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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第四章(城上女子) AT石館商業高校
120/374

108(胡桃) とても控え目な拍手

 落山らくざんきたVS石館(いしだて)第二。


 県大会出場をかけた準々決勝は、まさに激戦だった。


 序盤、第三セットから投入された173センチの長身タワーセンター――石館第二の一年生、望月もちづき炯子けいこの活躍により、石館第二が先にシーソーゲームから抜け出した。


 その後、落山北が盛り返すも、再び回ってきた望月炯子の前衛フロントローテで、さらにリードを広げられてしまう。


 そこで、落山北が一度目のタイムアウト。


 気持ちを切り替えた落山北は、直後にサイドアウトを取り、ローテを回す。そして、レフト対角の片山かたやましのぶ後衛バックに下がったところで、選手交替メンバーチェンジ


 出てきたのは、140センチ台の小柄な選手。


 とおる曰く、高橋たかはし可奈子かなこという落中らくちゅう出身の二年生。レシーブが上手く、またサーブも得意であるため、中学時代にもよく後衛バックに下がった片山忍と交替をしていたという。スタメンでこそないものの、落中では準レギュラー扱いの選手だったらしい。


 その高橋可奈子は、伸びのあるフローターで石館第二のサーブカットを崩すと、三年で同じく落中出身のリベロ――真木まき志乃布しのぶと息の合った守備を見せ、味方の攻撃陣を援護。落山北に追い風を呼び込む。


 直後、落山北のアタッカー陣を苦しめていた望月炯子が後衛バックへ下がり、リベロの有沢ありさわ彩世あやせと交替してコートから姿を消す。


 そこから落山北の追い上げが始まった。じわりじわりと点差を詰め、中盤以降突き放されていた石館第二の背中を、ようやく捉える。


 20―20。


 石館第二ベンチは、しかし、追いつかれても沈黙を貫いた。その信頼に応えるように、石館第二は、冷静に立て直し、また一歩前に出る。


 20―21。


 ここで、望月炯子が前衛フロントへ。


 しかし、勢いは依然、落山北にあった。


 長いラリーからサイドアウトをもぎ取って、同点にすると、


 後衛バックに下がったキャプテン・矢吹やぶき奈央なおが、気迫のサービスエース。


 22―21。


 ついに、落山北が逆転。


 石館第二ベンチは今度こそタイムアウトを取った。


 ぴりぴりとした緊張感の中、30秒はあっという間に過ぎ、試合再開。


 そして、決着の時は、それまでの熱戦が嘘のように、至極あっさりとやってきた。




 ぴぃぃぃ――!




 長い試合の終わりを告げる、長い笛の音が鳴る。


「「ありがとうございました!!」」


 整列して一礼し、エンドラインからネットに向かう両校の選手たち。その走る様を見れば、試合を見ていない者にも、結果がわかるだろう。


 勝ったほうは、次へ向けた、力のある足取り。


 負けたほうは、ばらばらと、揃わない足並み。


 選手たちは握手を交わすと、今度は対戦相手の監督の元へ向かう。そこでまた一礼。続いて自軍ベンチに集合。監督が選手たちに一言、二言声をかける。そして、選手たちは最後にギャラリーの下に集合し、整列。声援を送っていた父兄に深く頭を下げた。


「「ありがとうございました!!」」


 応援席ギャラリーからは、健闘を称える拍手。もちろん、全国大会でよく見るような何十人もの応援団がいるわけではない。だから、拍手といっても、ほんのささやかなもの。


 そのとき、ぱちぱち、ととても控え目な拍手が、わたしの後ろから鳴った。


 振り返ると、口を真一文字に結んだ透が、泣きそうな顔で小さく拍手していた。


 送り先は、落山北だろう。


 わたしは、透がわたしの視線に気付かないうちにそっと前に向き直って、マル秘ノートに試合結果を記入する。


 ブロック大会北地区予選。


 Aコート準々決勝。


 落山北VS石館第二。


 第一セット、25―27。


 第二セット、25―23。


 第三セット、22―25。


 勝者――石館第二高校。

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