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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第八章(城上女子) VS明正学園高校
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153(夕里) 本業

 もおーえらい盛り上がっとって楽しそうやんか、172センチトリオ! ウチも混ぜて!


七絵ななえさん、次はライトにもらってもいいですか?」


「んー、状況次第かな」


「ですよねー」


 明正めいじょう学園の誇るダブルエースが前衛フロントに揃っとる今、(181センチ)のおるライト側から攻める必然性がないからな。


 ――――――――

 夕里

 七絵

  凛々花  颯


  志帆   希和

 ――――――――


 向こうの前衛フロントとおる梨衣菜りいなしずかさん。サーバーは音々(ねおん)。ウチは今か今かとフローターを構える音々がボールを打ち出すのを待つ。ローテーションの制約ルールでレフト側(凛々花より左側)におるけど、ここでのウチのプレイヤーポジションはライト。サーブが放たれた瞬間に、ダッシュで反対側へ移動せなあかんのや。


「行きますっ!」


 ばしっ、と丁寧なフローターが放たれる。ヨーイドンで同時に動き出すウチと七絵さん。ウチはライトへ、七絵さんはセッターの定位置へ。その間に、サーブはBR(バックライト)希和きいなのところへ。


 ぼふっ。


「うげっ」


 カエルが潰れたようなうめき声。見ると、希和の体勢とカットが大きく乱れていた。本人は尻餅をつき、ボールはフロントゾーンにも届いていない。『無難』を信条モットーとする希和らしからぬ大崩れだ。


「「どうしたのよ(んだ)希和ぁー!?」」


「ご、ごめっ、ちょっとプレッシャーに耐え切れず……」


「「なに(なんだ)それ!?」」


 泣き言を言う希和に、悲鳴を上げるダブルエース。隣で志帆しほさんが苦笑した。


「実戦では初めてのローテだからね。不測の事態くらい起こるさ」


 言いながら、フォローに入る志帆さん。ボールは志帆さんのほぼ真上に浮いている。片手を上げて二段トスの構え。身体の正面は――ウチ(ライト)に向いている。


 よし来たっ! とライトの定位置まで辿り着いたところで、思わず笑みが零れる。まあ、初の四人レシーブ体制で、しかも前衛二人ダブルエースは打つ気満々、後衛バックの相方がド安定の志帆さんと来れば、さぞかし『ミスできない』プレッシャーは大きかったやろ。せやけど、おかげで『状況』は整った。


「志帆さんっ!」


 ウチはガソリンスタンドの店員さんがバックオーライする感じで、左手を下から上に大きく回す。志帆さんは意図を理解したのか、目を細め、そして、


 とーん、


 とオーバーハンドで山なりの二段トスをくれた。しかも言外の注文通りに『やや長め』。さすが、と心の中で志帆さんを拝み、ウチはコート外から鋭角にネットへ切り込む。


 後方から飛んでくる二段トスを強打する場合、普通、大きく開いてクロスに打つ。VS(セント)レ一軍では凛々花がそれで奥沢おくざわさんに捕まった。


 ほなストレートに打てばええやん、と思うけど、実際それは難しい。そこで、ちょっと小細工を弄する。


 1、トスを長め(サイド寄り・アンテナの近く)にもらう。


 2、助走は普通にクロスへ強打する感じで、ネットに対して鋭角に踏み込み、ブロッカーをセンター寄りに誘導する。


 3、思いっきりジャンプし、空中で、ボールが本来の打点より少しだけ外側に流れるのを待つ(このためにトスは『長め』である必要がある)。


 4、ボールを叩くのではなく、勢いそのままに進行方向だけを変える感じで、横っ腹を相手コート側にプッシュしてやる。


 5、するとあら不思議。


 ぼむっ、


「わっ!?」「わわぁ!」


 と、ボールはセンター寄りに跳んだレフトブロッカーの透の左脇をすり抜け、BL(バックレフト)に構える万智まちさんの前にすとんと落ちるっちゅー寸法や。


「ほんと詐欺みたいなヤツねあんた……」


 ブロックフォローに入っていた希和が呆れたように片眉を上げ、それからほっと息を吐いた。


「でも、おかげで助かったわ」


「これくらいならお安い御用や。なんせこちとらライトアタッカーは本業やからな!」


「……そういや、あんた、あの森脇もりわき世奈せなの対角だったんだもんね」


 そゆこと、とウチは親指を立てる。ウチはセッターにしてアタッカー。それもただのアタッカーやない。これは自慢やけど、あの世奈の――あきらから一目置かれて村木むらき先生も惚れ込む〝蒼白(Spiky)真珠(Spica)〟の――対角に置かれてぎりぎり釣り合う程度には『打てる』アタッカーやったんや。


「まあ、とにかくサンキュね。あんたのおかげで魔女裁判は免れそうよ」


「いや、それはどうやろか……」


 ウチは志帆さんを見る。希和もそちらを見る。そこには――たぶんずっとこっちを見ていたんやろう――ばっちり微笑を決めて人差し指を口元に当てる志帆さんがいた。恐らくやけど、志帆さんの中で縫乃ぬいのポイント的なものが一つ溜まった、という意味やろう。


「……慈悲とかないのかしら、あの人……」


 希和……キミはまだ志帆さんにそんなもんを期待しとったんやな……。


「いや! でもほら、挽回するチャンスはまだまだあるで! なっ!」


 とウチはスコアボードに目を向けさせる。1―3。序盤も序盤や。


 こちらのローテが回る。はやてが下がり、七絵さんが前衛フロントへ。


 ―――――――――

 七絵 夕里 凛々花

 志帆 希和  颯(サーブ)


 アタッカーが二人になって攻撃力は下がったものの、やっぱり七絵さんが前衛フロントにおる安心感は別格や。特に今は相手のエースがエースやから、なおさら。


 いや……でも、どうやろな。実際のところ、単純なガチンコ勝負やと、どっちも負けとるとこが想像できひん……。


 恐らく県内に片手で数えるほどしかいないであろう超弩級(オーバー180センチ)――〝黒い鉄鎚(一年エース)〟VS〝偉大なる七(エース殺し)〟。


 蓋を開けて見るまではわからへん……か。

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