C-1(ひかり) Cコート
ブロック大会県予選、第二日目。
偵察にやってきた私たち城上女子バレーボール部は、混雑する体育館で偶然にも明正学園のメンバーに再会し、そのまま相席することになったのでした。
「えっと……今から試合をするのは――」
コートで始まった公式ウォームアップを受けて、顧問の山野辺樒先生がそう呟くと、立沢胡桃先輩が合宿でも使ったビデオカメラを弄りながら答えます。そこで紹介された高校は、奇しくも私たちに縁のあるところばかりでした。
Aコート、法栄大立華(第一シード)VS南五和(中央地区一位)。
Cコート、音成女子(第二シード)VS石館商業(北地区一位)。
さらに立沢先輩は、もう一台のカメラを取り出して、先生ではなく私たちのほうに問いかけます。
「誰か、Cコートを見に行く人はいる? よければ、これで撮影してきてほしいんだけれど」
「そういうことでしたら、私が」
諸々の事情から、私はすかさず名乗りを上げました。と、何を思ったか宇奈月実花さんがしゃしゃり出てきて、
「でもさ、ひかりんがカメラ係だと、他の観客に紛れちゃうんじゃない?」
などと背後から私にしなだれかかりつつ、余計なことを言います。確かに、と渡そうとしたカメラを引っ込める立沢先輩。助け船を出してくれたのは、藤島透さんでした。
「あっ、それなら私がやります! 私なら周りに埋もれませんし!」
「ありがとう。じゃあ、カメラ係は透にお願いしようかな」
「おおっ、良かったね、とーるう!」
「うんっ!」
そういうわけだから、私も一緒に行くね――と、とても嬉しそうな顔でこちらを見る藤島さん。よほどカメラ係がやりたかったと見えます。
「ほな、ウチもひかりんたちに付いてくわ。ほんで良ければもう一人くらい――希和、キミもどや?」
「そうね……どっちも気になるけど。城上女子は北地区なのよね。その一位が見てみたいかも」
「うっし、ゲットやで!」
かくして、明正学園から栄夕里さんと瀬戸希和さんが仲間に加わります。さらに、
「あっ、私もそっちについてくねー」
ひらひらと手を挙げたのは、油町由紀恵先輩。へえ、と市川静先輩が意外そうな目を向けます。
「柳さんの応援?」
「うん。あとほら、音成女子ってとこ、前に静が強いって言ってたでしょ?」
「ああ、そんなこともあったっけ。でも、大丈夫? 私はこっちに残るけど……」
ちらちらと気遣わしげに私たちを見る市川先輩。しかし、その心配そうな表情は、とある人物を見て和らぎました。
「瀬戸さん……由紀恵をよろしくお願いします」
「なんか深々と頭を下げられた!?」
「不束者ですが! お世話になります、希和ちゃんっ!」
「ちょ由紀恵さんなぜ抱きつおぶ……っ!?」
「どこ行っても苦労人やなー、キミ」
お目付け役も無事に決まり、油町先輩も一行に追加。他にCコートに行く人はいないようなので、荷物を預けていざ出立です。
「ところで、宇奈月さん」
「なにかな?」
「重いのでそろそろ背後霊ごっこはやめていただけませんか?」
「おっと、こいつは失礼!」
「では、皆さん、行きましょう」
「「はーい!」」
「? なにゆえあなたまで付いてくるのですか、宇奈月さん?」
「あれ!? 流れ的に私も一緒に行く感じだったよね!?」
「はぁ、そうでしたか……」
「露骨に嫌な顔しないで! わりと傷つくよ!?」
そんなこんなで、私たち六人はCコートへ向かったのでした。
『A-1』も更新されています。↓
https://book1.adouzi.eu.org/n5390ct/325/




