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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第九章 AT和田総合体育館(I)
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191(美禰子) 盟友

 残念ながら一回戦で敗れてしまった古手川第二わたしたち。試合後のミーティングを終えると、あとは長い自由時間。わたしは身体を休めたり昼食を摂ったりしながら、A~Cコートで行われる試合を観戦し、やがて第五試合が始まろうというくらいで、自動販売機のアイスを買おうと、幼馴染みの仲嵩よなか(ナカ)ちゃんと観客席ギャラリーを立ちました。


 そしてランニングコースにもなっている回廊に上がってみると、あらびっくり。


「あ」「オッ」「ひ……」「お?」「あ!」「むっ」「わっ」


 ばったり、という副詞がぴったりの、意図せぬ顔合わせ。


「これはこれは、偶然ね。皆さんは、これから二回戦?」


 わたしはAコートのほうからやってきた三人と、Cコートのほうからやってきた二人に尋ねます。「そっ。次の次ね」と軽い調子で応えてくれたのは、Aコートからやってきた花文かふみ蒼子そうこさん。「ちょっと、あんた!」とナカちゃんは睨むように目を細め、蒼子さんに人差し指の先を向けます。


「頼むから簡単にやられたりしないでよね、花文かふみ


「さあ、どうかな。なんといっても逢坂おうさかさんが相手だし」


「知ってるし! だからぶっ潰せって言ってんのよ!」


 噛みつくように言い立てるナカちゃん。蒼子そうこさんは苦笑しつつ、後ろの子に振り返ります。


「〝番犬(Fancy Fang)〟はああ言ってるけれど、意気込みの程はどうなの?」


「燃えまくりっすヨ」


 花文さんにそう問われ、余裕たっぷりに笑ってみせたのは、一年生のかなどめうるうさんです。


「未来の『県内最強の司令塔セッター』であるワタシとしちゃ、今から『屈指』くらいの箔はつけときたいっすからネ」


「おい貴様! 口の聞き方に気をつけろ、一年風情がっ! ネコちゃんの御世が続く限り、貴様が『屈指』など十年早いわ!」


「まあまあ、ナカちゃん。かなどめさんは蒼子さんがあとを任せるだけの一年生なのだから、頼もしいのはいいことよ」


「いや、ここは仲嵩なかたけさんの言う通りかな。この子ってば口程くちほどに強いもんだから天狗になりがちで。ここらでボッキリ鼻もげるくらいがちょうどいいのよ」


「チョ、ひどくねっすか、蒼子アオさん? つーか鼻もげなら先日経験済みっすし」


 冗談めかしてそう言って、どうしてかわたしに鋭い視線を向けてくる京さん。ひとまず微笑みを返してみると、京さんは苦笑気味に首を振りました。ナカちゃんは「小癪な」と鼻を鳴らし、次いでCコートのほうからやってきた二人に話を振りました。


「で、そっちはどうなのよ? 二日目(ベスト8)には残れそうなの――〝破天荒妖精(トロル&ピクシー)〟」


「はっ! 誰にモノ言ってんだよ、仲嵩なかたけ!」


 鼻息を荒げ、傲然と胸を張ってそう応えたのは、玉原たんばら睦美むつみさん。相変わらずすごい迫力です。


「そっちは確か石館いしだて商業――藤本ふじもといちいが相手だっけ。本当に大丈夫なの? あの子はマジモノよ」


天久保あまくぼ級の怪物バケモノってんだろ? んなこたおれも知ってらあ。が、別にあいつ(エース)を止められなきゃ負けるってわけでもねえ。なあ?」


 睦美むつみさんはぎらりと歯を剥き、かなどめさんの後ろに佇む新堂しんどうともりさんを睨みつけました。新堂さんは怪獣みたいな睦美さんの威圧感に身を縮こませ、「ひっ……」とかなどめさんの影に隠れてしまいます。


「ンモー、勘弁っすヨ、玉原バラさん。こいつってば砂粒並みに気が小さいんすから」


「嘘こけ」


 がはは、と睦美さんは豪快に笑って、「まあ、とにかくだ」と腰に手を当てました。


「藤本にいくら取られようと、同じかそれ以上におれが取っから、そこは大して問題じゃねえんだよ」


「つまり、勝敗を左右するのは、攻撃面(エースの力)以外のところだと?」


「そういうこったな」


「攻撃ではないのなら、守備かしら。でも、それにしたって石館商業のリベロは〝天頂ジーニス〟の係累だったはずよ。付け入る隙なんてなさそうだけれど……」


 蒼子さんの視線が睦美さんの隣へ移ります。そこにいたは、両手を腰に当てて仁王立ちする、司馬しば口笛ひゆるさん。


「簡単なこと! 隙が無いなら作ればいいのさ!」


「言うと思ったわ」


 可笑しそうに肩を揺らす蒼子さん。口笛ひゆるさんは、えへん、と鼻を鳴らし、可愛らしく胸を張ります。睦美さんと口笛さんは、やる仕草はそっくりですが、印象はほとんど正反対なのです。


「ま、やり方はどうあれ、とにかく負けないでよね!」(ナカちゃん)


「もちろん、やることはやるわ」(蒼子さん)


「はっ(ふんっ)、任せとけ(きな)!」(睦美さん&口笛さん)


かなどめさんと新堂さんも、応援してるわね」(わたし)


「フウ、これプレッシャーヤバイっすネ」(京さん)


「おい、一年! 女神様の応援だぞ! 下手な試合しやがったら許さんからな!」(ナカちゃん)


「ひゃ……ひゃぃ……」(新堂さん)


 そうして、ランニング中だった三人と二人は、再びそれぞれの方向に走り出しました。わたしは、まだ試合のある彼女たちの後ろ姿を、羨望をもって見つめます。


 Aコートで南五和みなみいつわとの二回戦に臨むのは、南地区三位・津久和つくわ第一だいいち


 キャプテンにして元セッター、今はレフトウイングスパイカーを務める三年生、〝令色の(Cyanides)血文(Agent)〟――花文かふみ蒼子そうこさん。


 花文さんに代わって春からセッターを務めるのは、昨年度県選抜経験を持つ一年生セッター、〝融通(Gate)無礙(Leaper)〟――かなどめうるうさん。


 同じく昨年度県選抜経験を持つ一年生で、京さんのよき相棒である左の大砲(スーパーエース)、〝光芒(Flash)一閃(Back)〟――新堂しんどうともりさん。


 Cコートで石館商業との二回戦に臨むのは、南地区二位・大洋大(たいようだい)筑紫つくし


 県内最重の右、なんて肩書きが畏怖をもって囁かれる三年生、170センチ74キロ、〝破壊(Destroyer)(Troll)〟――玉原たんばら睦美むつみさん。


 県内最小のリベロ、なんて肩書きが親愛をもって囁かれる三年生、134センチ30キロ、〝座敷(Pickpocket)荒し(Pixie)〟――司馬しば口笛ひゆるさん。


 小学生の頃から地区大会のたびに覇を競ってきた好敵ライバルも、県大会になれば心強い盟友アライズというわけです。


「「……頑張って」」


 意図せず呟きが重なって、わたしとナカちゃんは、ふっと顔を見合わせて笑いました。

登場人物の平均身長:164.3cm

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