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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第十章 AT和田総合体育館(II)
331/374

A-7(可那) 勝負所

 ラリーとラリーのちょっとした切れ間。

 あたしは呼吸を整えながら、相手コートのサービスゾーンを睨みつけていた。


 ここであの天久保サウスポーのサーブ、か……。


 Aコート、準々決勝――法栄大立華VS南五和。

 南五和あたしたちは、序盤から悪くない形で自分たちのプレーができていた。最初こそ月美や信乃あたりは緊張していたが、その影響もほとんど無かったようなものだ。

 それでも、現在のスコアは7―5。2点のビハインド。それだけ南五和こっち法栄大立華あっちの攻撃を受けきれていない、ということだ。

 まだ中盤前とはいえ、あたしら的にこれ以上離されるのはかなりまずい。

 だが、それは向こうにしてみりゃ、ここらで決めちまうか、ってなるわけで。

 しかも厄介なことに、法栄大立華で最もそういうことをしてきそうな選手プレイヤーが、今まさにサービスゾーンに立っている。

 あたしはレセプションの位置につくと、肺いっぱいに空気を吸い込んで、声を張り上げた。


「わかってんな、お前らああ!! このサーブは凌ぐぞ!!」

「「はいっ!!」」


 こちらのコートの緊張が、一気に高まる。一方、サーバーの天久保あまくぼは、笛が鳴ってからもたっぷり時間を使ってリズムを整えていた。

 やがて、高々とトスアップ、そのまま助走に入る。

 サウスポーのジャンプサーブ――! 初体験ってわけじゃねえけど、まあアレとコレは別物か――って、ごちゃごちゃ考えてる場合じゃねえ! どっからでも来やがれ!!




 ――ぱあんっ!!




 と強烈な打音が響く。そして、その打音に違わぬ高速サーブが、うなりを上げてこちらに迫ってきた。


信乃ののッ!! 正面だ、真上に上げろ!!」

「はっ、い――!?」


 信乃がレシーブの構えを取った、その瞬間だった。打球が鋭く外側へ切れる。信乃はその変化に反応したが、対応が間に合わない。ボールは信乃のアンダーハンドの縁を掠め、勢いそのままにコート後方へと飛んでいった。


「「っ……!?」」


 サービスエース――恐れていた事態に、何人かのメンバーが声を詰まらせる。そこへ、


「へっへーん! どんなもんだっ!」


 と、天久保のやたら明るい声が追い打ちのように響いた。が、そのとことん無邪気な口調のせいか、あたしは(自分でも意外なことに)不思議と苛立ちを感じなかった。むしろサービスエースを取られたことをすんなり受け入れ、冷静に周りを見ることができた。


「今のは仕方ねえ! 全員、頭を次に切り替えろ!」

「「はっ、はい!」」

「それと、信乃ッ!」

可那かなさん……! す、すみませんっ、私――」

「おう、やられちまったな! で、次また来たらどうする?」

「っ……えっ、えっと――」

「そのでっけえ身体の全部使って受け止めろ! ちょっとでも上がりゃあカバーしてやる!」

「は――はいっ!!」


 その意気だ、とあたしは信乃の背中を軽く叩き、キャプテンの小夜子に目配せする。小夜子はぱちんと手を叩いて、周りのメンバーに明るく声を掛けた。


「ここ一本、大事にしていこうね!」

「「おおおおっ!!」」


 小夜子の柔らかい笑顔のおかげで、ぐらつきかけた雰囲気がどうにか立て直る。スコアは8―5。次で取り返すことができれば、まだ望みは繋がるはずだ。


 ……だが、もちろんこれくらいで済ますタマじゃねえよな、県内最強の左……。


 あたしは膝に手を置いて、上目にネットの向こうを睨みつける。サービスゾーンの天久保は、大きな瞳を屈託なく輝かせつつ、また一方では、口元を不敵に微笑ませていた。

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