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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第七章(明正学園) VS聖レオンハルト女学院
237/374

91(世奈) 攻撃特化《ポイントゲッター》

 明正めいじょう学園VS(セント)レオンハルト女学院じょがくいん


 急遽決定したそのスペシャルマッチを、あたしは隣のBコートのベンチから見ていた。パイプ椅子の向きを逆にして拵えた、即席の一階観客席。仕切り網の向こうに、明正学園の監督とマネージャーの背中と、明正コートが見える。これがなかなか人気スポットのようで、他にも何人か同席者がいた。


 具体的には、左隣に町川まちかわ縫乃ぬいの。そして右隣には、なぜかセントレ新人チームのキャプテン・羽田野(はたの)天理てんりさんがいる。セントレの他の一年生は順当にセントレ側のベンチの後方に固まって応援しているのだが、なぜか羽田野さんだけがこっちにいた。まあ、知らない仲ではないし、あんな非の打ち所のない微笑で「こちらよろしいですか?」と尋ねられれば、頷くほかないというものだ。


 ちなみに、上階ギャラリーは、明正学園サイドが獨楢うちの先輩たち、セントレサイドが鶴舞つるま女子で、満員御礼。


 え? あきら? ああ、あいつならジャンケンに負けて補助員ラインジャッジをしてるわ。あたしたちから見て一番近い位置――明正コートのレフト線(セントレコートのライト線)を担当している。


「明正学園さんは、やっとローテが回ったね」


 と左から縫乃ぬいの。あたしは夕里ゆうりの「ナイッサー」の声を聞きながら答える。


「この状況で、前衛フロントに上がった夕里はどう動くのかしら……」


「どう動くと思われますか?」


 と今度は右から羽田野はたのさん。あたしは腕組みして答える。


「あたしの知ってる夕里なら、様子を見て隙を探るでしょうね。でも、それは獨楢中時代の(あたしの知ってる)夕里なら、って話。あのデコボコチームでできることは限られてるし、悠長にしていられる点差でもない。たぶん、早々に何かするはず」


「何か、とは?」


「定石に従うなら、とにかくセンター線を機能させること。サイドアタッカーの単発攻撃だけで崩せる相手じゃないもの」


「ということは、速攻クイックですのね」


「そう。速攻クイック


 なんて言っていたからか、




 ――だんっ!




 と、強烈なAクイックが明正学園のコートに決まった。鶯谷うぐいすだにあやめさんの完璧なレセプション、仲村なかむら由有希ゆうきさんの安定したトス、からの奥沢おくざわらんさんの打ち下ろし。これにはさすがの夕里も目を丸くしていた。完全に上を抜かれたのだ。


「当たり前だけど打点も恐ろしく高いわね……さすが190センチ」


 あたしが呟くと、右隣の羽田野さんがくすくすと笑った。


「そのことなのですが、本人曰く正確には『189.8センチ』とのことですわよ」


「は? 2ミリなんて誤差でしょ?」


「本人としてはその2ミリが最後の砦なのだそうですの」


「よくわからないこだわりね……」


 ねえ、あんたもそう思わない? と同意を求めようとしてあたしは右隣の縫乃に目を向ける。と、どういうわけか縫乃はお腹を押さえてぷるぷると肩を震わせていた。なにか可笑しなところあった? 縫乃のツボもよくわからないわね……。


「ご覧になってください、森脇もりわきさん。予想的中のようですわよ」


「へえ?」


 言われてコートを見ると、夕里と、今回はリベロ出場のキャプテンさんがコート内で何か話していた。何かのプチ作戦会議らしい。ほどなく終了すると、キャプテンさんは他のメンバーに指示を出しながら後衛バックの守備位置に、夕里はそのままネット際に上がった。


「あれは……夕里の攻撃特化ポイントゲッター?」


 ミドルブロッカーの攻撃での役割は、基本的に速攻クイックだ。しかし、そのミドルブロッカーがサーブで狙われると、体勢を崩されたりして速攻クイックに入れなくなる、ということがまま起きる。ミドルブロッカーの攻撃特化とは、それを避けるために多くの中~上級チームが採用している戦略フォーメーションだ。ミドルブロッカーを守備レセプションに参加させず、攻撃に専念させる。例えば、こんな風に。


 ―――ネット―――

 夕里七絵


   凛々花

 颯     志帆

   希和

 ―――――――――


 ここから、サーブが打たれた瞬間に、夕里と小田原さんは自身の定位置プレイヤーポジションに移動する。レセプションは四人。ただし、前衛フロントの露木凛々花は攻撃もしなければならないから、実質、後衛バックの三人でサーブを拾うことになる。


「んー、レシーバーが少しレフトに寄ってるね。右半分はリベロさんが一人で守るつもりなのかも」


有理子ありすさんのジャンプサーブをAカットにしてみせた方ですから。きっと自信がおありなのでしょう」


「レセプションは、まあ、いいわ。問題は攻撃よ。夕里を攻撃特化にするってことは、速攻クイックで勝負するってこと。つまり、あの189.8センチの壁を出し抜くってことじゃない。一体何をやるつもりなのよ」


「「さあ?」」


 両隣が同時に首を傾げる。あたしは前のめりになって夕里を見つめた。夕里に限って無策なんてことはないだろうけど、やっぱりこう、外から見てるだけってのは落ち着かない。やきもきして、髪を搔き上げたり足を組み直したりしてしまう。ただ見ているだけでこれなのに、もし補助員に当たってたらどうなっていたことやら。より一層そわそわしていたに違いないわ。


 ……って、彰! すっごいちらちら夕里を見てるけど!? ちょっと、あんた、ちゃんと仕事しなさいよねっ!

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