31(知沙) 一強独裁
――ばぢんっ!!
ボールと腕とが衝突する激しい音が、また体育館に響く。
「っ――!?」
着地した露木凛々花さんが、自分より先に足元に落ちたボールを視線で追う。
「も、もう一回お願いします!!」
「おい、露木、順番を守れ!!」
露木さんを押しのけて、今川颯さんがアタックラインに立つ。
「栄っ! 平行頼む!」
「はいなー」
セッターの位置から応えるのは、栄夕里さん。栄さんは籠からボールを取り出して、山なりのボールを今川さんに放る。今川さんはそれをオーバーハンドで栄さんに返し、トスを呼ぶ。
「レフト!!」
「ほいっ、頑張りやー」
とんっ、と栄さんは綺麗なジャンプトスで、速さも高さもほどよいトスを上げる。今川さんは彼女独特の素早い踏み込みから、力強くジャンプして、ボールを叩く。
――ばぢんっ!!
しかし、ボールはネットを越えることなく、真下へ落ちる。
170センチを越える超大型新人である、露木さんと今川さん。
その二人のスパイクは、一人のブロッカーによって悉く跳ね返されていた。
小田原七絵――ナナちゃん。170超の露木さんと今川さんが見上げるほどの長身を誇る二年生。全国大会の経験もあって、栄さんの話では全国でもかなりの有名人だという超々弩級の怪物。
「くっ……!! もう一本!!」
「ちょ、今川、後ろに回りなさいよ!!」
もはや脊髄反射なのか、止められるたびに「もう一本!」とトスを呼ぶ今川さんを、同じ脊髄反射を持つ露木さんが強引に下がらせる。そして、次の挑戦者は、
「レフトー。えっと……オープーン。お願い、します」
西垣芹亜さん。新入生五人の中で最長身の彼女もまた、繰り返しナナちゃんに挑んでは、跳ね返されていた。
「ほいっ、どぞー」
ぼむっ、と栄さんは西垣さんにバウンドパスを送る。というのも、彼女は初心者でオーバーハンドやアンダーハンドができないため、栄さんへのパスは下投げで行うのだ。西垣さんはボールを受け取ると、それを栄さんに向かってぽーんと放った。
しゅっ、と栄さんがジャンプトス。ボールは大きく弧を描いてぴったりレフトサイドに飛んでいく。
「えいっ」
――ばぢんっ!!
西垣さんのスパイクも、不発に終わった。
「ふわあ……」
西垣さんは驚くでも悔しがるでもなく、雄大な風景を前にしたときのように感嘆の溜息を漏らした。よっぽど気に入ったのか、彼女はまたささっと挑戦者の列に戻る。
そして、順番は露木さんに戻る。
ナナちゃんの一枚ブロック相手に有効打を決められれば勝ち――本来予定していた入部試験は、まだ続いていた。ちなみに、瀬戸希和さんは一本打ってブロックされた時点で、挑戦をやめてしまった。今は私とボール止めをしている。栄さんは挑戦する気がないのか、ずっとセッターとしてトスを上げている。瀬戸さんが抜けてからは、露木さんと今川さんと西垣さんの三人が順番に当たっては砕けていた。
――ばぢんっ!!
――ばぢんっ!!
――ばぢんっ!!
って、さっきから全部シャットアウト……ナナちゃん容赦ないなあ……。
「っと、ボールなくなってしもた」
また一回りしたところで、ボール籠が空になった。私たちは全員でボールを拾う。露木さんと今川さんが競うようにボールを拾い集めてくれたので、あっという間に籠は満タンになった。
「「さあ、もう一本!!」」
すぐにアタックラインに戻って、声を上げる二人。と、静観していたキャプテンの星賀志帆ちゃんがぽんっと手を叩く。
「お楽しみのところ悪いけれど、いい時間なので、次の一本でラストにしよう」
「「っ……わかりました! お願いします!」」
「ほな、行くでー」
この一本で決める――! と意気込む露木さんと今川さん。他方、これでおしまいかあ、と名残惜しそうな西垣さん。三者二様の挑戦は、しかし、デジャヴのように、それまでとまったく同じ結果になった。
――ばぢんっ!!
――ばぢんっ!!
――ばぢんっ!!
もう何本目かわからない、ナナちゃんのシャットアウト。露木さんと今川さんは肩で息をしながら膝をついた。
「「ううっ……!! ありがとうございました……」」
「……あなたたちは、まず基礎を固めたほうがいい」
ひれ伏した露木さんと今川さんに、ナナちゃんはぽつりとそんなアドバイスをする。
「はふう……。ありがとうございました」
「あなたは……あなたも、うん。ひとまずは、基礎を固めてから」
汗を拭って笑顔を見せる西垣さんに、またナナちゃんはぽつりとアドバイス。スポーツで『基礎を固める』と言えば、それこそ基礎的な助言だけれど、小学生の頃からバレーをやっていて、全国大会の経験もあるナナちゃんが言うと重みが違う。
露木さんや今川さんは今すぐ試合に出ても戦えそうなくらい強く見えるが(実際、ミニゲームでは三坂総合の人たちといい勝負をしていたし)、それでも、ナナちゃんの目線では初心者の西垣さんと同等――基礎が甘いって評価になる。
戦ってきた舞台が、違うのだ。
「ところで、あなたは打たないの?」
ナナちゃんは栄さんに声を掛けた。栄さんは「うーん」と渋ったが、志帆ちゃんが「せっかくだ。一本だけでも打ってみたまえ」と後押ししたことで、「ほな」とレフトサイドへ向かった。そんな栄さんを、入れ替わりにセッターの位置に入った志帆ちゃんが呼び止める。
「ライトじゃなくていいのかな?」
「あっ、そうですね……」
「ん、なに? 左打ちなの?」
「ええ、まあ。小田原さんは逆サイドでもええですか?」
「うん。構わないけど……」
ナナちゃんはのそのそと動き出す。栄さんはたったっと走り出す。戦いは、ナナちゃんにとってのレフトサイド、栄さんにとってのライトサイドに、その場を移す。
私はその様子を見ながら、栄さんについて少し考えを巡らせる。今の彼女の『逆サイドでもいいですか?』という発言は、なかなか聞き捨てならない一言だ。栄さんはナナちゃんのことを知っている――つまり、ナナちゃんがライトブロッカーであることを知っている。そのことと、自分が左打ちであることを天秤に掛けて、彼女はナナちゃんの土俵で戦うことを選んだのだ(志帆ちゃんが最初に説明したように、どこから打つかは新入生の自由で、選択権は栄さんの側にある)。
それは、敬畏の表れか。
或いは、自負の表れか。
やがて、栄さんもナナちゃんも、それぞれの位置に構える。
「ほな、お願いします」
「うん」
「星賀さん、トスはセミくらいでお願いします」
「了解した。では、行くぞ――」
志帆ちゃんが、とーんっ、と軽く正確にボールを放る。
その、直後、
――びりっ。
なんの前触れもなく、それは伝播した。
緊張感、と言えばいいのだろうか。
もっと有り体に、殺気、と言えばいいのだろうか。
トスが上がった瞬間、栄さんとナナちゃんを含む空間が、そこだけどこか近くて遠い場所のように、私たちのいる場所から切り取られた。
見ていることしかできない、入り込めない領域。
ちょうど、テレビ画面の中で行われる、プロの試合のような――。
志帆ちゃんも、他の一年生も、それぞれのセンサーで何かを感じ取ったのだろう、息をするのも忘れて、食い入るように二人の姿を見つめていた。もちろん私も。
たっ、
と栄さんが踏み切りを始める。ナナちゃんはじっと栄さんを見据え、きゅきゅ、と小さくサイドステップをして、位置とタイミングを計る。その様子を視界の端で捉えた栄さんが『何かを仕掛ける』。細かいことは私にもわからない。ただナナちゃんのほうもそれに合わせて『何らかの対処をする』。ざっくり言えば駆け引きだ。二人の勝負は既に始まっていた。
時間にして、ほんの一秒あるかないか。
常人には全容を把握できない牽制戦が終わり、
たんっ、
と二人は跳び上がる。
戦いの場は空中へ。宙でのやり取りはさらに目まぐるしく一瞬のこと。そして結果はすぐに出た。
――ばぢっ!!
私の素人目では、栄さんが打って、ナナちゃんがそれをブロックした、としか描写できない交錯。
見ると、栄さんが打ってナナちゃんの手に当たったボールは、ぽーん、と宙に舞い上がっていた。ネットは越えていない。けれど、即死でもない。だからだろう、直後に着地した二人は、まだ殺気を放つことを止めなかった。どころか、まるで試合の最中のように、ナナちゃんは次の攻撃に備えて視線を巡らし、栄さんは目にも留まらぬ速さでアタックラインまで下がっていた。
しかし、二人の他に動ける選手は、もちろんコート内にいなくて、宙をさ迷ったボールはほどなくコートの真ん中に落ちた。
ぼむっ、ぼんっ、ぼっ、ぼぼぼ……。
しんっ、と静まり返った体育館に、ボールの跳ねる音だけが響く。
栄さんとナナちゃんは、ボールが落ちた時点から動くのをやめて、互いにじっと相手のことを見つめていた。
ごくりっ、と私は唾を飲む。志帆ちゃんも、思うところがあるのか、積極的に二人の空気を破ろうとはしない。
はたして、先に口を開いたのは、ナナちゃんだった。
「あなた……この県の一年生ではないよね? あなたみたいな人がいる中学が県大会に出られないわけがない。そしてあなたみたいな左打ちが県内にいたら、さすがに覚えてる」
栄ちゃんは「あはっ」と軽く笑う。そこで、ようやく二人を包んでいた重い空気がどこかへ消えた。
「そうですよ。ウチは隣の県から来ました」
「隣……なんていう中学?」
「獨和大附属楢木中学です」
当たり前だけど、馴染みのない中学名だった。けれど、音の響きはどことなく聞き覚えがある。ドクワダイフゾクナラギ――どこで聞いたんだったか。
「……獨和大附属……楢木……」
噛み締めるようにその名を繰り返すナナちゃん。どうやら既知のようで、ナナちゃんは珍しく驚きを顔に出していた。
「あなた、あの獨楢の出身なの?」
「はい、そうです」
「もちろんバレー部だよね? スタメン? 試合にはいつから出てた?」
「一応、小田原さんの代から出させてもらってました」
にっこり笑う栄さん。半口のまま固まるナナちゃん。そこへ、志帆ちゃんが問いを挟む。
「その獨楢というのは有名なのか、七絵?」
呼び掛けられたナナちゃんは、「ああ……はい」と頷いた。
「獨和大附属楢木――獨楢は中高一貫で、中学も高校もバレーの強豪です。それもただの強豪じゃなくて……えっと、隣の県のバレー事情はうちと違うんです。一強独裁――つまり、中高ともに獨楢が断トツで強いんです。特に高校のほうがそれが顕著で……確か四十年以上だったかな……それくらいの長い間、隣の県では、獨楢以外の高校が県一位になってないはずです」
あっ、そっか。それでなんか聞き覚えがあるんだ。一強独裁っていうくらいなら、春高バレーにも毎年出てるわけだもんね。きっとテレビか何かで名前を聞いたんだ……って!?
「栄さん、そんな強いところから転校してきたの!?」
「ええ、まあ。ただ、同じ獨楢ゆーても、中学のほうは高校ほど独裁とはいきませんけどね」
「それでも十分すごいよっ!」
「しかも、君はそこのスタメンだったそうじゃないか。それも七絵の代から」
「ええ、はい、一応」
「選抜にも出た?」
「選抜には、二年生のときと、三年生のときに二度、入れさしてもらいました」
「二年生でも出たんだ……」
ほぁ、と七絵ちゃんは小さく感嘆の声を漏らした。遅ればせながら、私もようやく栄さんのいる次元を理解し始める。ナナちゃんと同じ県選抜。つまり、栄さんは隣の県で十二本の指に入るほどの選手だったのだ。それも、二年生の時点から既に。
「ちょ、ちょっと栄、あんた県選抜だったの!?」
「それって、全国大会に出たってことだよな!?」
話を飲み込んで、にわかに大興奮する露木さんと今川さん。栄さんは軽い調子で「せやでー」と肯定した。露木さんと今川さんは二、三度瞬きをすると、ひそっ、と小声で訊いた。
「「ちなみに……ポジションは?」」
二人はわくわくとびくびくが混じり合った複雑な表情を浮かべている。それを見た栄さんは、ぷっ、と吹き出した。
「大丈夫。さすがに左利きやもん、レフトエースっちゅーことはないわ。中学時代のウチの本業はセッターやで」
「「そ、そっか……!!」」
「……でも、ただのセッターではないよね?」
「「そうなのか!?」」
ナナちゃんの指摘で、露木さんと今川さんはまた複雑な表情で栄さんに詰め寄った。栄さんは少し照れたように苦笑する。
「ええ、実はそうです。いわゆる普通の専業セッターやありません。兼業です。ウチが最高学年やった間の獨楢は、ツーセッターを採用してたんですわ」
ツーセッター――それは、バレーの戦術の一つだ。
コート内に一人のセッターという一般的なワンセッターでは、セッターが前衛の時にアタッカーが二枚になってしまい、攻撃力が下がるという弱点がある。
それを解消するための戦術が、ツーセッター。
二人のセッターを対角に配置して、片方のセッターが前衛に上がった時は、もう片方の後衛のセッターがトス役を務める。そのセッターが前衛に上がった時は、反対に後衛に下がったほうがトス役を務める。
そうして、どのローテでも後衛の選手がセッターを務めることで、常に三人のアタッカーで攻撃できるようにしているのだ。攻撃枚数が減ることがないので、理論上はワンセッターより優れたシステム。
ただし、実際は技術的な問題にぶつかって、うまくいかないらしい。トスの質やアタッカーの癖は個人によって違うから、チーム内にセッターが二人もいるというのは、セッター側にもアタッカー側にも掛かる負担が大きいのだ。
けれど、栄さんたち獨楢は、その難しいツーセッターシステムを採用して、県代表の座を勝ち取っていたという。
「なんで、半分はセッター、半分はライトアタッカーっちゅーんが、実際のとこです。やから、心配しーひんでも、レフトエースの座は取らへんよ」
栄さんがそう言うと、露木さんと今川さんはまた複雑な表情になった。たぶん、ポジション争いに発展せずに済みそうでほっとしたのと、ポジション争いに発展せずに残念に思ったのと、相反する気持ちが同時に湧いているのだと思う。
「エースの座……ああ、そういう特典だったっけ」
思い出したように、ナナちゃんがひとりごちる。結局、ナナちゃんを抜けた新入生は一人もいなかった。史上最難関入部試験は本当に最難関だったのだ。
「どうだ、七絵。君から見て、今すぐではなくとも、ゆくゆくはエースの座を与えてもいいと感じられる新入生はいたか?」
志帆ちゃんが訊くと、ナナちゃんは五人を見回して、すっ、と長い指を持ち上げる。
「露木さんと、今川さん……今日のところは、二人のどっちかですかね」
「「!?」」
名指しされるとは思っていなかったのだろう、二人は口をぽかんと開けて固まった。志帆ちゃんは「ふむ」と頷く。栄さんは面白そうに二人を眺めている。と、ずっと大人しくしていた瀬戸さんが、そろそろと手を挙げた。
「あの……エースって、普通に小田原さんじゃないんですか?」
「あっ、確かに」
瀬戸さんの発言に、西垣さんもぱふっと手を合わせる。問いに答えたのは、ナナちゃんではなく栄さんだった。
「瀬戸さんは、小田原さんのプレーしとるとこは、見たことあらへんの?」
「ああ……うん。一つ上だし、雀宮中みたいな強豪は……雲の上のことで、ちゃんと見たことはない」
「あー、やったら仕方ないか」
栄さんは納得して頷く。首を傾げる瀬戸さん。露木さんと今川さんも、口を開けたまま、視線だけをナナちゃんのほうに向ける。ナナちゃんはぼそりと真実を伝えた。
「私の本業もセッターだよ」
「「「セッター!!?」」」
同時に驚きの声を上げる瀬戸さんと露木さんと今川さん。まあ、ナナちゃんの身長でエースどころかアタッカーでもないって、知ってなきゃわからないことだよね。
「うん、セッター。ワンセッターの専業セッター。だから、基本、私は攻撃に参加しない」
「「「もったいない!!!」」」
「いやいや、キミたち、逆や逆。小田原さんはセッターやからこそ恐ろしいねん。言うたやろ、並み居る強豪の主砲を沈めた『エース殺し』て。大体どこもエースっちゅーたらレフトが多い。それを、セッターでライトブロッカーの小田原さんが悉く止めんねん」
かなりの実感と、一匙のおどろおどろしさを込めて、栄さんは言う。
「露木さんと今川さんならわかるやろ……? キミらが前衛におる間中、ずーっと小田原さんが目の前におったらどや? 泣いてまうやろ?」
「「……っ!!?」」
さっ、と二人の顔が青ざめる。二人はぶるるっと身を震わせて、ナナちゃんを見た。
「……いや、まあ、実際、私の知ってるエースは、私に止められたくらいで泣き言は言わないよ」
胸に沁みるような低音でそう言うと、ナナちゃんは露木さんと今川さんをじっと見据えた。
エースの名を背負うに相応しい資質があるかどうか、見極めるように。
そして、ナナちゃんは言う。
「あと、そう……エースの座は他人に与えられるものじゃないから」
瞬間、露木さんと今川さんは雷に打たれたように目を丸くした。
けど、それもほんの数秒のこと。ほどなく二人の硬直は解け、驚きに開いていたその口が、力強い笑みの形に閉じていく。
同時に、ぼっ、と二人の瞳に炎が灯る。
鮮烈な赤い炎と、鮮鋭な青い炎。
ナナちゃんは、そんな二人が眩しかったのか、少し目を細めた。
と、そのとき。
――ぐうぅぅ。
かなり大きめの腹虫さんが鳴いた。飼い主は、ナナちゃん。
「そうだった……朝ご飯食べずに来たんだ」
ナナちゃんはこれっぽっちも恥ずかしがらずに言う。露木さんや今川さんは「えっ」と声を漏らした。渾身のスパイクを文字通り朝飯前でシャットアウトされ続けていたことになるのだから、それはそうだろう。
「星賀先輩、入部試験が終わったら、歓迎パーティでしたよね?」
どうやらナナちゃんはお菓子を当てにしていたらしい。志帆ちゃんは「ああ」と頷いて私に目配せし、それから新入生に向き直る。
「みんなお疲れ様。入部試験はこれにて終了とする。結果は七絵の言った通りだ。このあと、新入生は休憩。しっかりクールダウンして、汗をかいた人は冷えないように着替えるか、上着を着ておくように。私と七絵は用具の片付け。知沙は歓迎パーティの準備。よろしいかな?」
「「はい!」」
「パーティ開始は15分後が目標。というわけで、一旦締めよう。ありがとうございました」
「「ありがとうございました!」」
その場で一礼して、各々パーティに向けて動き出す。
私はまずお湯を沸かすためにポットのところへ走る。それが済むと、レジャーシートを広げたり、コップを用意したり、お菓子やジュースを並べたりしていく。
その、最中。
私は片付けをする志帆ちゃんの横顔を見た。
ナナちゃんと、手伝いを申し出てくれた瀬戸さんと一緒にネットを折り畳んでいく志帆ちゃんは、とても楽しそうに笑っていた。
それは、ポスター作りの時に、「そうだ、入部試験をしよう」と言い出したときと同じ顔。
きっと、また、何か思いついたのだ。
たぶん、私が聞いたら、きっとびっくりするような何かを。
その時のことを想像すると、今からどきどきしてしまう。
はてさて、志帆ちゃんってば、今度は一体全体どんな企画を持ってくるのやら。
今はまだ、その内容を、志帆ちゃん以外の誰も知らない。




