22(夕里) 種明かし
スコア、4―4。
今川さんの横っ飛びスパイクで同点。鴨志田さんに「やり過ぎ」っちゅー顔された。確かに、ちょっと速かったんは否めない。もうほぉーんの少しだけ短めならぴったりやったんやけどな。そしたら、今川さんも壁に熱烈ハグせずに済んだやろ。
なんてことはおくびにも出さず、ウチは全部計算通りっちゅー顔で、壁との逢瀬から戻ってきた今川さんを迎えた。
「ナイスキー、今川さん。トスどやったー?」
今川さんは食べたことのない珍味を咀嚼するみたいに首を傾げ、ぽつりと言った。
「よくわからないが、お前がすごいのはわかった」
「そらどーもー」
そこへ、露木さんも近付いてくる。
「ねえ、何をしたのよ、栄夕里?」
露木さんの質問を傍で聞いた今川さんも、視線で同じことを訴えてくる。
ほな、ここで種明かしといきましょかー。
「ウチな、わかるんよ」
「わかるって、何がだ?」
「その人の得意なこととか、強みとか」
「どういうこと……?」
今川さんと露木さんは釈然としていないご様子。ウチはまず露木さんに言った。
「例えば、露木さんは『縦』に強い」
「縦?」
「露木さんのジャンプ力は、露木さんが思うてる以上に一級品やってこと。やから、ウチは練習よりちょっとだけ高いトスを上げてん。踏み込んだときになんか違和感あったやろ?」
「そ、そうね。なかなかボールが落ちてこないなって」
「いつも通りに跳んだら届かへんかも、って思たやろ?」
「思ったわ。だから、こう、大きく腕を振って――」
「跳んでみたら、見える景色変わったやろ?」
「ええ……いつもよりブロッカーの手とか、相手コートもよく見えて――って、それがあんたの狙いだったの!?」
「正解」
ぐっ、とウチはサムアップしてみせる。露木さんは口を開けたまま動かなくなった。ウチは次に今川さんに向き直る。
「ほんで、今川さん。キミの場合はな、いわゆる『横』に強いねん」
「横……だから、移動攻撃だったのか?」
「せやせや。いつもより大股に踏み込まへんと届かないくらい、トス速かったやろ?」
今川さんは眉を顰めて、じっとウチを見つめた。そして、低い声で訊く。
「そんなの……わたし自身でも意識してなかったこと、栄はいつ気づいたんだ?」
「自分のことって案外自分ではわからへんもんやでー」
「はぐらかさないでよ、栄夕里」
露木さんも迫ってくる。ほんまキミら仲良えな、っていうと喧嘩し出すからウチは素直に答える。
「いつ、って言えるほどはっきり気付くわけやないよ。パスの動きとか、スパイクのフォームとか、そういう身体の使い方のクセ、あと筋肉のつき方を見てるうちに、なんとなーくわかってくるんよ」
露木さんと今川さんは、訝しげに目を細めて、揃って口を開いた。
「「あんた(お前)何者?」」
まあまあ、とウチは質問タイムを強引に打ち切る。
「今はウチのことより、このゲームに勝つんが大事やろ。気になることは入部したあとにでも聞いてーな」
確かにそうね(だな)――と納得してくれた二人は、はっ、と隣にいる相手の存在に気付いて、また口を揃えて言う。
「「こいつは入部しないけどね(な)!」」
はいはいわかっとるわかっとる、とウチは二人を宥める。
「たーだ、雑念あるとまたあっちのお姉さんにどやされるで?」
ウチは鴨志田さんを横目に見る。鴨志田さんは微笑みながら軽く手を振ってくれた。二人にはそれが効果覿面だったようで、すぐにいがみ合いオーラを消して、びしっ、と背筋を伸ばした。
「っらああ、もう一本来いやああ!!」
在原さんから咆哮とともにボールが送られてくる。その声で、二人とも完全にモードが切り替わり、互いのポジションへ急ぐ。
ウチはボールを受け取って、サービスゾーンに向かう露木さんにパス。
「ナイッサー一本! 逆転するでー!」
「「おうっ!」」
さて……今度は何したろーかなー。




