、静のほう(そっぽ)向いてないでこっちの応援もしてねえ?)も、いい勝負で終わらせるつもりなんてこれっぽっちもない。


 私だって――これでもキャプテンだからねえ――その気持ちにできるだけ応えたい。


 さあて、どうしたもんか……。


 受け取ったボールを、ぼむっ、と弾ませ、ふうっ、と軽く息をつく。


 まあ、何がどうなるかは、その時が来てみないとわからないってことで――。


「なんとかなあれ……っと!」


 ばしっ、とサーブを打ち込む。さっきのお返しとばかりに柴田さんを狙って。が、難なくAカットにされてしまう。


 ……うん、なんとかなるといいなあ。

『A-7』も更新されています。↓

https://book1.adouzi.eu.org/n5390ct/331/

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