201(ひかり) 部屋にいくつかあるバレーボール
「そうですか……ええ。ええ。お疲れ様です。今日はゆっくり休んでくださいね。では」
通話を切り、画面を見ると、相手の名前が表示されています。半井吹子さん――玉緒第二高校に進学した、中学時代の同級生です。今日は県大会の第一日目で、半井さんの所属する玉緒第二バレーボール部は二回戦敗退、ベスト16という結果に終わりました。
それでも、電話の声がどこか晴々としていたのは、試合に出場したメンバーが、全力を出し切ったと、観客席で見ていてもわかったからなのでしょう。
此度の県大会の組み合わせを知ったとき、私は思わずにはいられませんでした。
もしも、城上女子ではなく、玉緒第二に進学していたら、と。
考えるたび頭に浮かんでくるのは、半井さんとともに先輩たちを応援している、自分の姿。
その想像を追い払うように、私は首を振ります。
観客席から見ているだけでは、意味がない――。
ぴこんっ、と携帯がメッセージの着信を知らせました。差出人は、立沢先輩。明日の県大会偵察についての連絡です。承知しました、ありがとうございます、と返信。
すると、ぴこんっ、とまた別のメッセージが送られてきました。差出人は、宇奈月実花さん。部内ではなく、私個人に宛てたものです。
『いよいよ明日だねっ! お姉さんのこと、緊張してる?』
私は少し考えてから、返信します。
『緊張してます。が、大丈夫です。ありがとうございます』
ちょっと素っ気ないかな、と思いつつ反応を待っていると、Vサインと笑顔のイラストが返ってきました。思わず力が抜けて、笑ってしまいそうになります。
「ふう……」
ぼふっ、とベッドにうつ伏せに倒れます。それから寝返りを打って、枕元にあるバレーボールに手を伸ばし、表面の、経年劣化でざらついた感触を確かめます。
小学生用の軽量4号球。私の部屋にいくつかあるバレーボールの中でも最古参。小学二年生になって、姉の後を追ってクラブに入った時に、シューズとともに買ってもらったボール。
あれから、八年。
これが恐らく、最後で、最大の、チャンス。
明日は、言わばそのための、下準備。
緊張はしますが、無駄にするわけにはいきません。
「……お姉ちゃん……」
直に会うのは、半年ぶり。
瞬間、私は、がばっと飛び起きました。
ああ、なんということでしょう……! 私としたことが、非常に重要なことを失念していました!
「気づいてよかったです! そうでした――制服ッ!」
急ぎアイロンをかけねば、です!
ご覧いただきありがとうございます。
第九章はこれにておしまいとなります。
次章では県大会二日目の模様をお送りする予定です。
また日が空いてしまうと思いますので、のんびりとお待ちください。
では、いつも応援ありがとうございます。
またいずれ(目標は年内くらい……!)お会いしましょう。
今後ともよろしくお願いいたします。
この度はお立ち寄りいただきありがとうございました。




