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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第八章(城上女子) VS明正学園高校
274/374

151(希和) ダブルエース

 城上しろのぼり女子VS明正(めいじょう)学園。


 スコア、0―1。


 決めた本人が驚くほどあっさり先取点を挙げたことで、開始早々こっちのコートはお祭り騒ぎだった。


「ナイスキー、露木つゆきさん」「初っ端から全開やなっ!」「その調子で頼むよ、凛々花(りりか)」「七絵ななえ先輩、次はわたしに!」


 わいのわいのと凛々花を取り囲む面々(メンバー)と距離を取りつつ、あの二人ダブルエースをハンバーグカレーに喩えるなら良くて福神漬け担当の私は「ナイスキー」と小声で呟いて後衛バックに去る。


 ――――――――

 夕里 凛々花 颯

 七絵 志帆 希和(サーブ)


 とりま、あの二人が前衛フロントにいる間は何も心配要らないわよね。っていうかそれがこのラインアップ最大の旨味おいしさなのだから、あの二人にはずんどこ稼いでもらわないと(あとで私が)困るのだ。


希和きいな、君の守備位置プレイヤーポジションBL(バックレフト)だからね」


 試合中限定のお下げ髪をご機嫌に揺らしながら、志帆しほさんがサービスゾーンにいる私のほうへやってくる。うっす、と私は頷く。


「それと、なるべく今の勢いのままいきたい。連続得点が望ましい」


 次の攻撃の打ち合わせをしている四人を一瞥する志帆さん。まあ、凛々花が派手に決めた以上、すぐにでもはやてに得点の機会を与えないと、あいつ間違いなく拗ねますからね。何かの弾みに無得点のままローテが回って後衛バックなんてことになったらめっちゃフラストレーションでしょうし。


「……サーブで崩せ、ってことですか?」


「それができるならぜひそうしてもらいたいね。ちなみに、サーブコントロールに覚えのある君は、どこを狙うつもりかな?」


「そうですね……あの陣形フォーメーションだと中央が穴っぽいですけど――」


 向こうのコートでは、由紀恵ゆきえさんにボールをぶつけられて悲鳴を上げているしずかさんを除いて、みんな定位置コートポジションについている。


 ―――――――

    静音々


  透   万智


 ひかり 実花

 ―――――――


将欲これをはいせんと廃之ほっせば必固かならずしばらく興之これをおこせ


「えっ?」


「いっそリベロに打ち込んでみるといい。露骨過ぎない程度にね」


 ころころと静さんから転がされてきたボールを、志帆さんは拾い上げて私に手渡す。コレヲハイセ――えっなんて言った今? というかリベロに打ち込めというのは一体――などと尋ねる暇はなかった。志帆さんはすぐに敵陣に向き直ってしまったし、ほどなく主審の笛が鳴ったからだ。


 え、ええいっ! よくわからないが、ひとまず言われた通りに!


 ばしっ、


 と手堅くとおるとひかりんの間ややひかりん寄りくらいの位置へ打ち込む。そしてBR(バックライト)守備位置プレイヤーポジションへ――うわお危ない危ないBL(バックレフト)BL(バックレフト)


 ――――――――

 凛々花 颯 夕里


 希和    七絵

    志帆

 ――――――――


 と私がわたわたやっている間に、あちらでは、ぼむっ、とレシーブが上がる。


「ナイスカット、ひかりんっ!」


 いやナイスカットされてますけどー!?


「希和、レシーブに集中!」


「わっ、わかりました!」


 えっ? えっ? サーブで崩せって話じゃなかったの? どゆこと?


 混乱しながらも攻撃に備える。向こうの攻撃は二枚。定位置コートポジションからそのままレフト平行に入る透と、レセプション不参加ゆえになんの障害もなくAクイックに切り込む音々(ねおん)。ぴったりAカットからのばっちりコンビネーションだ。そこからセッターの静さんは、


 ふぁ、


 とベルベットの如く滑らかなトスを音々に送る。と、


「「させない(るか)ッ!!」」


 それを見たうちのハンバーグカレーが同時に跳び上がった。高さ的にはほぼ互角。音々は力いっぱい打ち抜いた。


 ばごごっ!


 鈍い音がしてボールが舞い上がる。凛々花と颯の間を狙うもワンタッチ。すわ抜けてくるかと前に傾けた身体を咄嗟に起こす。


「希和、チャンスボール!」


 誰が見てもわかることを誰よりも大きな声で叫ぶ志帆さん。やばい! これをスカしたら魔女(の魔女による魔女のための)裁判に掛けられて処される! 無難に無難に無難に――と心の中で唱えながら、私はカラーコーンパスで何度もそうしたように、ボールと目標(ここではセッターの七絵さんだ)を一つの視界に収め、細心の注意を払ってオーバーハンドした。


 ひゅるる、とそこそこまあまあ悪くはないボールが返る。ほっ、と胸を撫で下ろしたのも束の間、


「希和、ブロックフォロー!」


 素で忘れてた!?


 こちらの攻撃は三枚攻撃――凛々花、颯、夕里だ。ハンバーグカレー+福神漬けなんてもんじゃない。言うならハンバーグカツカレー。トッピングにチーズはいかがですか?


 ばちんっ!


 と張りのいい快音が響く。打ったのは颯――そうだと読んで抑えにかかった音々のブロックを弾き跳ばしての、気迫の一撃。ボールは向こうのベンチを超えて、壁にぶち当たった。


「っ――――しゃあッ!」


 凛々花に比べると控え目ながらも、クールに振る舞いたがる颯らしからぬ熱のこもった歓喜の声だ。


「ナイスサーブ。次もよろしく頼むよ。今度は『穴』狙いでね」


 共にブロックフォローに入っていた私の背中を軽く叩き、嫣然えんぜんと微笑む魔女(志帆さん)。一方の私は、この結果の何がどこまでがこの人の魔法(思惑)なのかわからず、頬が引き攣ってうまく笑えない。


 何はともあれ、スコア、0―2。


 ダブルエースは絶好調。この上ない先制ワンツーを決めた形だけれども……。


 私はサービスゾーンから城上女じょじょじょメンバーを見据える。


 まだ試合は始まったばかり。先のことはわかんない。わかんない、けど――とりあえず、言われたことくらいは無難にやってみせますかね。

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