8(ひかり) カウンター
バレーボールのコートあるところに、バスケットボールのゴールあり。
大抵の体育館なら、そうなっています。ゆえに、バレー部の練習の合間に、遊びでバスケをやることもあったりなかったり。少なくとも、私の場合、バレーボールの次に慣れている球技はバスケットボールです。
「ひっかりーん、やるーぅ!」
「朝飯前ですよ」
嘘ではありません。そこらの女子高生よりはやり込んでいます。だからこそバスケにエントリーしたわけですし。
「ところで、ひかりん」
「顔近っ……なんですか?」
こそこそ、と私にあることを耳打ちする宇奈月さん。
「ということなんだけど、できそう?」
「宇奈月さんがヘマしなければ」
「じゃ、今の段取りで」
にこっ、と笑って定位置に戻る宇奈月さん。
「ディフェンス集中ー!」
と星野さん。
そうですね。気を引き締めていきましょう。
私の相手は、タイムアウト前とは変わって、霧咲音々さん。
霧咲さんは自分のマークが宇奈月さんから私に変わったことに対して、軽く片眉を持ち上げる、という反応を見せました。
霧咲さん的には、宇奈月さんよりは私のほうがやりやすいでしょう。身長差が20センチ以上もあるので、高いところでボールを回す限り、私のマークなんてないも同然です。
が、もちろん、それならそれでやり方はあるわけです。
私は、周囲を見ながらドリブルしている霧咲さんに、ダッシュ一番突っ込んでいきます。
どの道パスを許してしまうのなら、早い段階で相手のボールをカットしに行ったほうが効率的。まだコートの半分も進んでいなかった霧咲さんに、私はプレッシャーをかけます。
霧咲さんはドリブル突破を狙いますが、そうは問屋が卸しません。
だむだむ、だむだむ――。
左、右、左、と何度か牽制のように私の出方を伺う霧咲さん。残念ですが、縦ならともかく、横は行かせませんよ。
霧咲さんの目が動きます。パス狙い。私も同様に相手チームの人たちの位置を確認し、両腕をいっぱいに広げて、パスコースを塞ぎます。
それでも、私の身体では、全部をカバーすることはできません。
一度フェイクを入れた霧咲さんは、私の塞いでいる方向とは逆、藤島さんへとパスを出します。
それを、
「もらいーっと!!」
宇奈月さんがカット。
えっ今どこから飛び出してきた!? と霧咲さんも驚きのご様子(私もちょっとびっくりしました)。
でも、これは作戦通りです。
ゴール下で藤島さんにボールを回してしまったら、ほぼ確実に点を取られます。
なら、藤島さんへのパスを、通さなければいい。
私と宇奈月さんは、マークは違えど、二人掛かりで霧咲さん・藤島さん間のインターセプトを狙っていたのです。
そして、奪い取ったボールは当然、
「っしゃあ、速攻だー! ひっかりーん!!」
「――っ!?」
動揺する霧咲さんを置き去りに、私は相手コートへ全力疾走。
宇奈月さんの豪速球パス(一発で手が真っ赤になりました)を敵陣地中央で受け取り、誰もいないゴールを目指します。
ちらっ、と横を見ると、星野さんが全身を使ってうまいこと道重さんを締め出していました。有難い。
もちろん、ノーマークのレイアップシュートを外す私ではないので、カウンターは大成功。
スコアは、8―12。
背中、見えてきましたよ。




