108(胡桃) とても控え目な拍手
落山北VS石館第二。
県大会出場をかけた準々決勝は、まさに激戦だった。
序盤、第三セットから投入された173センチの長身センター――石館第二の一年生、望月炯子の活躍により、石館第二が先にシーソーゲームから抜け出した。
その後、落山北が盛り返すも、再び回ってきた望月炯子の前衛ローテで、さらにリードを広げられてしまう。
そこで、落山北が一度目のタイムアウト。
気持ちを切り替えた落山北は、直後にサイドアウトを取り、ローテを回す。そして、レフト対角の片山忍が後衛に下がったところで、選手交替。
出てきたのは、140センチ台の小柄な選手。
透曰く、高橋可奈子という落中出身の二年生。レシーブが上手く、またサーブも得意であるため、中学時代にもよく後衛に下がった片山忍と交替をしていたという。スタメンでこそないものの、落中では準レギュラー扱いの選手だったらしい。
その高橋可奈子は、伸びのあるフローターで石館第二のサーブカットを崩すと、三年で同じく落中出身のリベロ――真木志乃布と息の合った守備を見せ、味方の攻撃陣を援護。落山北に追い風を呼び込む。
直後、落山北のアタッカー陣を苦しめていた望月炯子が後衛へ下がり、リベロの有沢彩世と交替してコートから姿を消す。
そこから落山北の追い上げが始まった。じわりじわりと点差を詰め、中盤以降突き放されていた石館第二の背中を、ようやく捉える。
20―20。
石館第二ベンチは、しかし、追いつかれても沈黙を貫いた。その信頼に応えるように、石館第二は、冷静に立て直し、また一歩前に出る。
20―21。
ここで、望月炯子が前衛へ。
しかし、勢いは依然、落山北にあった。
長いラリーからサイドアウトをもぎ取って、同点にすると、
後衛に下がったキャプテン・矢吹奈央が、気迫のサービスエース。
22―21。
ついに、落山北が逆転。
石館第二ベンチは今度こそタイムアウトを取った。
ぴりぴりとした緊張感の中、30秒はあっという間に過ぎ、試合再開。
そして、決着の時は、それまでの熱戦が嘘のように、至極あっさりとやってきた。
ぴぃぃぃ――!
長い試合の終わりを告げる、長い笛の音が鳴る。
「「ありがとうございました!!」」
整列して一礼し、エンドラインからネットに向かう両校の選手たち。その走る様を見れば、試合を見ていない者にも、結果がわかるだろう。
勝ったほうは、次へ向けた、力のある足取り。
負けたほうは、ばらばらと、揃わない足並み。
選手たちは握手を交わすと、今度は対戦相手の監督の元へ向かう。そこでまた一礼。続いて自軍ベンチに集合。監督が選手たちに一言、二言声をかける。そして、選手たちは最後にギャラリーの下に集合し、整列。声援を送っていた父兄に深く頭を下げた。
「「ありがとうございました!!」」
応援席からは、健闘を称える拍手。もちろん、全国大会でよく見るような何十人もの応援団がいるわけではない。だから、拍手といっても、ほんのささやかなもの。
そのとき、ぱちぱち、ととても控え目な拍手が、わたしの後ろから鳴った。
振り返ると、口を真一文字に結んだ透が、泣きそうな顔で小さく拍手していた。
送り先は、落山北だろう。
わたしは、透がわたしの視線に気付かないうちにそっと前に向き直って、マル秘ノートに試合結果を記入する。
ブロック大会北地区予選。
Aコート準々決勝。
落山北VS石館第二。
第一セット、25―27。
第二セット、25―23。
第三セット、22―25。
勝者――石館第二高校。




