95(月美) おわり
プロの選手や、テレビ中継の解説者なんかも、たまに使う言葉だけれど。
バレーには〝流れ〟がある。
それなりの年数バレーをやってると、その流れってものが、不意に感じられることがある。
多くの場合、それとは気付かないうちに流されているものなのだが。
稀に『あっ、これは……』と、コートの中に何かよくわからないものが漂っているのがわかるのだ。
そして、それが、どういった結果を齎すのかも。
さて、試合はいよいよ大詰め。
スコア、24―23。
サーバーは雫。ボールは背の高い子のところへ。アンダーハンドでちょっと苦しそうなカット。ボールはネットから2メートルくらい離れたところに上がる。
そのときだ、ぱちぱち、とぽっちゃりした子が頭の上で手を叩いて、トスを呼んだ。
瞬間、わたしの全身に『あっ、これは……』の感覚が駆け抜けた。
「静ちゃんっ!」
「万智っ!」
市川静はぽっちゃりした子の呼び声に応え、レフトに回った彼女に正対して二段トス――これがまた惚れ惚れする滑らかさとボールコントロールなんだよな――を上げる。
それを、ぽっちゃりした子がフルスイングで強打。
こっちのブロッカーは信乃とはるだけど、
ばがぎゃ――!!
……お、おぅ、またすごい音したな。えっと、ぽっちゃりした子の打ったボールが信乃の右手に当たって、それがアンテナを直撃して――まあ、うん、つまり、あれだ。
ふぅ、と溜息。
同時に、笛の音。
ゲームセット。
ぴぃぃぃぃ、と長い笛が鳴る。わたしは涙目で振り返った信乃とはるの肩を叩き、とりあえず整列させる。可那は試合中と打って変わってだんまりで、既にエンドラインで仁王立ちしている。雫や小夜子、ベンチの珠衣や控えの二年生たちも並んで、相手コートを見る。
ぴっ。
「「ありがとうございましたー!!」」
二年越しの因縁の対決。
城上女子高校VS南五和高校。
途中に色々あったけど、結果としては、今回も南五和の負け。
……でも、
と、わたしはスコアボードを見る。
25―23。
前回と違うところもある。
負けは負けでも、今回は、ちゃんと最後までやり切ったんだ。
ひとまずは、誰一人欠けずに無事に25点を迎えたことを、喜ぶとしよう。




