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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第四章(城上女子) AT石館商業高校
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121(瑠璃) ジャンプサーブ

 しずねえが見ている決勝戦。大活躍してしずねえの好感度を大幅アップさせる予定が、ここまで、オールいちいワンマンショー。


 いやいかんでしょ、これ。私には手に取るようにわかる。今頃ギャラリーで、しずねえは他のメンバーにいちいが如何に凄いかを語ってるに違いないのだ。うぅ……「藤本ふじもとさんはね、すごいんだよ」ってしずねえの優しい声が脳内再生される。


 なぜ! なんで私のしずねえ攻略イベントでいちいがフラグ乱立しているんだよ!


 そう思っていちいの僕様ローテでぐいぐい位置ポジションを攻めてみたけれど、いちいに睨まれた上に千里センリさんに「いちい君が下がったら上げてやるから」とトスしない宣言される始末。


 そしていちいがお得意のフェイントで決め、迎えた、いちいのジャンプサーブ。


 どんだけ一人で稼ぐつもりなんだ……あいつ。


 笛が鳴り、いちいは一呼吸置いて、ボールをトス。


 静寂の中で(館商うち応援席ギャラリーは心得ているので、この時だけは「せーのっ!」とか「ナイッサー」とか言わない)、いちいは助走し、フルパワーで床を蹴って、そして、


 ぱあんっ!!


 音速を越えたかと思うよう打音を響かせ、超スピード超ドライブのサーブが玉緒たまのお第二を強襲。


 向こうは長谷川はせがわ香弥かや前衛フロントにいるので四人レシーブ体制。たとえ五人いても決まるときは決まるが、さて果たして。


 ばんっ!


「っ――娃佳あいかさん!」


 BR(バックライト)付近にいた緋上ひのうえ真直ますぐさんが、気合の横っ飛び(フライング)! 腕を弾かれながらも上に上げた――否、上に上げたところじゃない。すごいなあの人……いちいのジャンプサーブをBカットまで持っていったぞ。


「ナイスレシーブ、真直ちゃん!」


 少しネットから離れているけれど、弾道が高いからコンビに支障はないだろう。使おうと思えば香弥だって使える。


 どこ来る? 本命、最上もがみ瑶子ようこさん。次点、香弥。田村たむら真琴まことさんのライトは見てから跳べば間に合うはず。


 ぽんっ、と倉知くらちさんの弾むようなトス。上げた先――Aクイック、香弥だ!


「よっ……!」


 シャットしてやる! そしてしず姉の好感度を上げる!


 ぴょんっ、と私は宙に跳び上がる。最高到達点に至る時間が短く、滞空時間が長い、我ながら理想的なジャンプ。空中で香弥の動きを見る。身体を右へ捻った――ターン打ちだな! そうはいくか!


 ふいっ、


 と私は香弥のターン方向を塞ぐ。


 が、


 ぱしんっ、


 と打たれたのは逆方向クロス


「んなっ!?」


 抜かれた! と思ったのとほぼ同時に、だんっ、とボールが床に落ちる音が聞こえた。


 スコア、5―4。


「……そんな小技(クロス打ち)を使えたとは。驚きだね」


 私が八重歯を見せると、香弥はふんっと鼻を鳴らした。


「真直のファインプレーは無駄にしない。いちい君が下がってる間に追いつかせてもらう」


 くっ、香弥(160台)のくせにちょっとカッコいいこと言って!


「こりゃあ負けてらんないねえ、瑠璃るり


「当ったり前ですよ! やっちまいましょう、明晞あきさん!」


「二人とも止めてやりますっ!」


 元館二(だてに)メンバーによるプチ争乱。ギャラリーにいるしずねえはどう思っているのだろう……っていうか、また活躍し損ねた! しかも香弥如きに出し抜かれた!


 ……ん、そう言えば。


 むざむざ抜かれて決められて、自慢のジャンプサーブを一本で切られたいちいから、睨みや嫌みの一つもない。振り返って後ろを見ると、デフォルトの不機嫌顔で既にサーブカットの位置についていた。


 まあ、いちい的には、私が香弥に抜かれたことより、自分のサーブが緋上さんに拾われたことのほうが重要度が高いんだろうから、そっちを気にしているだけ……なのかもしれないが。


 あのいちいが大人しい――それはそれで、不気味だ。


 さて、相手のサーブは田村たむら真琴まことさん。倉知さん(セッター)が上がってきたので、あっちの前衛フロントの高さは下がるが、まあセンター線()にとってはあまり恩恵がない。むしろ香弥ミドルブロッカーを釣るための囮にされかねない。玲子れいこさんが前衛フロントに上がったら完全にサイド攻撃中心になるので、ますます私の出番が減る。


 千里センリさん! 上げてくれるって言ったの、嘘じゃないですよね!? 頼みますよ!?


 私はネット際に立って、すぐ傍の千里センリさんにトスしてオーラを送る。千里センリさんは「わかってるわかってる」みたいな顔してるけど、あまり信用できない。千里センリさんはドライでシビアなセッターなのだ。情を汲んでとか、チャンスボールでとりあえず速攻とか、そういう、戦略的に不必要なことはしない。


 うぅ……ただでさえ望月もちづき炯子けいこちゃんの活躍とか、燈子とうこちゃんのギャラリー登場とかで、私の北地区最強の座が危ぶまれているというのに……。


 このまま何もせずに後衛バックに下がるのだけは! それだけはご勘弁を! お願いですよ、千里センリさんっ!

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