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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第五章(明正学園) VS三坂総合高校
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20(希和) 身の程

 コートの外に出て、私はほっと一息つく。バレーのメンバーチェンジは無制限じゃない。ベンチ・コート間を一往復した選手はそれ以上の移動ができなくなる。つまり、私がもう一度コートに投入されることはないってこと。


 ここから先は見物しているだけでいい。気楽なもんだ。


「ありがとう、瀬戸せとさん」


 だらっと突っ立っていると、スコアボードのほうから星賀ほしか志帆しほさんに話し掛けられた。なんのことですか、と私はとぼけてみせる。星賀さんは微笑んだ。


「君は謙虚なんだな」


「身の程は弁えていますので」


「それは……」


 じっ、と星賀さんは私の目を覗き込んでくる。私はその視線から逃げるためにコートに向き直った。星賀さんはなかなか目を離してくれなかったが、露木つゆき凛々花(りりか)にトスが上がると、星賀さんもそちらを見ないわけにはいかなかった。


「ほう……」


 そんな呟きが横から聞こえる。


 私は、はぁ、と小さく溜息。


 今川いまがわはやての安定感のあるサーブカット。さかえ夕里ゆうりの百点満点のオープントス。そしてフィニッシュは露木凛々花。


 最初からその調子でやっとけよ……と、内心で毒づく。同時に、


 ばんっ!


 と、中学時代はコートの中で聞いた、息が止まるような打音。


「……ほう」


 また星賀さんが呟く。先程は驚き、今度は喜びを滲ませて。


 私のなんちゃって移動攻撃ブロードなんかとは比較にならない、だましもかたりも皆無の一撃。


 この場で最長身の西垣にしがきが抜けなかった二枚の壁(ブロック)を、真っ向勝負で上から打ち抜いた。


 そう……これが米沢中のエース――〝薄明(Epical)英雄(Lyrical)〟こと、露木つゆき凛々花(りりか)の本領だ。


 私の知る範囲、ここ数年の県庁地区で、間違いなく五本の指に入るアタッカー。


 そして、その露木凛々花と肩を並べるアタッカー――千川中のエース、〝黎明(Zingy)風雲(Windy)〟こと今川颯が、今、同じコートにいる。


 はらり、とスコアボードを更新する星賀さん。


 現在、3―4。


「瀬戸さん」


「ん?」


 唐突に話しかけてくる西垣にしがき芹亜せりあ。なんだ?


「瀬戸さん、なんだか、嬉しそう」


 道端に綺麗な花を見つけた、みたいな笑みを浮かべて西垣が言う。私は顔を隠すように眉間を押さえた。


「……まあ、否定はしないわ」


 そう。実際に喜ばしいことなのだ。あの二人が本来の実力を出してくれれば、万が一にもまた私にお鉢が回ってくることはないわけだからね。


「ふふっ……」


 微笑わらわれた。なんなのだ。なにが可笑しいのだ。


 それから西垣は、かなりしばらくの間、一人でふふふと小さく笑っていた。

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