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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第八章(城上女子) VS明正学園高校
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140(知沙) チームキャプテン

 ばむっ、


 と画面の中の志帆しほちゃんがサーブを受ける――今日の午後に行われたサーブレシーブ練習の録画映像だ。それを見ながら、神保じんぼ先生と胡桃くるみちゃんがあれこれコメントする。私は二人の言うことをメモしたり、映像を早回ししたり巻戻ししたりする係だ。そうやって、メンバーの癖や特徴を把握し、改善点を洗い出す。そして、それらはお風呂を上がったあとに、私と胡桃ちゃんから個々に伝えることになっていた。


 私は二人の話に耳を傾けつつ、それはそれとして、同じ会議室の対角で行われている談合のほうにも気を向けていた。志帆ちゃんとナナちゃんが差し向かいで話している。話題は何かと言えば、チームキャプテンのことだ。


 というのも、バレーボールの現行ルールでは、『リベロはチームキャプテンになれない』のである。学校の課外活動における部長キャプテンは志帆ちゃんで問題ないのだけれど、バレーボールの大会における代表キャプテンは、リベロで出場する志帆ちゃん以外の誰かがやらなければならない。


獨楢どくならの時は混乱を防ぐために私がやったけれど、今回の合宿最終日に行われる練習試合では、君にチームキャプテンを任せたいと思う。つまり、いずれ来る大会の予行演習としてね」


「大会……チームキャプテン、ですか」


「何か、引っかかることが?」


「いえ、もちろん、否やはありません。覚悟はしてました。でも、多少、不安はあります」


「七絵は、小・中の頃はキャプテンではなかったのかね?」


「はい。向き不向きでいうと、あんまり向いているほうじゃなかったですから。それに、一般的に、セッターとキャプテンの兼任って避けますし」


「ああ……夕里もキャプテンではなかったものな。ゲームメイクをしながらチームをまとめるというのは、確かに容易ではなさそうだ」


「やってできないことは、たぶん、ないと思います。うちに関して言えば、ゲームメイクは栄さんが中心になると思いますし、それに、号令を掛けたり指示を出したりなんかは、今まで通り先輩がされるんですよね?」


「普段の練習がそうだからね。そのほうが自然だとは思ってるよ。でも、私が引退したあとのことを考えれば、そのあたりの仕事も、今から君に引き継ぐのもアリだと考えている。

 もちろん、それが重荷になって君のパフォーマンスが落ちては本末転倒だから、どうするかは君の意見を優先しようと思うが……」


「今のところは、先輩に任せたいな、というのが正直な気持ちです」


「君にしては珍しく消極的だな。理由を聞いても?」


「はい。まあ、理由というほど大したものじゃなくて……単に、ガラじゃない、というか」


「ガラじゃない、と来たか」


 くすくす、と志帆ちゃんは愉快そうに笑った。ナナちゃんは、拗ねているのか恥じているのか、ちょっと間を置いて、声を落として言う。


「……獨楢でセントレの一年生と試合しましたよね。あの時だって、ちょっと、やり過ぎたなって思ってるんです」


「ああ、最後のバックアタックのことか。私は、ああいう君も好きだがね」


「よしてください。本当、ガラじゃないんですから、ああいうの」


 すまんすまん、と志帆ちゃんは苦笑しつつナナちゃんを宥め、そして、真面目な声で言う。


「君の言いたいことは、一応、わかったつもりだ。そのあたりは、私が引退するまでの宿題ということにしておこう。いずれにせよ、今回の練習試合――ひいては大会のチームキャプテンは、君がやってくれるということで」


「はい。それは、さすがに、下級生に負担は掛けられませんから」


「ありがとう。そうなるとなおさら、今回の合宿は君にとってまたとない機会だと思うよ。なんといっても城上女あちらも主将は二年生だからね。……と、噂をすれば」


 がらがら、と会議室の引き戸が開いて、噂をした子が現れる。近くにいたナナちゃんが初めに声を掛けた。


「あ、岩村さん、どうも」


「どもですぅ。って、すいません、お邪魔しちゃいましたか?」


「いや、今ちょうど、君の話をしていたところでね。実は折り入ってお願いしたいことがあって――七絵にチームキャプテンのイロハを教えてやってほしいんだ」


「あっ、そっか、志帆さんはリベロですもんねぇ。なるほど。わかりました、私でよければ」


「よろしくお願いします」


 頑張って、ナナちゃん部長(未来)! と、私は心の中でエールを送った。

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