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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第六章(明正学園) AT獨和大附属楢木高校
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51(世奈) 好み

 ああ……やっぱり、『そういうこと』だったのね。


 疑惑の裏が取れて、あたしは、しかし、取り乱すことはなかった。たぶん、心のどこかでこうなるのがわかっていたからだと思う。


 あたしは体育館の壁に背中を預けて、小さく溜息をついた。


 ばたばたと、角の向こうから足音が近付いてくる。あたしは逃げも隠れもしなかった。わかってる。人の気配とかそういうのに敏感なあいつは、きっと、角を曲がってあたしと出くわしても、さほど驚くことはないだろう。


「っ……世奈せな


 角から現れた夕里ゆうりは、あたしの姿を見ると、潤んだ目を僅かに細めた。あたしは腕組みして壁に凭れたまま、夕里の右手をちらりと見る。今は――もちろん、外している。


「どう?」


「えっ?」


腕時計プレゼントの調子」


 あたしが何でもない調子でそう言うと、夕里はぎこちなく微笑んだ。


「ええ感じやで。制服にも私服にも合うし。ほんまありがとな」


「どういたしまして」


 ふふっ、とあたしと夕里は小さく笑い合う。そして、夕里はさり気なく目元を拭うと、あたしに訊いた。


「あれ、世奈せなが選んでくれたんやろ?」


「そうよ。時計にしようってとこまで決めたのはみんなでだけど、最終的にどれにするか選んだのは、あたし」


「せやろと思ったで。ウチ、あれ見て一発で気に入ってん。ほんで、ウチが一発で気に入るようなん選べるのは、世奈しかおらへんから」


 夕里はそう言って、右手首を擦った。


「……世奈とウチの好みって、似とるからな」


 あたしは思わず吹き出してしまった。


「ええ……そうね。あたしたち、性格もプレースタイルも全然違うのに、好きなものは被るのよね」


 あたしは腕組みを解いて、体育館の壁から離れ、夕里の真正面に立つ。


「夕里。あたしも、あんたは獨楢ここにいるべき選手プレイヤーだと思ってるわ」


「……おおきに」


「午後も加減はしないわ。覚悟しておきなさい」


 あたしの挑発に、夕里は少し困ったように微笑んだ。あたしは夕里が何か言うのを待っていたが、結局、夕里は「ほなな」と下を向いてあたしの横をすり抜け、去っていった。


 あたしは大きく息を吸い込んで、空を見上げた。


 無性に空き缶か何かを蹴り飛ばしたくなった。

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