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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第五章(明正学園) VS三坂総合高校
162/374

22(夕里) 種明かし

 スコア、4―4。


 今川いまがわさんの横っ飛びスパイクで同点。鴨志田かもしださんに「やり過ぎ」っちゅー顔された。確かに、ちょっと速かったんは否めない。もうほぉーんの少しだけ短めならぴったりやったんやけどな。そしたら、今川さんも壁に熱烈ハグせずに済んだやろ。


 なんてことはおくびにも出さず、ウチは全部計算通りっちゅー顔で、壁との逢瀬から戻ってきた今川さんを迎えた。


「ナイスキー、今川さん。トスどやったー?」


 今川さんは食べたことのない珍味を咀嚼するみたいに首を傾げ、ぽつりと言った。


「よくわからないが、お前がすごいのはわかった」


「そらどーもー」


 そこへ、露木つゆきさんも近付いてくる。


「ねえ、何をしたのよ、さかえ夕里ゆうり?」


 露木さんの質問を傍で聞いた今川さんも、視線で同じことを訴えてくる。


 ほな、ここで種明かしといきましょかー。


「ウチな、わかるんよ」


「わかるって、何がだ?」


「その人の得意なこととか、強みとか」


「どういうこと……?」


 今川さんと露木さんは釈然としていないご様子。ウチはまず露木さんに言った。


「例えば、露木さんは『縦』に強い」


「縦?」


「露木さんのジャンプ力は、露木さんが思うてる以上に一級品ピカイチやってこと。やから、ウチは練習よりちょっとだけ高いトスを上げてん。踏み込んだときになんか違和感あったやろ?」


「そ、そうね。なかなかボールが落ちてこないなって」


「いつも通りに跳んだら届かへんかも、って思たやろ?」


「思ったわ。だから、こう、大きく腕を振って――」


「跳んでみたら、見える景色変わったやろ?」


「ええ……いつもよりブロッカーの手とか、相手コートもよく見えて――って、それがあんたの狙いだったの!?」


「正解」


 ぐっ、とウチはサムアップしてみせる。露木さんは口を開けたまま動かなくなった。ウチは次に今川さんに向き直る。


「ほんで、今川さん。キミの場合はな、いわゆる『横』に強いねん」


「横……だから、移動攻撃ブロードだったのか?」


「せやせや。いつもより大股に踏み込まへんと届かないくらい、トス速かったやろ?」


 今川さんは眉を顰めて、じっとウチを見つめた。そして、低い声で訊く。


「そんなの……わたし自身でも意識してなかったこと、栄はいつ気づいたんだ?」


「自分のことって案外自分ではわからへんもんやでー」


「はぐらかさないでよ、栄夕里」


 露木さんも迫ってくる。ほんまキミら仲()えな、っていうと喧嘩イチャイチャし出すからウチは素直に答える。


「いつ、って言えるほどはっきり気付くわけやないよ。パスの動きとか、スパイクのフォームとか、そういう身体の使い方のクセ、あと筋肉のつき方を見てるうちに、なんとなーくわかってくるんよ」


 露木さんと今川さんは、訝しげに目を細めて、揃って口を開いた。


「「あんた(お前)何者?」」


 まあまあ、とウチは質問タイムを強引に打ち切る。


「今はウチのことより、このゲームに勝つんが大事やろ。気になることは入部したあとにでも聞いてーな」


 確かにそうね(だな)――と納得してくれた二人は、はっ、と隣にいる相手の存在に気付いて、また口を揃えて言う。


「「こいつは入部しないけどね(な)!」」


 はいはいわかっとるわかっとる、とウチは二人を宥める。


「たーだ、雑念あるとまたあっちのお姉さんにどやされるで?」


 ウチは鴨志田さんを横目に見る。鴨志田さんは微笑みながら軽く手を振ってくれた。二人にはそれが効果覿面だったようで、すぐにいがみ合いオーラを消して、びしっ、と背筋を伸ばした。


「っらああ、もう一本来いやああ!!」


 在原ありわらさんから咆哮とともにボールが送られてくる。その声で、二人とも完全にモードが切り替わり、互いのポジションへ急ぐ。


 ウチはボールを受け取って、サービスゾーンに向かう露木さんにパス。


「ナイッサー一本! 逆転するでー!」


「「おうっ!」」


 さて……今度は何したろーかなー。

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