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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第二章(城上女子) VS音成女子高校
23/374

19(胡桃) 二段トス

 城上女じょじょじょfeat.つばめVS成女(なるじょ)の試合は、万智まちのフローターサーブで始まった。


 気負っている様子はない。まあ、あの子は緊張で硬くなるタイプじゃないから、さほど心配していなかったけれど。


 ばしんっ、


 とサーブは敵コート中央、キャプテン・相原あいはらつばめの代役を務めているルーキー・鈴木すずきアンドロメダ(175センチの彼女が『控え』という事実が成女の実力を物語っている)へ。


 アンドロメダはやや体勢を崩しながらもアンダーハンドでサーブを処理。


 ライト方向へ乱れたカット。ここからアンドロメダをクイックで使うのは難しい。当然、セッター・獅子塚ししづか美波みなみは、レフトのエース・鞠川まりかわ千嘉ちか――マリチカにセミオープンのトスを上げる。


 こちらのブロックは、霧咲きりさき音々(ねおん)宇奈月うなづき実花みかの二枚。


 藤島ふじしまとおるは、ブロックに行かずレシーブの体勢を取る。


 恐らく、今バックセンターで守備をしている初心者の北山きたやま梨衣菜りいなをフォローするため。


 ブロックを三枚にすることより、守備範囲の狭い梨衣菜の穴を、透、万智、三園みそのひかりの三人で埋めたほうが守りが厚くなる、との判断だろう。


「あーらよ、っとい!!」


 ばちんっ!!


 成女のエース・マリチカが強烈なスパイク放つ。それを音々がワンタッチ。ある程度勢いを削がれたボールは、バックセンター・梨衣菜の手の届く範囲へ。


「梨衣菜ー! 上げろおー!!」


 ベンチからつばめのよく通る指示が飛ぶ。梨衣菜は「う、うっス!!」と初心者らしいめちゃくちゃなフォームで拾いに行く。ボールが上に上がれば御の字だろう。


 というか、ワンタッチを取っているとはいえ、あのマリチカのスパイクに反応している時点で初心者としては十分過ぎるほどなんだよな。


 ぼごっ、


 と明らかにミートしてない鈍い音がして、ひょろひょろと上がったボールはバックレフトの万智のほうへと流れていく。


「ないすかっとぉー!! おーらぁい!」


 万智は手を挙げて、落下地点へ。エンドライン際のレフトサイドへ上がったレシーブを意味のある攻撃へ繋ぐのは、なかなか難しい。


 が、


「まっちー先輩ー!! ライトライトおおお!!」


 バックライトのひかりの位置まで下がった(ひかりはちょっと迷惑そうな顔で場所を譲っている)セッターの実花が、トスを要求。まさか打つ気なのか?


「まぁー……かせたぁ!!」


 万智は全身を使って二段トスを上げる。アタックライン上にふわりと放られたトス。実花はそれを見ながら踏み込――ん? なんかステップに違和かn、ええっ!? あいつサウスポーで打つ気かよ!? スパイク練習のときは右で打ってたろ!!


 ばちんっ!


 クロス方向へ深々と突き刺さる強打。チャンスボールに備えて構えていた成女守備の物理的・精神的な穴を突いて、実花のスパイクは見事に決まった。


「っしゃああああー!!」


 と、左手を突き上げて雄叫びを上げた実花は、太陽のような笑顔で万智に振り返り、Vサインを送る。


「まっちー先輩、ナイストスでした!!」


「えへへぇ、ありがとぉ」


 照れたようにそう言って、両手をぽあぽあと振る万智。そして、彼女は、ふっ、とベンチにいるわたしに振り返ると、嬉しそうに目を細めて、何事か呟いた。


 それは、とても小さな声だったが、でも、わたしにははっきりと聞き取れた。




『無駄にならなかったよぉ』




 ……うん、そうだね。


 わたしは微笑みと頷きを返し、自作の記録用ノートにペンを走らせる。


 城上女VS成女、一セットマッチ、ファーストプレイ。


『岩村:サーブB』『北山:スパイクレシーブC』『宇奈月:ライトオープンS(備考メモ:スイッチアタッカー)』、


 それから、


『岩村:二段トスA』と。


 スコア、1―0。


 城上しろのぼり女子は、東の覇者・音成おとなる女子を相手に、幸先のいいスタートを切った。

<バレーボール基礎知識>


・クロスとストレート


 ネットに対して垂直方向へ打つのがストレート。


 ネットに対して斜め方向へ打つのがクロスです。


 また、クイック攻撃において、打ち手と逆(右打ちなら左)方向へ身体を捻って打つのを、ターンと言います。

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