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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第六章(明正学園) AT獨和大附属楢木高校
181/374

39(明朝) 高架高速攻撃《Over the Road》

 私の名前は美川よしかわ明朝あきとも。みんなからは音読みで『ミンチョー』と呼ばれている。これが随分語感がいいらしく、


「ヨロシク、ミンチョー」


 こうして他校の知り合いからも呼ばれる。せっかくなので、こちらもフランクに呼び掛けてみた。


「お手柔らかに、マッキー」


「…………」


 鶴舞つるま女子短期大学附属高校バレーボール部キャプテン――葉山はやま真紀まきさんは、とても不愉快そうに目を細め、握手もそこそこにチームのほうへと戻っていった。


「なんか葉山真紀ハヤマキがキレてっけど? 何したんミンチョー?」


 隣の多部たべ遥火はるかが、むっつり顔でサーブレシーブの構えを取っている葉山さんを見ながら小声で聞いてきた。


「『マッキー』って呼んだら怒られた」


「あー、それな、あるなあるある」


「そこ二人集中しなさい」


 二つ隣の横田よこた久美子くみこがぴしゃりと言う。私と遥火はるかは顔を見合わせて苦笑を交わし、相手コートを見据えた。言われた通り、気持ちを切り替える。


 ふっ、と一瞬の無音の間があって、サービス許可の笛が鳴る。


「「っさあああああ!!」」


 コート内を飛び交う気合と指示の声。そして、サーバーの氏島しじま右季うときが最初のサーブを打ち込んだ。ボールはマッキー、もとい葉山さんのところへ。


「ライッ」


 サーブが打たれたとほぼ同時に声を上げ、葉山さんはオーバーハンドで危なげなくボールを処理する。ふわりと高い弾道のAカット。鶴女の攻撃は三枚。


 レフトからは葉山はやま真紀まきさん――165センチ、右打ち。


 ライトからは梶井かじい遠子とおこさん――169センチ、左打ち。


 伝統の〝鶴翼(Double)の陣(Wing)〟。コートを左右に広く使った鶴女つるじょの十八番。


 しかし、なんと言っても本命は、


「なあーいすかっとおーっす、真紀さあああん!!」


 センターに切り込む、一際大きな影。


「っるるるぁああああー来いやああぁー!!」


 去年、鶴女に革新を齎した、隣県最強のミドルブロッカー。


「っらあ行っとけえええー!!」


 ひゅっ、と高速で送り出されたトスをフルスイングの右腕が捉え、


「っるるあっしょおおおー!!」




 ――ばぢんっ!!




 ボールはこちらのブロックの上を抜け、コートへ鋭角に叩き込まれた。


「「っしゃああー!!」」


 ぱんっ、と気持ちのいいハイタッチを交わすのは、鶴女レギュラーでただ二人の二年生。


 〝中央(Road)本線(Roller)〟――車崎くるまざき通子みちこさん、179センチ、ミドルブロッカー。


 〝追越(Over)車線(Pass)〟――宇陀川うだがわ幸絵ゆきえさん、175センチ、センター対角セッター。


 マッキーは単なる冗談だけれど、通子ミッチー幸絵(サッチー)と言えば、中学時代から隣県を代表する双璧ツインタワーとして全国にその名を轟かせていた。彼女たちの繰り出す〝高架(Over)高速(the)攻撃(Road)〟は高校でさらに洗練され、巷では『ヤツらが通った跡には草も生えない』と恐れられている。


「初っ端から飛ばしてくるわね……あの高架高速(ふたり)


 車崎くるまざきさんと同じミドルブロッカーの久美子くみこが、上を抜かれた悔しさを滲ませて言う。私はその肩を叩いた。


「ま、焦らずいこうか。遥火はるかもオーケー?」


「おーよ」


 私は他のメンバーの顔も一通り見回して、浮き足立ってないか確かめる。電光石火で先取点を持っていかれた格好だけれど、みんなきっちり落ち着いていた。私は普段通りに声を出す。


「よーし、一本集中ー!!」


「「おおーっ!!」」


 スコア、0―1。


 私としてはまだ探り合っていたい段階なんだけれど、鶴女あっち――というか車崎くるまざきさんと宇陀川うだがわさんはそうじゃないみたい。どんどん攻めていかないと一気に持っていかれそうだ。


 こうなると、さすがにお隣の沢木さわきあきらたちにまで気を配っている余裕はない。


 でも、ま、きっと大丈夫だよね……?


 ぴっ、と笛の音が聞こえる。私は散っていた神経を収束させる。


 新人チームの立ち上がりは気になるけれど、ひとまず私は目の前の試合に集中した。

登場人物の平均身長(第五章〜):167.7cm

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