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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第六章(明正学園) AT獨和大附属楢木高校
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44(知沙) 蒼白の真珠《Spiky Spica》

「さて……もう気付いた者が大半だろうが、向こうのチームはとんでもなく強いぞ」


 いきなりの三連続失点からタイムアウトを取った神保じんぼ沙貴子さきこ先生は、集まったみんなの表情を見ながら、ずばりとそう言った。


「まあ、言ってしまうと、今出ている彼女たちは全員去年の中学県選抜らしいんだな」


「うぇっ、全員!?」


 あんまりにあんまりな事実に、裏返った悲鳴を上げる瀬戸せと希和きいなさん。「そうなんだろ?」と神保先生はさかえ夕里ゆうりさんに視線を送る。栄さんは頷いた。


「はい……そうなります。向こうのスタメンは、ほぼそのまんま全国ベスト8まで行ったメンバーですよ」


「「全国ベスト8……!?」」


 今度は瀬戸さんだけじゃなく露木つゆき凛々花(りりか)さんと今川いまがわはやてさんの声も混ざる。


「ほんで、その主力メンバーん中で最も敵に回したらあかん選手プレイヤーが、今大暴れしとる。元ウチの対角――森脇もりわき世奈せな。〝蒼白(Spiky)真珠(Spica)〟と恐れられる、全国でも指折りの超攻撃型セッターや」


 実感がたっぷり込められた栄さんの紹介に、瀬戸さんたちは言葉を失う。さらに、トドメとばかりに神保先生が補足した。


「その森脇と、レフトエースの沢木さわきあきら。この二人は、一年生ながら今の獨楢で即戦力として期待されている選手プレイヤーだ。彼女たちが前衛に揃っている今、集中を切らせば、このまま(ラブ)ゲームもありうる」


 神保先生は、真剣な表情でみんなに語りかける。誇張や脅しじゃなくて、みんなの心構え次第では、本当にこのまま試合が終わると先生は確信しているのだ。


 いや、先生だけではなくて、みんなもそれをわかってる。


 それだけ深い爪跡を、向こうの沢木さんと森脇さんは私たちに刻んだ。


「そうならないために、大事なのは最初の1点だ。これを取れるか否かで、今日一日の成果も決まる。たとえこのセットが1―25で終わってもいい。全国レベルのチームから、自分たちの力で、1点をもぎ取ってこい。わかったな?」


 神保先生の言葉に、みんなは揃って頷いた。


「「はい!」」


「いい返事だ。じゃ、壁の高さがわかったところで仕切り直しといくか。頼むぞ、星賀ほしか


「お任せください」


 先生の隣に立つ志帆しほちゃんが、すっ、と右手を前に出す。もう慣れたもので、ほんの一秒の間に全員の手が重なる。


明正めいじょうおおー……ふぁいっ!!」


「「おおおああああ!!」」


 試合開始の時よりずっと切実な掛け声が、体育館に響く。そして同時に、


 ぴぃぃぃ――!


 と、少し長い笛の音。おおっ、さすが神保先生と志帆ちゃん! 三十秒ぴったりきっかり! どうやって測ってたの!?


 私はみんなからドリンクを回収して、コートに向かうその背中を見つめる。気迫十分って感じ。特に露木さんと今川さんの二人は、全身からごうごうと炎が吹き出ている(ように見える)。


「だ、大丈夫ですよね……?」


 片付けを終えた私はパイプ椅子に座り、先生に小声で話し掛ける。先生は腕を組んで「どうだかな」と目を細めた。


「これでようやく、気持ちの面では勝負の形になったってとこだ。それだって『仮にも』程度だがな。けど、気持ち以外は……どうしたって差があるさ。練習は嘘をつかない。冗談さえ言わない。いつだって残酷な現実を突きつけてくる」


 険しい表情で自軍コートを見つめる神保先生。もはや気が気でない私は、記録用のペンを祈るようにきつく握り締めた。

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