7(志帆) 新入生歓迎
新歓ポスターを貼ってから一週間と少しが過ぎて、ようやく仮入部期間がやってきた。定期休みと私の都合で、女子バレー部の活動は今日の土曜日にずれ込んだ。
普通、どの部活も学校が休みの日は新歓活動をしていないのだが、ただ週明けを待つのもどうかと思い、イベントを盛り込んでみた。
入部試験という名の、お菓子パーティ。
「『挑戦券』、うまくいったみたいだね! 五枚も減ってるなんて!」
飛び跳ねそうなほど嬉しそうにそう言うのは、早鈴知沙。我が明正学園女子バレーボール部の貴重なマネージャーである。
「まずまずの成果だな」
私は正直な感想を述べる。五人というのは、思っていたほど少なくはないし、かといって多いわけでもない。予想の範囲内だ。
ただ一つ気になることがあるとすれば、五枚の『挑戦券』のうち、四枚が入学式の翌日に既に千切られていたこと。冷やかしや悪戯にしては早過ぎる。入部希望者だとしても早過ぎる(五枚のうち残り一枚は、入学式を終えた次の週に、思い出したように千切られていた。恐らくこれが一般的なタイミングだ)。
それがどういう類のものかは蓋を開けてみないとわからないが、一波乱くらいあるかもしれない。そんな気がする。
「ところで、知沙、お菓子のほうは?」
「たんまり作ってきたよっ! 新入生があと五人くらい増えても大丈夫!」
そう笑って言って、知沙は大きめのバスケットを胸の前に掲げた。私は顔を近付けて、すんすんと鼻を利かせる。
「うん、いい匂い。ただ、広げるのは後にしようか。あ、それと、生徒会室からポットと、ついでにコーヒーと紅茶も拝借してきたから、お菓子を出すときに様子を見て沸かそう」
「用意いいね、さすが志帆ちゃん!」
「職権乱用だがね」
苦笑する私。知沙はそんな私に微笑を返して、体育館の壁際――私が持ってきたポットの横に、お菓子のバスケットを置く(ちなみに、中身はクッキーとパウンドケーキだ)。また、お煎餅などの塩っぱい食べ物、冷たいジュースやお茶なども事前にスーパーで購入済みで、それらが入った買い物袋も同じ場所に置いてある。今日で恐らく全部は食べ切れないので、これらの既製品の一部はポットの謝礼として生徒会室に還元するつもりだ。
「……ところで、ナナちゃんは?」
私たちの他は誰もいない第一体育館をきょろきょろと見回しながら、知沙は不安そうに言った。私は「いつものやつだろう」と肩を竦めてみせる。
「朝一でメッセージは送ってみたんだが、まだ返信がない。ま、七絵は本当に体調悪いときは逆に朝早く連絡してくるから、その点は心配要らないと思う」
「それは……でも、入部試験的にマズくない?」
「もう一回送ってみて、それでも返信がなかったら別メニューにするさ。任せておけ」
私は知沙の見ている前で携帯を操作し、七絵にメッセージを送る。返ってくるか否かは半々といったところだろう。私は携帯をしまい、知沙を手招きして用具室へ向かう。
「とりあえず、私たちだけで準備を始めよう。ネットを張るぞ」
「はーい」
現在、時刻は9時24分。私と知沙は、余裕を持って新入生歓迎の準備を始めた。




