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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第十章 AT和田総合体育館(II)
329/374

A-5(はる) 真芯を捉えた快音

 珠衣ミィミィのおかげで、県第一代表と肩を並べた南五和(私たち)

 これはイケるのでは!? と思ったのも束の間、厳しい現実がはるに襲いかかる。


「うりゃあ!」

「っと――!」


 ばしんっ!


 と真芯を捉えた快音が耳を打つ。法栄大立華ほうえいだいりっかのキャプテン先輩が放ったレフト平行。かなり気合を入れてブロックに跳んだのに、掠りもせずに決められてしまった。


 スコア、2―1。


 さらに、次のラリー。こちらのレセプションから、「っらあああ!」と可那かな先輩がびたっとナイスカットを上げ、その勢いのままはるに速攻が回ってくる。


 今度こそイケるでしょ!!


 とボールを思いっきり強打した、次の瞬間――、


「とーうっ!!」

「ぷぎゃっ!?」


 びたん――!


 と、わりと完璧にシャット喰らった。

 ちょっ、現実が厳し過ぎるんだけど……!?


「わっはっは! どんなもんだー!」


 そう言って喜びを露にしたのは、開幕珠衣(ミィミィ)とやり合っていた二年生ミドルブロッカー。

 ぱっかりと大口を開け、能天気そうに笑うそいつを、はるは『見上げる』。

 ジャスト180センチ――法栄大立華の最長身選手タワープレイヤー。そして珠衣ミィミィ曰く、県内の二年生に二人しかいない、(175センチ)よりも高いミドルブロッカーの一人。

 その名も――、


「やってくれたな、新垣あらがきあいっ!」

「はいそこ! だから私は新垣にいがきめぐみだって!!」

「えっ……? だって試合前に珠衣ミィミィが――」

「ちょっと珠衣ミィちゃーん!? さては本気で間違ってたなー!?」


 というのは閑話休題さておき――本気でどうしてくれよう、この四つ団子頭。

 はるにとって最大の武器は、175センチの身長だ。でも、はるより高いこいつにその武器は通じない。しかも、こいつは珠衣ミィミィと同じ県選抜経験者でもある。

 身長だけではなく、経験や技術においても、はるを上回るミドルブロッカー。


 はっきり言って…………やばいっ!


「――でも、だからどうした……ってね!」


 すーうっ、と大きく吸い込んだ息を、ふーうっ、とゆっくり吐き出す。

 相手が強いのはやる前からわかっていたこと。その上で、今の自分にどれだけのことができるのか――ぶつかってみるしかない。

 はるは気持ちを切り替え、ネット際で相手のサーブを待つ。セッター先輩の打ったボールは、再び可那かな先輩の守備範囲に。


「っしゃああぁー、上がんぞ!! 今度こそ決めてやれ、はる!!」

「うおおおお行くぞおおおお四つ団子ッ!!」

「うおおおお来おおおおおい二つ団子ッ!!」

「えっと……なんかごめん」


 ひゅ、と風切り音がした。直後、ボールが相手コートを跳ねる。月美先輩の十八番――ツーアタックが決まったのだ。スコアは、3―2。


「よしっ、ナイスデコイだ、はる!! 次も頼むぞ!」

「ええっ!? はる、次も囮ですか!?」

「バカ! 今のは『そう思わせといてお前』の前フリだよ!」

「可那先輩が策士だ!?」

「まっ、これも『と見せかけてやっぱ囮』の前フリだがな!」

「うわわわっ!? はる、頭が混乱してきました!」

「むむむっ……なんかこっちまで混乱してきた!? つまり私はどうすれば――」

「ちなみにめぐみ、もう一度同じこと(勝手に逢坂さんの)をしたら(マークを外したら)観鈴(みり)と交替よ」

叶実かなみ先輩!? 目が恐いんですけど!?」


 などと騒がしいネット際(フロント)へ、ローテが回り、いよいよ我らが県内最高の左(スーパーエース)――信乃ノンノンが参戦する。

 サーブは、月美先輩。たっぷり時間を使って打ち込んだボールは、FRフロントライトを守るキャプテン先輩へ。キャプテン先輩はそれをしっかりとAカットに仕上げ、トスを呼ぶ。セッター先輩は、果たして、キャプテン先輩(ライト)を選んだ。

 立ちはだかるは――信乃ノンノンはる・小夜子先輩の三枚ブロック!


「はっ!」「ぬりゃ!」「えいっ!」「むっ……!」


 四者四様の気迫をぶつけ合う、空中戦。制したのははるたちだった。力づくで打ち込まれたクロスへのスパイクを、信乃ノンノン六割・(はる)四割くらいの貢献度で跳ね返すことに成功する。


「よっし! やったねっ、信乃ノンノン!」

「うんっ……! ありがと、はるちゃん!」


 そう言う信乃ノンノンは、一点取った! という喜びの笑みではなく、一点取れた! という安堵の笑みを浮かべていた。その気持ちははるもよくわかる。というかはるも内心はほっとした感のほうが大きかった。そのことは、手を合わせた瞬間に信乃ノンノンに伝わったらしく、ちょっと驚いた目をされた。そしてはるたちは二人して苦笑し合う。まっ、こうしてお互い少しずつ緊張を取り除いていこうかね、みたいな感じに。


 と、そこへ、


「やっるじゃねえか、お前らっ!!」


 べしんっ!


 と背中に軽快な衝撃。振り返れば、視界いっぱいに弾ける笑顔の可那先輩(カナリアイエロー)


「その調子で暴れまくれ!!」


 ひゅっ、ひゅっ、とキレのあるワンツーパンチを空中に放ち、可那先輩は後衛バックへ戻っていく。はる信乃ノンノンは思わず苦笑し合った。緊張、どこかへ吹っ飛んじゃったね、なんて感じに。


 そして続くラリー。月美先輩が二本目のサーブを放つ。しかし、ボールは向こうの紅色のリベロの守備範囲に飛んでいき、文句のつけようのないAカットにされてしまう。なんのこれしきブロックで喰らいつくまでよっ! と意気込むも――、


「やっほい!!」


 ずばんっ――!!


 と、こちらもいよいよ本格参戦してきた県内最強の左(スーパーエース)――天久保あまくぼじゅんが、その存在感を見せつける。信乃ノンノンはるの二枚ブロックを、いとも容易く抜いてきたのだ。

 けれど、もちろん……南五和こっちだって黙ってない。


「やられたらやり返せよ、信乃っ!!」

「はいっ!!」


 サーブ権が入れ替わる。後衛バックに下がったキャプテン先輩は、中央付近の空きスペースを狙ってきた。それを可那先輩が拾い上げ、月美先輩からFLフロントレフト信乃ノンノンへ。力強く振り上げられた左腕が、相手の二枚ブロックを押し破る。


「うわわっ――!? やったなー、生天目なばため!!」

「あはっ! そうこなくっちゃね、信乃ノノリン!!」

「ま、まだまだ……! こんなものじゃないですからっ!!」


 新垣愛(180センチ)天久保純(177センチ)、そして生天目信乃(183センチ)――平均身長180センチの三人が火花を散らす、県内最高峰の空中戦。

 その最初の一回を制した信乃ノンノンは、いつにもまして大きく見えた。


「……はるも負けてられないね……っ!」


 そう、はるはこっそりと呟く。そして、たぶんまったく同じことを考えているであろう赤井雫ズクズクが、ぐるぐると肩を回しながら前衛フロントに上がってくる。


 スコア、4―4の同点。


 ネット際の攻防は、まだまだ激しさを増していきそうだった。

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