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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第四章(城上女子) AT石館商業高校
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107(真里亜) 総力戦

 ばしんっ!


 二年生のエース対角――片山かたやましのぶこと、ノブちゃんがスパイクを打つ。


 それは、一、二セット目なら十分決まっていただろう、勢いのあるスパイク。しかし――、


 がっ!


 相手センターの大きな手に阻まれ、速度を殺されたボールは、何度打っても相手のコートに落ちてくれない。


 三セット目から登場した、170センチを超えるミドルブロッカー。


 館三だてさんの〝炎璧(Fire Walls)〟――望月もちづき姉妹の妹のほう。中学時代、あの〝炎璧(Fire Walls)〟を真正面から打ち抜けたのは、落中らくちゅう――ひいては北地区全体を見回しても、とおるちゃん一人だったと思う。


 ノブちゃんは、わたしたちの代の落中で、透ちゃんの対角だったウイングスパイカー。透ちゃんに次ぐパワーの持ち主。だけど、それでも抜けない。石館いしだて第二は本当にとんでもない秘密兵器を出してきたものだ。


 ぱしんっ、


 と、その望月炯子(センター)に速攻を決められる。これで石館第二の三連続得点。


 直後に本田ほんだ先生は椅子から立ち上がって、この第三セット、一回目のタイムアウトを取った。


 プレーが一旦止まり、選手みんながベンチへ戻ってくる。


「いいか、まずレシーブだ。コンビを使っていけ。あのセンターをサイドに回すな」


 集まったメンバーに、本田先生が簡潔な指示を出す。その邪魔にならないよう、わたしはドリンクを出したりタオルを渡したりと動き回る。


「それと、片山。なにも全部を全力で打たなくてもいい。半分の力でいいから、ストレートに打て。無理ならフェイントでもいい。前だと読まれるから、なるべく奥へな」


 手振りも加えて、先生はノブちゃんに対症療法を授ける。ノブちゃんは……うーん、あれはいっぱいいっぱいな顔だ。


「片山が下がったら、高橋たかはしを入れるからな。向こうの高いセンターが後衛バックに下がったら、一気に取り返すぞ!」


 ノブちゃんへの指示出しを終えた先生は、次にセッターの浅野あさの悦子えつこちゃんを手招きした。


 フリーになったノブちゃんに、エースの小椋おぐらようちゃんが近付いて、肩に手を回した。わたしは他のみんなのところを回りつつ、二人(特にノブちゃん)の様子を伺う。


「よう、ノブ。生きてっか?」


「どーだかな……。つーか石館三中(お前んとこ)の一年、中学からまた一段とデカくなってね?」


「永遠の成長期なんだろ。俺も中三で抜かれた時はショックだったさ――じゃなくて。マジでケイ(パワー)じゃ抜けねえから。あと、実際、速度コンビでもキツいだろうな。振れないと思ったほうがいいぞ」


「んなこたわかってる。透や丘中の〝(Snow on)(the Edge)〟と同期のミドルブロッカーが、半端なパワーとスピードでどうにかなるヤツかよ。けど、こう……なんか意外な弱点とかねえの?」


「ねえよ。館三うち望月姉妹(Fire Walls)は北地区最強のミドルブロッカーだぜ? いちい君か〝黒い(Headlong)鉄鎚(Hammer)〟を連れてこい。次点で館一だていちの〝ガン(Transistor)タンク(Glamour)〟でもいい」


「連れてこれるなら連れてきてる……」


 ノブちゃんは溜息をついてギャラリーに視線を向ける。透ちゃん(あと館一のキャプテンも)がいることは、試合の途中でわたしや他のみんなも気付いていた。


「で、何が言いたいんだよ、よう?」


「必要以上に熱くなんなってことだよ。ケイは単独でどうにかできる相手じゃねえ。避けるには、ぽんの言う通りコース打ちかフェイントだが――お前どっちも苦手だろ?」


「あたし詰んでんじゃねえか……」


「だから、一発に頼らず、繋いで繋いで粘り勝つしかねえんだって。とにかく、一人で決めようとしてプレーが雑にならねえように。それだけ、気をつけろ」


「……総力戦ってやつだな」


「結局、勝つには一番疲れるやり方しかねえんだ」


「誰もがゆきつく冴えないやり方か……ふぅー」


 タオルで顔を覆って天を仰ぐノブちゃん。昔から、苦しい場面でノブちゃんがよくやる仕草だ。


「いけそう? ノブちゃん」


 わたしが聞くと、ノブちゃんは、顔からタオルを取り去って、それをわたしに返す。


「どうにかやってみる。タオル、さんきゅな、真里亜まりあ


「頑張って!」


 そこで、「集合!」と矢吹やぶき奈央なおちゃんの声。ノブちゃんと燿ちゃんは輪の中へ。わたしは選手みんなが置いたスクイズボトルやタオルを素早く回収する。


「まだまだここからよ!! 全員で勝ちに行きましょう!!」


 キャプテンの奈央ちゃんが熱を込めて叫ぶ。


北高きたこうおおおおお――ふぁいっ!!」


「「おおおおおおおおッ!!」」


 コートへ戻り、それぞれのポジションにつくメンバー。


 手にはまだ片付けられてないボトルやタオルがあったけど、それを見ていたら、わたしも自然と声が出ていた。


「サーブカットぉー!! 一本集中っ!!」


 ここからは、全員で勝ちにいく総力戦。


 わたし(マネージャー)だって、その力の一部になりたいのだ。


 スコアは、12―16。


 みんな、頑張って……!

登場人物の平均身長:164.3cm

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