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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第十章 AT和田総合体育館(II)
348/374

C-4(希和) 関わっちゃいけない系の人たち

 ブロック大会県予選、第二日目。

 Cコート、準々決勝、音成女子VS石館商業。

 Aコート側の本陣から離れた私たちCコート観戦組は、その試合をギャラリーの後ろから立ち見することになった。

 特に事前情報もなく、夕里ゆうりに誘われるまま軽い気持ちでやってきた私は、開幕から度肝を抜かれた。


 ぱあんっ!!


 どごんっ!!


 ……と、軽く二、三人はれそうなスパイクを打ち合う、両チームのエース。カメラを回しているとおるも真っ青になるほどの破壊力である。あっ、これ関わっちゃいけない系の人たちだ――と、私は瞬時にその二人の顔を記憶に刻んだ。大会ですれ違ったときとか、目を合わせないように気をつけないと……。

 生命の危機にばくばくと動悸がするのを鎮めつつ、私は気を引き締める。

 今日は大会二日目。この空間は八強以上の魑魅魍魎が跋扈する魔窟なのである。会場が私の家からは徒歩圏内で、しかも私服で来ているということもあって、どこか物見遊山な気持ちがあったけれど、偵察とはすなわち敵情視察……お遊び気分はよくないわよね。


「ねえねえ、みんな! ただ見てるのも退屈だから、ちょっと『県外の強豪が偵察に来た』ごっこしない?」

「すごくお遊び気分な人がいた!? というか由紀恵ゆきえさん、『県外の強豪が偵察に来た』ごっこってなんですか!」

「えっ? 定番のやつでしょ? ほら、夕里ちゃん、お手本を見せてやって!」

「いやいくら先輩の頼みとは言え――」

「あの蜂柄の1番……中学のブロック大会で見たことあるわ。確か鞠川まりかわ千嘉ちかさんゆーて、一人で荒稼ぎしとったで」

「ノリノリかよ! しかもめちゃくちゃサマになってるな!?」

「あの方が相当なアタッカーであることに疑いはありませんね。ちなみにさかえさん、他に見覚えのある方はいらっしゃいますか?」

「ひかりんも楽しそうね!?」

「深紫のほうのエースも知っとるで。二年前の県選抜に出とった」

「本当によくご存知! さすがです夕里さん!!」

「どや、透……ウチら城正じょうせい学院のエースから見て、あの二人は」

「なんか設定が増えたー!?」

「え、えと……お二人とも、すごく強いと思います……思いますですわ」

「突然のですわ口調!? あと透、恥ずかしいなら無理しなくていいからね!?」

「ハッ! 県下無敵のトオルさんにここまで言わせるとはなァ! はるばる見に来た甲斐があったってモンだぜェ!」

「ぶっこんできたな実花みか!? まさか一からキャラ作ってくるとは思ってなかったよ!!」

「あははっ! いいねいいね、みんなその調子だよー!」

「ちょいあなた言い出しっぺ! 責任持って収集つけてくださいね!?」

「すごいっ、希和きいなちゃん! さっきから一人でツッコんでる!」

「そうせざるを得ない状況にしたのは先輩ですけど!?」

「うんうん、しずかにもこれくらいの気概が欲しいものだよ」

「静さんの代わりに言っときますけど、確実に不要です!!」


 くっ、なんか無駄に疲れた……。志帆しほさんとは方向性ジャンルが違うけど、どうやらこの人(由紀恵さん)も私の天敵の一人のようだ。


「ふぅ……で、真面目な話、あのレフトエースどもは何者なの?」

「県内の三年生で最も強いレフトと、県内の二年生で最も強いレフトです。なので、実質的に県内のレフトの頂上決戦ということになります」

「想定以上にとんでもない試合ほうを選んでた!?」

「ちなみに、AコートはAコートで、県内最強の左と県内最高の左の対決になりますが」

「これだから大会二日目は……」


 私は身を隠すようにその場に屈み、手すりから顔だけを出して試合を眺める。


「ちなみに、あのエース以外にも危険人物――最強とか最高とか県選抜経験者とか――がいるなら、今のうちに教えてほしいんだけど」

「ひとまず、石館商業(深紫のほう)には、エースの藤本ふじもと先輩以外に県選抜経験者はいませんね」

「そうなの……良心的といえば、良心的なのかしら。個人的には、あのレフトとやり合うってだけで土下座不可避な感じだけど」

「あははは……」

「とーるうが白目剥いてる!? お気を確かに!!」

「それから、音成女子(蜂柄のほう)ですが、三年生に関して言えば、エースの鞠川マリチカ先輩と、その対角の柴田しばた先輩という方が、三年前の県選抜メンバーでしたね」

「あっ、やっぱりそうなんだ! というか、ひかりちゃん、三年生のことなのによく知ってるね。胡桃くるみみたいに調べたの?」

「いえ、たまたま見聞する機会があっただけです」

「ちなみに、ひかりん、二年生以下のこともわかる?」

「二年生以下の方々については、私よりも藤島ふじしまさんのほうが詳しいと思います」

「あっ、うん……えっと、まず、リベロの浦賀うらがさやかさんは、二年生で、七絵ななえさんたちと同期の県選抜メンバーだったよ」

「七絵さんの同期か……あれ? ってことは、二年前の県選抜ってリベロが二人いたの?」

「あっ、うん、よくわかったね――って、そっか。希和たちは聖レ(あやめさん)と試合したって言ってたもんね」

「そうそう。で、そのとき、七絵さんはセントレの変な人が県内最強のリベロって言ってたのよね。そうすると、あの浦賀さんって人は交替要員リザーブだったわけ?」

「あー……えっとね、あやめさんとさやかさんは、ちょっと特殊で……試合には半々で出てたから、二人とも正リベロなの」


 なにそれ気になる……けど、なんか深くツッコむのは地雷な気がするから、やめておきましょう。


「それから、アップゾーンにいる11番――音成で一番背の高い選手なんだけど、あの子は一年生のアン。私と同期の県選抜で、ミドルブロッカーだよ」

「なるほど……合わせて四人も県選抜がいるわけね。人数的にはセントレと同じか。さすが四強は層が厚いわね」

「ただ、希和、先に言うとくけど、ウチらが知らへん県選抜経験者の残り人数から考えて、法栄大立華ほうえいだいりっかとか柏木かしわぎ大附属とかは、たぶんレギュラー全員が県選抜とかそんなやで」

「いやー! 知りたくなかった! これだから強豪はずっこいのよ!!」

「まあ、言うて獨楢どくならなんか、部員の半分以上が県選抜やけどな」

「そういやそうだったわね!? チートよ、チート!!」

「伊達に四十年以上も県一位に君臨しとらんで」

「リアルにチートだった!!」


 そしてそんな獨楢から強引に引き戻されそうになった夕里こいつってどんだけ……。


「ちなみに、音成女子について一つ補足情報――城上女ひかりんたちはあっこと練習試合して勝ったんやて」

「ええっ!? 嘘でしょ!?」

「まあ、この話は合宿のときに一通りしとるから以下略で」

「私知らないけど!? いつの間にそんな話してたの!?」


 なんて騒いでいるうちに、試合は3―3まで進行していた。

 両エースは最初の一発を打ったきりで、互いに牽制し合っているうちに第一ラウンドは終わったようだった。

 そうして音成女子(蜂柄のほう)のエースに続き、石館商業(深紫のほう)のエースも後衛バックへと下がる。


「あっ……いちいさんのサーブ……」

「藤島さん、なぜ壁際まで後退するですか。カメラ係なのですから、撮影はなるべく前でお願いします」

「ううっ、だって恐いんだもん……」

「と怯えながらひかりんの背中にぴったりくっつく。心得ているね、とーるう!」

「ち、ちがっ! そういうんじゃないからっ!」

「ほんで、希和もウチの後ろに隠れてなんやねん」

「いや……だってあの構え、どう見てもジャンプサーブでしょ? 私の本能が逃げろと叫ぶのよ……」


 ジャンプサーブなんてのは、打てるってだけで相当な脅威だ。入部試験では三坂総合の在原ありわらさんに度肝を抜かれ、獨楢遠征ではセントレの金髪ミドルブロッカーにぼこぼこにやられた。警戒す(ビビ)るなというほうが無理だ。


 しん――、


 不穏な静寂の中、姓は藤本、名はいちいさん、というらしい二年最強のレフトが助走に入り、直後、




 ――ぱあんッ!!




「「ひいいっ!?」」


 強烈な打音に、私と透の悲鳴が重なった。

『A-4』も更新されています。↓

https://book1.adouzi.eu.org/n5390ct/328/

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