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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第十章 AT和田総合体育館(II)
336/374

A-12(珠衣) 二点目

「……まだまだ、これくらいで収めてたまるかっての……っ!」


 珠衣ミィはネットの前に立ち、相手の動きをチェックしながら頭をフル回転させる。

 ひとまず、この手で1点を取ることができた。

 珠衣ミィたちに足りないものがなんなのか――その答えが、はっきりと出たわけではない。

 けれど、超シンプルに考えるなら、それは『得点』だろう。

 それもただの得点じゃない、連続得点。

 法栄大立華の盤石を揺るがしてやる。

 そのためには、とにかく状況をよく見て、最良の手段を選び取っていかないとね……!


「行くぞ……っ!」


 気合満点でサービスゾーンに立つのは、引き続き、しずく珠衣ミィのプレーに刺激されたのか、あるいは純への対抗心か、ばしんっ、と力強くボールを打ち出す。が、その行き先で待ち受けていたのは、不運にもあのリベロ。身体全体を使って球威をしっかり殺し、柔らかなカットを返す。


 ひゅーう、ぴったんこ……っ! まあ、こればっかりは仕方ないと割り切って――どうにかネット際で食い止める!


 ブロックの構えを取りながら、素早く目を動かす珠衣ミィ


 さて、どっちを使ってくる……? センターの豊見とみさんか、レフトの一凪ひとなか――。


 と、珠衣ミィの視線が、レフトに回る一凪に向いた、その刹那。

 仕掛けてきたのは、百戦錬磨のセッター、宮野みやの叶実かなみさん。『そう』と気取らせないいつも通りのセットアップモーションから、ぱしっ、と左手で鮮やかなツーアタックを放った。


 うっげー!? このタイミングでツーとか――!!


 珠衣ミィは咄嗟にジャンプして片手を伸ばす。が、あとちょっとのところでボールに触ることができない。軽く払うようにプッシュされたボールは、レシーバーのいないフロントゾーンへ落ちていく――、


「まだっ……!」


 絞り出すような声とともに、珠衣ミィの死角から人影が飛び出した。何を隠そう、我らが親愛なるセッター・月美るみさんである。月美さんは普段はあまりしないフライングレシーブでボールに喰らいつき、ぼふっ、とコートに身体を打ちつけながらも懸命に手を伸ばして、すんでのところでボールを救ってみせた。


「あ、と――は、よろしく…………げふっ」

「うああああ月美さああああーん!!」

「月美ちゃんナイスカットぉー!!」

「マジでよくやった! あとはあたしに任せとけ!! お前の屍を踏んでいくぜッ!!」

「いや、踏まないで。越えて」


 そうこうしているうちに、可那かなさんが落下点へとカバーに入る。コートに横たわる月美さんの身体をひょいっと跨ぎ、アンダーハンドで二段トスの構え。レフトでは小夜子さんが開いて待っている。するすると下りてくるボール。と、可那さんはそのボールを見たまま、叫んだ。


「行けんのかッ!?」


 その問いに、ちょうどアタックラインまで下がりきった珠衣ミィは、前傾姿勢で頷く。


「もちろんでっす!!」


 上等だっ、と可那さんは微笑み、二段トスを真上に――センターに上げた。


「ぶっちかませえええ、珠衣ミィいいい――!!」

「うおおおおおし飛んでっけえええええー!!」




 ――ばしんっ!




 手首の力を最大限に使い、珠衣ミィはなるべく高い打点からスパイクを放つ。ボールは狙い通りにブロッカーの指先を掠め、勢いそのままにエンドラインの向こう側まで吹き飛んだ。


「――……っと、これで、二点目ですね……!」


 言いながら、着地時に屈めた上体を起こす。豊見さんは何を考えてるのかわからない顔で、宮野さんは困ったような微笑を浮かべて、珠衣ミィを見ている。そして、悔しそうに眉をひそめるレフトの一凪が、静かに口を開いた。


「……この借りは高くつくぞ、珠衣ミィ

「なんの、踏み倒してやるまでっ!」


 一瞬の睨み合い。一凪はアンダーリムの洒落た眼鏡に触れ、ふいっ、と踵を返す。珠衣ミィも二つ結びにした髪を両手でばさりと払い、味方のほうへと振り返った。


 スコアは、9―9。

 二連続ブレイクで、同点。


 けれど、足りない。これではまだ全然足りないのだ。

 第一セットでは一度もできなかった三連続ブレイク、そして逆転まで、最低でもあと1点はもぎ取る……っ!


 ふぅーっ、と珠衣ミィは長く息を吐き、ぎらりと相手コートを見据えた。

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