C-7(明晞) 鎧
ブロック大会県予選、第二日目。
Cコート、準々決勝、音成女子VS石館商業。
藤本いちい君のジャンプサーブで先手を取った私たちだったが、音成のエース・鞠川千嘉御大の一足早い前衛復帰でそのリードを埋められ、現在、7―7の同点。
相手のサーブは裏エースの柴田和美さん。こっちに飛んできたボールを私がレシーブし(ごめんちょっと乱れた)、それを柳千里――センリがレフトへ繋いで、尾崎玲子がクロスいっぱいに打ち込む。得意のコーナー狙い。やったかなあ? と安心したのも束の間、するすると滑るように動き回る向こうのリベロに追いつかれてしまう。
「さーちゃん、ナイス~」
「どもっす」
あの子を抜くのは大変そうだなあ、なんて他人事のように思いつつ、迎撃準備。相手は二枚攻撃。ライトブロッカーである私はマリチカ御大の一発に備え、ややそちらに寄る。しかし――、
「美波、私にちょうだいッ!」
「オーケー!」
気迫を鎧のように纏って切り込んできたミドルブロッカー――相原つばめさんによって、私の思惑は外される。慌てて速攻のブロックに跳ぶも、間に合わず。
どんっ!
とブロックの間を抜かれてしまう。
スコアは、8―7。逆転――やられちゃったねえ、と転がるボールを見送り、ちらりと相原さんのほうに目をやった。
天下のマリチカ御大に頼ることなく、自らの手で決めてきた。これが四強・音成女子を率いるキャプテンかあ……頭が下がるねえ。
どうしたもんかなあ、と周りに声を掛けつつ考えながら、レセプションに備える。サーブは、またしても私のところへ(あれ? もしかして狙われてる?)。今度はわりかしいいところに上がり、三枚攻撃のチャンス。そこから千里は、もう一度玲子へ。
「らああっ!」
がんっ!
と炸裂する強打。だが、
「ワンタッチ!」
「つーちゃん、ナイス~」
と、決まるには至らない。そうこうしているうちに、一撃決殺を謳う攻撃陣が迫ってくる。
「「ヅカミー(美波)、私に寄越せ(ちょうだい)!」」
エースとキャプテン、どちらも打つ気――いや、決める気満々である。となればやっぱりエース? と思いきや、トスは再び速攻に上がった。そんなのってないよ……!
「っしゃああ!」
「二度も……喰らうかっ!」
おおっ、杏子がやってくれた! かろうじて拾い上げたボールは、しかし、セッターのところではなく、ブロックに跳んだばかりの佐々木郁恵へ。
「ライト、お願いします!」
郁恵はスパイクが抜けた右方向――つまり身体を開いた私のほうへ二段トスの構え。おっとっと、ここで私か……どうしたもんかねえ、と相手方をちらり。
「準備はどうでー、ツヴァイ?」
「どこからでも来いよ!」
……まるで打ち抜ける気がしない――まあ、運次第ってことで。
「よっ!」
ぱあんっ!
と私は真正面に強打する。が、スパイクは相原さんに阻まれネットを越えない。このまま落ちちゃったらかなりまずいんだけど……と祈るような気持ちで背後へ視線を送る。すると、
「っ、上がった!」
うっし、ナイスフォロー! 信じてたよ、千里!
「――玲子、そっちいくからねえ!」
「おうっ! 持ってこい、明晞!」
千里のフォローしてくれたボールを、私はアンダーハンドで逆サイドへ繋ぐ。弾道はやや低め。玲子がぎりぎり踏み込めるタイミング。さぞ打ちにくかろうが、その分相原さんもレフトに回るのがぎりぎりになるはず――。
「決まっとけ……!」
「このっ――!」
ぱしんっ、
と、トスがネットの上に浮いたところを狙い澄まし、玲子はボールを相手コートのフロントゾーンへ叩き込む。これはさすがに読んでなければ拾えない。
「っしゃあ!」
「ナイスキー、玲子。助かったよ」
「そりゃこっちの台詞だ。サンキューな、明晞」
「いいえいいえ」
ぱちっ、と手を打ち合って、私はサービスゾーンへ向かう。これで私は後衛――すなわち、いちい君が前衛。
スコアは、8―8。
ローテが一周して、点差状況も振り出しに戻る……か。まあ、なかなかいい勝負をしていると言っていいだろう。
でも、いちい君はもちろん、玲子も千里も杏子も郁恵も、あと瑠璃(ちょおーい、静のほう向いてないでこっちの応援もしてねえ?)も、いい勝負で終わらせるつもりなんてこれっぽっちもない。
私だって――これでもキャプテンだからねえ――その気持ちにできるだけ応えたい。
さあて、どうしたもんか……。
受け取ったボールを、ぼむっ、と弾ませ、ふうっ、と軽く息をつく。
まあ、何がどうなるかは、その時が来てみないとわからないってことで――。
「なんとかなあれ……っと!」
ばしっ、とサーブを打ち込む。さっきのお返しとばかりに柴田さんを狙って。が、難なくAカットにされてしまう。
……うん、なんとかなるといいなあ。
『A-7』も更新されています。↓
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