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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第八章(城上女子) VS明正学園高校
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147(颯) 一歩先

 夕食後の自主練習。時刻は夜の八時を回っている。体育館にいたのは十人で、その全員が一年生。言い換えれば、明正うち城上しろのぼり女子の一年生が全員とも体育館にいた。


「はぁ、さすがに、はぁ、疲れたな」


「はぁ、あたしは、はぁ、まだ行けるけどね」


「こら。無理しないの、凛々花(りりか)


「せやでー。身体壊したら元も子もないんやから」


「ゆーりんの意見に一票!」


「今日は皆さんほぼほぼ打ちっぱなしでしたしね」


「そうだね、これくらいにしておこっか」


「自分もさんせーっス」


「んー、私はもうちょっとやりたいんだけどなあ」


「身体を休めるのも練習のうちよ。ってかどっちにしろ私はもう限界……」


 希和きいながよたよたとコートから出て壁際にへたり込んだのをきっかけに、後片付けが始まった。夕里ゆうり実花みかはネットをゆるめ、まだ余力があるらしい芹亜せりあ梨衣菜りいなとおるとひかりはモップ掛け。わたしと露木つゆき凛々花と音々(ねおん)はボール拾いだ。最初に抜けた希和だけは完全に沈黙して動かなかったが、しばらくして「先生んとこ行ってくる……」と体育館を出ていった。


 やがてクールダウンも一段落すると、体育館の水を打ったような静けさが気になってくる。なんでもいいから話していたいな、と思う。こういうとき、真っ先に口を開くのは、夕里だ。


「そう言えば、城上女そっちはチーム目標って決まっとるの? 地区大会突破は前提にしとる感じやったけど」


 開脚したまま上体をひかりのほうに伸ばす夕里。ひかりは透の大きな背中に被さりながら、はい、と応じる。


「この合宿の前にあったミーティングで、正式決定しました。城上女子バレーボール部のチーム目標は『全国大会出場』です」


 全国、という単語に、わたしたちは少なからず驚く。しかも、それを口にしたのは実直なひかりだ。他のメンバーの反応を見ても、ハッタリで言っているのではないとわかる。城上女子は本気で全国を目指すつもりなのだ。夕里は、茶化したりせず、真面目な顔でコメントした。


「全国――とはまた、大きく出たな。当然、胡桃くるみさんがおるくらいやから、ここの県のレベルは百も承知なわけやんな?」


「そうですね。ある程度は」


「脅かすわけやないけど、ここの四強は本気で強いで。かくいうウチらは、けちょんけちょんにされた」


「「ちょ、夕里!?」」


 確かにされたけれど! 試合にもならなかったけれど!


「四強と試合をされたんですか? それは、もしかして、先日あったという遠征で?」


「「なんでひかり(ひかりん)が遠征そのことを知ってるんだ(のよ)!?」」


「さてはそれも胡桃さん情報か! あの人は将来公安にでもなる気かいな!」


「遠征……っていうのは、あたしは初耳ね。なに、あんたたちどこで何してきたの?」


「夕里の中学時代の仲間と戦ってきたのよ。獨和どくわ大附属楢木(ならぎ)高校。そこの一年とね」


「獨和大附属……って、確か夕里殿が自己紹介のときに言ってたとこっスよね。どういうとこでしたっけ?」


「夕里が通ってた中高一貫の学校で、おうちの事情がなければ夕里が進学してた高校だよ。あと、私たちが生まれる前からバレーをしている神保先生が生まれる前から毎年全国大会に出てるんだって」


「すごい強豪校だね……。なんでまた、そんな強いところと?」


「立沢先輩の話に拠ると、獨楢どくなら側がさかえさんを引き戻そうとしたみたいですよ」


「どこ情報やそれ!? あかん、これはあとで情報源を胡桃さんから聞き出さな……」


「夕里を――あっ、じゃあ、あの時、森脇もりわきさんや沢木さわきさんと揉めてたのって、そういうことだったんだ」


「「今の今までなんだと思ってたんだ(のよ)!?」」


「なんだとっていうか、だって凛々花も颯も夕里もなんにも言わないから、触れないほうがいいのかなあって。ああ……でも、そっか、それで森脇さんはあんなに泣いて……」


「…………あんたたち、本当に何やってきたの?」


「非常に微妙で複雑な事情があったんだ!」


「宇奈月さん、ここで一句」


「ゆーりんの古巣に遠征してなんか色々あったのはわかったよ!」


「宇奈月さん、さらに一句」


「そのことと四強と試合したことがどういう風に繋がるのかな!」


 実花の二句(実際に短歌になってる!?)によって、話が本筋に戻される。


「ごめんごめん、そういう話やったな。えっとな、実は、その遠征なんやけど、元々、明正うちは県内の強豪に練習試合を申し込む予定やってん。やけど、その強豪には先約があって、それが獨楢と鶴舞つるま女子との三校合同練習試合やったんよ」


「鶴舞女子ってどこスか?」


「隣の隣で一番強いとこスよ」


「ほんで、諸々の思惑が交錯した結果、ウチらはその強豪に同行するって形で遠征に飛び入り参加できることになったんや」


「なるほどです。しかして、その『強豪』こそが当県四強の一角、というわけですね?」


「そういうことや。西の王者――〝不死蝶《Crawling Butterfly》〟こと、セントレオンハルト女学院じょがくいん


セントレオンハルト……って、もしかして天理てんり――羽田野はたのさんのいる?」


「せやでー」


「とーるう、その人とは県選抜の知り合い?」


「あっ、うん。セントレオンハルト――セントレは小中高一貫で、中学でも強豪なの。特に一つ上は……あっ、夕里、由有希ゆうきさんやあやめさん、って言ってわかる? セッターとリベロの」


「もちろん」


「お元気だった?」


「お元気もお元気! っちゅーか、最初に言った通り、試合してけちょんけちょんに負かされたわ」


「「次は勝つけどな(ね)!!」」


「わかっとるって。ま、そういうわけやから、ウチらのチーム目標は『打倒(セント)レ』――もとい、『打倒四強』やねん」


「なるほど。よくわかりました」


「四強っていうなら、あたしたちもその一つと戦ったわよね」


「「それは本当か、音々!?」」


「ええ。そこが、えっと、なんて言ったっけ――東の覇者、〝毒蜜蜂《Killer Honey Bee》〟だったかしら。音成おとなる女子ってとこよ」


「「さっぱりわからん!」」


「音成女子なら、名前は聞いとるで。四強やっちゅーのもな。それ以上は知らへんけど――」


「コンビ攻撃が得意なチームよ。あと、エースが信じられないくらい強いの。マリンバ先輩っていうんだけど」


「霧咲さん、確かにあの方は打てば打つだけ小気味良く決められる方ですが、断じて木琴の一種ではありません。正しくはマリチカ先輩です」


「マリ……チカ、ってまさか鞠川まりかわ千嘉ちかさんのことか!? それ鞠川千嘉さんやろ!? 江籠えご中の!!」


「知ってるの、夕里?」


「江籠中とは中学時代に先輩たちが大会で当たったんや。ウチは直接試合しとらんけど、よく覚えとるで。むちゃくちゃ目立つ人やったからな……。そっか、東の音成女子――やっぱ四強におったか。いやいや……そら、さぞかしボコられたやろ」


「そうね。確かにあのエースには決められまくったわ」


「でも、勝ったのは自分たちっスよ!」


「まっ――ええ!? 勝ったやと!?」


「まあ、一種の親善試合みたいなものだったしね。こっちは人数足りなくてあっちのキャプテンを味方にしてたくらいだし」


「キャプテンっちゅーのは、鞠川さん……ではないんやな?」


「そうっスよ。相原あいはらつばめ殿って言って、ミドルブロッカーの三年生っス!」


「えっ、えっ? 待って、その前に、人数足りなかったってなに?」


「その時はまだ、しずか先輩と由紀恵ゆきえ先輩が復帰してなかったのよ」


「えっ、えっ、えっ?」


「こんなに動揺している夕里も珍しいな……」


「いやいや、我が事に置き換えてみたらわかるやろ! 言うたら七絵ななえさんが抜けて、その穴にあっちから羽田野はたの由衣ゆいさんをお借りして、向こうの穴には天理さんか誰かが入って、ほんで試合して勝てるかどうか考えてみーや!」


「「…………わたし(あたし)が万全ならぎりぎり! なんとか!」」


「いやあ、私はこれは大変だと思うなあ」


「大変なんてレベルやないで! よっぽどのよっぽどや! いや……ほんま、何がどうなってそうなったん?」


「んー、七絵さんにも同じこと聞かれたんだけど……なんかこう、いい感じにとしか」


「いい感じってそんな……そんなことが、もし……できるなら――――」


 夕里は言葉に詰まり、なぜか実花に振り向いて、そのあとひかりを見た。


「…………いや、せやけど、なるほどな。現に四強の一角を崩したんなら、『全国大会出場』を掲げるんも納得や。今んとこは、そっちが一歩リードっちゅーわけやな。キミらとは、もし県大会でぶつかるにしても、一回戦からいきなりとかは勘弁願いたいわ」


「互いに地区大会で優勝すれば、その心配はないはずですよ。地区一位同士は一回戦では当たりませんから」


「地区一位……ね。あたしたちにとっては、そこが第一の関門よね」


「北地区なんやっけ。四強シードは地区大会免除のはずやから……八強でどっか強いとこがおるの?」


「そうなんス! 石館いしだて商業っていうところで、レフトエースが二年生で一番強いレフトなんスよ!」


「「二年生で『一番強い』レフト!?」」


「そうなの……七絵さんと同期の県選抜の、レフト。藤本ふじもといちいさんっていう人なんだけど……」


「七絵さんの――ほな、あの人か! 変幻自在の〝千紫(Kaleido)万紅(Scope)〟!!」


「あんたも胡桃先輩に負けず劣らず情報通ね、夕里……」


「こちとら小学時代から全国常連やもん。特にここはみやこに次いで強敵揃いやからな。注目もするし詳しくもなるわ」


「「よくわからないが(けど)、その二年のレフトにだけは負けるなよ(ないでよ)、透ッ! お前(あんた)は一年最強なんだからな(ね)!」」


「ふぇぇぇ……」


藤島ふじしまさん、お気を確かに」


「でも、あれじゃないかなあ。私たちだって、地区大会で優勝するのは簡単じゃないと思うよ。ほら、入部試験の、在原ありわらさんたちが」


「ああ、そうやったな。芹亜の言う通りや」


「ん……? どういうこと? 在原さんたちは西地区の人だから、あたしたちには関係ないはずでしょ?」


「よう思い出してや。その西地区の在原さんたちが、なんであのとき、関係ないはずの県庁地区ここにおったんか――もっと言えば、なんで明正うちに乗り込んできたんか」


「練習試合、だったんだよね。駅の反対側にあるところと」


「そうかっ……! 明星めいせい学園!!」


明正うちと似た名前のそこが、県庁地区やと筆頭らしいやんか。あの在原さんたちと正式に練習試合を組むくらいのチームやで。油断はできひん」


「「確かに!」」


「目標を高く掲げればこそ、同じ志を抱く相手を一つ一つ倒していかねばなりません。ですがゆえに、こうして合宿している今があるわけで」


「うむむ……っ! なんだかじっとしてられないわ! ネット張り直しましょ――!」


 と露木凛々花が立ち上がり、わたしも同じく飛び起きた、その時だった。がらがら、と体育館の扉が開く。


「おっつー、者ども出る準備はできてるかしらー。……って何してんの?」


「「いいところに来たな、希和! 今から自由練習を始めるぞ!!」」


「あれ!? 私、タイムリープしてる!? いま何時!?」


「「七時半だ!」」


「そんなっ、いつの間に一時間以上も時を遡って――って普通に八時半過ぎじゃないの! もう施錠するわよ! お風呂の準備もできてるし、あとほら、先生から特別にアイスの差し入れ!」


「「アイス!?」」


「そうよ。だからみんな、さっさと荷物まとめて出てちょうだい。溶けちゃうわ」


「「れ、練習、アイス、練習……アイス――いや、練習だ、練習! ……じゅるり」」


「ほら、凛々花、颯、二人ともヨダレ拭きなさい」


「練習したい熱意には賛同しますが、唾液に限らず、無為にだらだらするのはいただけませんね」


「うん、もうクールダウンもしちゃったしね。明日に備えたほうがいいよ」


「あっ、じゃあ私、電気消す係やろうっと」


「待つっス芹亜殿! 自分も自分もー!」


「ところで、ときーなは随分ゆっくりなお帰りだったけど、何してたの? あとそのほっぺのクリームは?」


「こ、これは、違っ! 志帆しほさんが、生ものはその日のうちにって言うから、なりゆきで……」


「そっか!!!! ときーなはなりゆきでくるみー先輩とちさちー先輩からお裾分けしてもらったんだね!!!!」


「声がでかい声が!!」


「ほんとちゃっかりしてるわね、希和って」


「い、いいでしょ別に! 大体、このアイスだって、私がひとっ走りしてこなきゃここにないんだからね! 正当な報酬よ!」


「なるほど、ケーキで買収されたんか。着々と志帆さんに飼い慣らされとるな、希和」


「誰が飼い犬(パシリ)よ! やかましいわっ!」


「そうですよ、栄さん。戦利品アイスを携えての凱旋なのですから、ここはむしろ英雄エロイカと讃えるべきです」


「ああっ、ひかりんマジ癒しっ! もう撫で撫でさせなさーい!」


「くっ、此奴もまた俗物でしたか……!」


「――ほぶっ。ちょ、透、なぜ立ち塞がるの!?」


「ほ、ほら、早く体育館を出ないとだからっ! ねっ?」


「みんなー、準備できたー? そろそろ電気消すよー」


「ほれ、希和、ひねり潰される前に行くで」


「ひねっ……?」


「それじゃ、私たちも行こっか」


「はい。そこな宇奈月さんも――って、何をにこにこしてやがりますか。よくわかりませんが不愉快です」


「理由なき面罵!?」


「ほらっ、凛々花! 颯も! もたもたしてると置いていくわよ!」


「「……練習……アイス……アイス……」」


「きりがないんで消灯カウントダウン入るっスねー! ハイ、10!」


「1! 0!」


 ふつんっ。


「「ほあっ暗!?」」


「ちょ、梨衣菜、カウントダウンは!?」


「したっスよ!! ただなぜか芹亜殿が二進法を採用したっス!!」


「ふふっ、世の中には10種類の人間しかいないんだって。二進法がわかる人とわからない人。これ面白いよね」


「なんの話っスかー!?」


 ――――――


 芹亜と梨衣菜が最後に扉を出たあと、希和が先生から借りてきた鍵で戸締まりをする。その間に、わたしたちは希和が持ってきたコンビニの袋から、それぞれ好きなアイスを選んだ。箱買いではなく、同じ価格帯のものをバラで何種類か買ってあったのだ。


 わたしは選んだのは、シャーベットのチューブ型アイス。瓶のような形をした容器が二つくっついたデザインのやつだ。味はホワイトサワーで、奇しくも、露木凛々花は同じアイスのチョコ味を手に取っていた。


「なによ」


「なんだよ」


 目が合ったのでとりあえず因縁をつけておく。そして、ぷちんっ、と容器同士を真ん中で切り離した。


「んっ」


 不機嫌そうに喉の奥で声を鳴らした露木凛々花が、切り離した容器の片方をわたしの鼻先に向ける。その意図は、わからない、こともなくもなくもなかった。


「……ふん」


 わたしは露木凛々花のチョコ味を受け取り、代わりに自分のホワイトサワーを渡す。取っ手に指を引っかけて封を開け、チューブの先を口に入れて、容器の腹をぐっと握った。希和がコンビニで買ってからここまでの時間で、シャーベットはほどよく溶けていた。チョコの味が口全体に広がる。


「……明日は、勝つわよ」


 露木凛々花はそう言って、ぎゅうう、とホワイトサワーのチューブを握り締める。その目は一歩先を行く城上女のメンバーを見つめていて、わたしのことは一瞥もしない。ただ、そういう断りを入れていないから、独り言というわけではないのだろう。


「わかってる。セントレのときみたいな無様は晒さない」


「分担は、透があたし、音々があんたでいいわよね」


「透は県選抜のエースだぞ。お前には荷が重いんじゃないか?」


「あんたこそ、中学の時は手も足も出なかった音々が相手なわけだけど?」


 中学――と言われて、なんとなく、バレーを始めたばかりの頃を思い出した。仮入部の時に、見よう見まねで、下手なスパイクを打った。二年半後には県大会に出ることができた。そして音々たち霞ヶ丘中と当たって、負けた。


 でも、それで終わりじゃなかった。高校に入って、憎き露木凛々花がいて、入部試験では在原先輩たち、獨楢では同学年の県選抜である沢木彰たちと、四強であるセントレとも戦った。そこでもやっぱり負けて、だからこそ、次は勝とうと目標を『打倒四強』に決めた。


 ただし、そのセントレでさえ、四強のうちの一校でしかない。音々たちが掲げる『全国大会出場』は、その四強のうち三校を倒さなければ達成できないのだ。わたしたちの掲げる『打倒四強』にしても、八強入りして四強と相見えるまでに、倒すべき相手が――明星学園、三坂総合、城上女子、石館商業――わたしの聞き及ぶ範囲でもこんなにたくさんいる。


 だが、もちろん、どんな相手が待ち構えていようと、わたしのやることは一つだ。


「蹴散らしてやるさ。わたしは明正学園のエースだからな」


「上等じゃない。ま、明正学園のエースはあたしだけどね」


 ふんっ、とわたしは露木凛々花の減らず口を鼻で笑う。


 そして、ふと、澄んだ夜空を見上げた。


 合宿前の日々が、なんだか遠い昔のことのような気がする。音々とももう立派な友達になった。中学の時の冷たい『二番』の姿は、今では幻だったんじゃないかと思えるほどだ。それくらい密度の濃い三日間だった。体力や技術が一段向上したのは言うまでもなく、人数が多いからこそできるような練習に取り組んだり、何人ものスペシャルゲストから指導を受けたりして、以前に比べると遥かに視野が広がったように思う。


「何もかも……ここから始まるような気がするな」


 わたしは独り言のつもりで小さくそう呟いた。でも、隣の露木がそれに応えた。


「……そうね」


 外部の相手ときちんと試合をするのは、実質、これが初めて。在原さんたちとはミニゲームだったし、獨楢遠征の時はほとんど準備なしの出たとこ勝負だった。けれど、今回はそうではない。万全の態勢で戦える。チーム目標も、個々の役割分担も、大会を想定したローテも、既に決まっている。明正学園女子バレーボール部の、本格的な船出というわけだ。乗組員に一人だけ本来は敵なヤツが混じってるが、まあ、それはそれとして。


 明日の試合で、はっきりわかる。今のわたしたちの実力が、果たして如何程のものか。


 胸の内で、心臓が高らかに脈打つ。


 明日は全力を尽くす。そして必ず、結果を残す。


 全ては、わたしが最強わたしであるために。


 そうして決意を新たにしたわたしは、合宿所に戻って神保先生に挨拶とお礼を言い、お風呂やら何やらを済ませてすぐさまふかふかの布団に潜り込むと、やはり一日打ちっぱなしは身体に相当来ていたのだろう、おやすみなさいと言ったか言わないかのうちに、一瞬で深い深い眠りに落ちたのだった。

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