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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第四章(城上女子) AT石館商業高校
137/374

125(ひかり) 試合結果

 ブロック大会北地区予選、決勝戦。


 石館いしだて商業しょうぎょうVS玉緒(たまのお)第二だいに


 それは、決勝戦に相応しい、とても見応えのある試合でした。


 攻撃の石館商業と、守備の玉緒第二。


 両校の中核である、館商のエース・藤本ふじもといちい先輩と、玉緒第二のリベロ・緋上ひのうえ真直ますぐ先輩の直接対決において、緋上先輩の代名詞である最終防衛線(Red Line)を抜かれたときは、とても心配になりましたが……。


 しかし、私が案じるまでもなく、タイムアウトできっちり立て直した緋上先輩は、その後も的確な指示と不撓不屈のプレーで、玉緒第二の〝最終防(Red Line)衛線(Keeper)〟として活躍されました。


 館商のほうは、序盤に猛威を振るった藤本先輩が、その後はあまり表立った攻撃をしてこなくなり、むしろ藤本先輩以外の先輩方アタッカーにトスは集中しました。


 取りつ取られつ、両者譲らぬ攻防の中、より着実に得点を重ねていったのは、石館商業。


 強力なサイド攻撃と、それによって生まれた隙を穿つセンター線。


 藤本先輩を半ば温存する形でも、その攻撃力は、さすがの北地区一位。


 試合結果は、


 第一セット、25―21。


 第二セット、25―19。


 石館商業高校が、ストレートで優勝を決めました。


 振り返ってみると、高さで勝る館商が、地力の差で押し切った――そんな試合内容でした。


 他方、隣のBコートで行われていた三位決定戦は、こちらもストレートで、修英しゅうえい学園の勝利。一人だけそっちを見ていた美森みもり先輩は大満足のご様子でした。


 ブロック大会北地区予選。


 優勝:石館商業高校。


 二位:玉緒第二高校。


 三位:修英学園高校。


 四位:石館第二高校。


 以上の四校が、二週間後に行われる県大会に、北地区代表として出場します。


 決勝が終わると、既に試合を終えていた修英学園や石館第二、それに、応援席ギャラリーで観戦していた他の参加校から、石館商業と玉緒第二に惜しみない拍手が送られました。


 もちろん、偵察に来ていた私たちも、同様に拍手を送ります。


 あとは、閉会式を残すのみ。応援席ギャラリーに残っていた選手プレイヤーが一斉に動き出します。参加校でない私たちは、その流れを邪魔しないように避けて、ほとぼりが冷めたところで本日のまとめに入ります。


「さて、だんだん人も減ってきたね。みんな、今日はどうだった?」(立沢たちさわ先輩)


「面白かったよー!」(油町ゆまち先輩)


「熱かったっス!」(北山きたやまさん)


「楽しかったです!」(宇奈月うなづきさん)


「来てよかったです」(私)


「参考になりました」(霧咲きりさきさん)


「とても勉強になりました」(藤島ふじしまさん)


「みんな頑張ってたね」(市川いちかわ先輩)


「インハイ予選が待ち切れないですぅ!」(岩村いわむら先輩)


「あぁー受験勉強に戻りたくねえ★」(美森先輩)


「二浪したいんですか?」(立沢先輩)


 立沢先輩は、美森先輩に冷たい視線を送ったのち、私たちに暖かい微笑みを向けます。


「それぞれ収穫があった、と受け取っていいのかな。企画した甲斐があったよ」


 そのとき、立沢先輩の携帯が鳴ります。試合中はマナーモードだったのを、いつの間にか通常モードにしていたようです。


「……みなみ五和いつわも、中央地区予選を一位で抜けたって」


「おおっ、おめでたいっス!」


「言っておくけど、インハイ予選ではみんな敵だからね?」


 ふふっ、と微笑みつつも、念を押すように立沢先輩は言います。


「今日の偵察で、北地区のレベル、相対的に県大会のレベルも、わかってくれたと思う。それを踏まえて、来週のゴールデン合宿までに、みんなで『目標』を決めようと思います」


「目標、ですか?」


「うん。個人の目標と、チームの目標。できる限り、具体的に」


礼亜れいあちゃんの代のチーム目標は、『県ベスト8』だった。達成……と言えば、達成した」


「私たちの代は『県大会出場』だったね。私個人では『バックトス克服』。残念ながら、どっちも叶わなかったけどさ★」


「と、いった感じのことをね。次の全体ミーティングまでに、それぞれ、自分がどうしたいのか、このチームで何をしたいのか、を考えてきてください」


 私たちを見回す立沢先輩。私たちも、互いに目配せし合って、簡易的な意思の疎通を計ります。


「参考までに、わたしが掲げようとしているチーム目標を、この場で言っておく」


 立沢先輩は、目を活き活きと輝かせて、宣言します。


「『全国大会インターハイ出場』」


 語気を強め、立沢先輩は言います。


「わたしは、あなたたちなら、その可能性があると思っている。南五なんいつ館商だてしょう、そして音成おとなる女子を超えて、この県の頂点にして中心――五年連続県一位、法栄大ほうえいだい立華りっかに、手が届くと思っている」


 不意に出てきたその高校名に、どくんっ、と血が廻り、身体中が熱くなります。


 日輪(頂点)にして、心臓(中心)


 法栄大附属立華高校。


「と言っても、みんな法栄大立華がどんな高校か知らないよね。興味がある子は言って。新人戦の録画映像を見せてあげる」


 なんと。録画映像そんなものまで持っているんですか。焼いてください。


「新人戦は決勝の相手が音成女子だったんだけどね。間違いなく度肝を抜かれると思うよ。特に鞠川千嘉マリチカと法栄大立華のリベロの――」


 ぴたっ、と突然に、立沢先輩の動きが停止します。


 誰かが超能力で時間を止めたわけでは……もちろんなく、立沢先輩は半開きの口のまま、ゆっくりと、視線を私に向け、


「くるみー先輩っ!」


 ずずいっ、と立沢先輩の前に進み出たのは、宇奈月さん。


「私、なんだかお腹が空いてきました! みんなでどこか食べに行きませんか? 今日の試合のことも振り返りたいですし! ねっ、みんなはどう?」


 宇奈月さんはそう言って北山さんに視線を向けます。


「自分もご飯行きたいっス!」


 そこからは、連鎖反応。


「わ、私も、みんなが行くならっ」(藤島さん)


「あたしも、このまま帰るのはなんだなって思ってた」(霧咲さん)


「いいねー! じゃあ来る途中にあったファミレスとか?」(油町先輩)


「あそこは……たぶん、閉会式終わったら館商とかとバッティングするよ。駅前まで戻れば他にもお店あるから、そっちがいいと思う」(市川先輩)


「駅前のことならお任せでぇす!」(岩村先輩)


 そうやってみんなが賑わい立つ中、立沢先輩だけは、ぽかんと私を見つめたままです。


「というわけなんですけど、くるみー先輩とひかりんはどうします?」


 にこにこ、と私たちに笑顔を見せる宇奈月さん。立沢先輩は、宇奈月さんと私を一回ずつ見て、ようやく口を閉じ、ばつが悪そうにぽりぽりと頬を掻きます。


「ああ……わかった。わたしも、もちろん行く」


「私も行きます」


「おっけー、決まりっ!」


 ぱちんっ、と宇奈月さんは両手を合わせます。その無邪気なにこにこ顔に流されて、立沢先輩は諸々のことを有耶無耶にし、足元の鞄を持ち上げました。


「じゃあ、ひとまず移動しよう。万智まちしずか、手頃なお店を教えて。席があるかどうか確かめる」


「それくらい私がやりますよぉ。胡桃くるみさんはみんなをよろしくお願いしまぁす」


「う、うん」


 立沢先輩は、私を一瞥しますが、ひとまずみんなの先頭に立って歩き出します。私もそれに続きます。


 かくして、本日の偵察は終了。


 大会会場である石館商業高校を後にした私たちは、ほのかに夜の気配が漂う中、元来た道を石館駅へと歩いていきました。

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