ねたばれ7
『ねたばれ』は、城上女バレー部の日常を主に台詞で四コマ漫画風に描くものです。過度な期待はしないでください。
<登場人物>
宇奈月実花:バレー大好き少女。一年生。声が大きい。
三園ひかり:中学時代はリベロ。一年生。背が低く、癖っ毛。
藤島透:中学時代はレフト。一年生。背がとても高い。
霧咲音々:中学時代はセッター。一年生。部活の時以外は眼鏡。
北山梨衣菜:中学時代は水泳部。一年生。漫画『High-Q!!』に感銘を受けた。
岩村万智:城上女バレー部・主将。二年生。テディベアに似ている。
立沢胡桃:城上女バレー部・マネージャー。三年生。
市川静:ポジションはセッター。最近部活に復帰した。三年生。
油町由紀恵:代打の切り札。最近部活に復帰した。三年生。
村田和恵:とあるお店の従業員。初めての人にも優しいお姉さん。
* 本格始動
――南五和との練習試合後・部室にて
梨衣菜「市川殿と油町殿が復帰して本格始動っスね。けど、なんか足りないような」
実花「本格始動と言えば、まりーなはいつバレーシューズを買うの?」
梨衣菜「それっス!」
胡桃「あと、あなたたちのチームジャージも頼まなきゃね」
透「チームジャージというと……」
音々「それですか?」
胡桃「そう。わたしがいつも着てるこれ」
ひかり「川戸先輩たちも着ていましたね」
万智「紺地に白のシンプルなデザイン。背中には毛筆体で『城上女子排球部』。由緒正しきジャージだよぉ。私も持ってる。静ちゃんはぁ?」
静「タンスの中にあると思う」
胡桃「まさかとは思うけど館商のも持ってたり……?」
静「ち、違う! 昔の卒業生が置いてったやつがあるからって、それを」
胡桃「本当に持ってるとは思わなかった」
万智「ま、まぁ、私も音成のハチミツジャージいただきましたからぁ!」
胡桃「万智は本当にいい子だね」
静「悪い子ですいません……」
* ねちねち
胡桃「由紀恵にはわたしから聞いておく。一緒に買ったけど、失くしてるかもしれないから」
万智「実費で購入なんだけど、それなりに高価なものだからぁ、一年生はおうちの人に相談してきてねぇ。希望者はサイズと、名前の刺繍を入れるから、フルネーム以外にしたい人はその旨をメールしてほしいんだけどぉ……」
胡桃「みんな試着できたほうがいいよね。三年間着るものだから、今後の成長見込みによっても、それぞれ変わるだろうし」
万智「じゃあ、次の日曜がいいですかねぇ。練習はお昼過ぎで終わりですよね?」
胡桃「うん。みんなの予定が会えば。梨衣菜のシューズもその時に」
梨衣菜「どういうことっスか?」
万智「えっとねぇ、私の家、スポーツ用品店なの。ジャージの注文もうち。石館周辺だと結構ご贔屓にしてもらってるんだよねぇ」
梨衣菜「なるほど! 自分は日曜おっけーっス!」
胡桃「他のみんなは、都合どう?」
ひかり・透・音々・実花「空いてます」
胡桃「静はどう?」
静「あ、私もシューズが傷んでるから買い換えようかな」
胡桃「ずっと部活休んでたのになんでシューズが傷んでるんすかね」
静「ごめんなさい……」
胡桃「あと一週間くらいはねちねち言うから」
万智(胡桃さん、悪い顔してますねぇ……実はちょっと楽しんでるのでは?)
* ようこそ
――店内
万智「ようこそ、スポーツショップいわむらへ! こちらは従業員の村田和恵さんでぇす」
和恵「よろしくね」
万智「お父さんはぁ?」
和恵「中で作業してるよ」
万智「ありがとうございまぁす。じゃ、みんな、私はちょっと着替えてくるからぁ、先に適当に見ててぇ。あと、和恵さん、試着用のジャージをお願いしまぁす」
和恵「はーい。それで、初めての子がいるって聞いたけど?」
梨衣菜「自分っス!」
和恵「じゃあ、早速シューズから見ていきましょうか」
* シューズ
ひかり「道具を使う運動部と比べると、バレーに必要なものはそんなに多くありません」
実花「最低限シューズがあればオーケー!」
梨衣菜「何を見て選べばいいっスか?」
透「一番は履き心地だね。細かく言うと、靴の重さ、硬さ、フィット感、クッション性、床との摩擦の強さとか、そういうの。バレーは足腰への負担が大きいから、できる限り身体に合ったものがいいよ」
音々「あとは見た目、デザインも大事よ。なるべくなら履いてて気分が上がるものがいいわね。ま、最終的にはフィーリングかしら。気に入ったメーカーが見つかったら楽よ。あたしなんかは、小学生の時からずっと同じメーカーのを履いてる」
梨衣菜「そのへんは水着選びに近いものがあるっスね」
和恵「ひとまずいろいろ試し履きしてみましょうか。多少なら跳んだり切り返したりしていいわよ」
梨衣菜「あざっス!」
静「……由紀恵はなんでバッシュの棚を見てるの?」
由紀恵「んー、やっぱバッシュでバレーすると微妙かなぁ」
胡桃「当たり前でしょ」
静「バッシュに近いのがいいならハイカットのバレーシューズにしてみたら?」
由紀恵「おおっ! そうするっ!」
* ソックス
ひかり「あと、シューズを決めるに当たって、ソックスも見てみましょう」
梨衣菜「ソックス? 靴下っスか?」
音々「そう。スクールソックスでも別に支障はないけど、すぐ穴があくわよ。バレーは厚手のソックスを履くわ。ハイとミドルがあるけど、これは好みかしらね」
和恵「とりあえず、ハイソックスをどうぞ」
梨衣菜「おおっ、かなり分厚いっスね!」
透「ユニフォームと同じで、試合の時はお揃いのソックスってとこもあるよね」
実花「くるみー先輩ー、どうなんですかー?」
胡桃「うちは特に合わせてないけど、色は慣習的に白か黒。柄はあまり目立たないもの推奨。あと、キャラものは避けて」
梨衣菜「了解っス!」
由紀恵「よっ! はっ! ほっ! あー、なるほどバッシュとは全然違うね!」
静「ちょ、由紀恵! 履き心地を確かめるのになんでハイキックしてるの!?」
胡桃「静、由紀恵が何か仕出かしたらあなたの監督不行届だから」
静「そんな!?」
* サポーター
梨衣菜「よし! 自分、シューズはこれにするっス!」
音々「随分さっくり決めたわね。もっと吟味してもいいのよ?」
梨衣菜「自分、この手のものはあんまり迷わないっスから。びびっと来たやつにするのが一番っスよ」
透「私は時間かかったなぁ……お店にサイズが置いてないときは試し履きもできないし」
ひかり「私はジュニア用から一般用に切り替えるタイミングで悩みましたね」
実花「じゃあ、次はサポーターでも見る?」
梨衣菜「サポーター?」
和恵「主に膝や肘につけるものね。床についたときの衝撃や摩擦から身体を保護するソフトサポーターと、筋肉や靭帯への負担を和らげるハードサポーターがあるわ」
梨衣菜「ふむふむ」
ひかり「私が普段つけているものがソフトサポーターです。私はポジション柄、床と接触することが多いので、膝も肘もパッド入りです。
装着感が気になるなら、パッド無しのもあります。アタッカーだと、肘サポーターはこちらが主流かもしれませんね。もちろん必ずつけなきゃいけないものでもありません」
梨衣菜「なるっス。ハードサポーターというのは?」
透「私がいつも膝につけてるのが、ハードサポーターだね。ハードサポーターは、筋肉や靭帯が伸びたり傷ついたりしないように固定するためのもの。着脱可能なテーピングみたいなものかな。
例えば、捻挫っていうのは、関節に無理な力がかかって靭帯が変なほうに伸びちゃうっていう、バレーで一番よくある怪我だけど、そのままぐらぐらにしておくと、力がかかるたびにさらに変な方向に伸びて、最悪切れちゃう。
そうならないために、捻挫したらテーピングで関節を固定するよね。ハードサポーターも役割は同じで、主に予防のためにつけるの」
音々「ハードサポーターか。あたしもしたほうがいいのかしら。ミドルブロッカーはセッターより膝にきそうよね」
梨衣菜「怪我はしたくないっスもんねー」
実花「普段からしっかり気をつけるのが大事だね! サポーターで予防するのはもちろん、綺麗なフォームを身につけること、ストレッチや筋力トレーニングで怪我しにくい身体をつくること——できることはいっぱいあるよ!」
和恵「ひとまず、ものは試しってことで、実際につけてみる?」
梨衣菜「はいっス!」
由紀恵「ねえねえ静! このソフトサポーターを、はいっ、手で持って! そして腰の辺りで構えて!」
静「こ、こう?」
由紀恵「よし! じゃあ、正拳突きするね!」
静「サポーターをミット代わりにするやつね! 小学生か!」
由紀恵「あ、じゃあこんなのはどう? 腕出して静!」
静「ちょ、由紀恵、やめ」
由紀恵「そいっ、そいっ、じゃーん! 鉄壁装甲ー!」
静「腕にいくつもサポーターつけるやつね! 小学生か!」
由紀恵「あとは両膝にもハードサポーターをつけて! 腰にもつけて! あとバンドもいっぱい巻いて! よしっ、これで静は立派なサイボーグだよ!」
静「だから小学生か!」
万智「お待たせしましたぁー。って静ちゃん!? なに小学生みたいなことしてるの!?」
静「ご、誤解だよ! これは由紀恵が」
由紀恵「あっ、このTシャツかっこいいなー」
静「やりっ放しか!」
* テーピング
梨衣菜「サポーターは要検討って感じっスね。膝や肘に何かをつけて運動するのは、すごい違和感あるっス」
実花「まりーなは元水泳部だもんね」
透「嫌じゃなければ、今度貸そうか? 一回つけて練習してみれば、感じがわかって、抵抗がなくなるかも」
梨衣菜「そうさせていただくっス!」
ひかり「あと必要なのは……」
音々「テーピングとか? あたしは自分用のを持ってるんだけど」
梨衣菜「ハードサポーターみたいに、怪我防止用にっスか?」
実花「そういうのもあるよ。でも、今ねねちんが言ったのは、たぶん指先保護用の細いやつのこと。だよね?」
音々「その通り」
梨衣菜「指先っスか?」
音々「ほら、あたしなんかは元セッターだったから、四六時中オーバーハンドをするわけじゃない?」
梨衣菜「そうっスね」
音々「で、今はいいけど、これがだんだん冬になって、指がかさついてきて、それでオーバーなんてしてみなさい。ぱっくり行くわよ。ぱっくり」
梨衣菜「え?」
ひかり「乾燥と衝撃で指先が割れるんです。普通に痛いですし、血が出ます」
梨衣菜「なんと!」
実花「冬の朝練とか、テーピング無しでやったらボールが血塗れになるよ」
梨衣菜「血塗れ!?」
透「指と指の間が割れたりすると、泣きながらスパイクを打つことになるよ」
梨衣菜「聞くだけで痛そうっス!」
音々「残念だけど、こればっかりは職業病みたいなものね。あんたはあんまり肌が乾燥しなさそうだけど、それでもあのぱっくりからは逃れられないわ。覚悟しておきなさい」
梨衣菜「う、うっス!」
胡桃「まあ、救急箱に共用のがあるから、今は必要ないと思うよ」
* マイボール
梨衣菜「あと必要なものはなんっスかね」
実花「マイボール!」
透「あぁ、いいよね、マイボール。部屋にあると落ち着く」
ひかり「無性に触りたくなるときがありますよね」
音々「えっ? なに、みんな持ってるの?」
実花・透・ひかり「うん(はい)」
梨衣菜「マイボールは、普通持ってるものっスか?」
音々「いや、どうなのかしらね。バレーは室内球技で、しかもプレーするにはある程度の広さが必要だから、ソフトボールやサッカー、テニス、バスケ……に比べるとマイボール所有者は少ないんじゃないかしら」
梨衣菜「みんなはいつもどんなときにマイボールを使うっスか?」
透「試合の前の日とか、緊張してるときに、触って落ち着く」
実花「私は毎晩抱いて眠ってる!」
ひかり「お風呂上がりなんかに触ると、表面が滑らかでひんやりしてて、気持ちいいですよ。頬や額にくっつけたり、素足でむにむにするのもまたさらなりです」
音々「誰一人本来の使い方をしてないじゃない。あと、藤島はなんで顔赤くしてるの?」
透「なななな、なんでもないよっ!?」
(後半へつづく)




