表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

狐さんと装備

 穂香は再び自分の収納画面に向き合った。


(蟻のアイテム見た後だとこっちの方がましに見えるな~)


 蟻肉というワードは穂香には衝撃的過ぎたので、こちらのアイテムが普通に感じられた。それに蟻より、スライムやカマキリの方がいいもののような気がする。


「ん~、よし! とりあえず出してみよう!」


 穂香は悩んでいても仕方ないと、アイテムを取り出してみることにした。


「まずは、スライムの皮膜からにしよう」


 穂香がスライムの皮膜を<収納>から取り出そうと考えると、目の前の空間に半透明物体が出現した。半透明の物体は分厚い参考書くらいの大きさで、向こうが透けて見える。

<収納>にしまってある物を取り出すときは、取り出そうとしたものが一度ホログラムのような状態で表示されるのだ。そして、取り出すという意思を持った瞬間に実体化するようなのだ。ちなみに取りだす意思を持たずにホログラムに触れるとすり抜けしまい触れることができなかった。


 穂香が目の前に浮かぶ半透明の物体を両手で掬い上げるように手を出し、取り出すと念じるとそれは実体化されて穂香の手に収まった。


「ふぉ~~」


 スライムの皮膜は、実体化されてもなお半透明のままだった。しかし、手にはしっかりとした質量が伝わってくる。少しひんやりしていて、触った感触は想像していたより硬く、低反発クッションのようでありながら表面はぷにぷにもちもちとしていて、いつまでも触っていたくなる魅惑の感触をしていた。


「あぁ~、これダメなやつだ~。枕にしたらいつまでも眠っちゃいそ~」


 穂香はスライムの皮膜の感触を気に入り、頭を乗せてみたりとひとしきり触感を楽しんだ。


「でも何に使えばいいんだろ? まぁ、休憩の時のクッションにはなるかな。それにしてもこれ何でできてるのかな? ゼラチン? もしかして、食べれたりして……。まぁ、次にいこう次に」


 穂香はスライムの皮膜を収納に戻した。収納に物を入れるときは収納するものを手に持ったまま、収納画面を開いて収納に入れると念じると収納できるので簡単だ。

 気持ちを切り替えた穂香は、サポートボードに表示された白刃蟷螂の鎌に意識を向ける。すると禍々しい鎌の映像がでてきた。


「鎌か~、武器になりそう。でもこれどこを持ったらいいんだろ?」


 どうやらこのアイテムは巨大カマキリの手に付いていた大鎌の部分だけのようだ。刃が下に向いた状態だと受け取るのが怖いので、穂香が刃を横に寝かせるようにイメージすると、映像の鎌が回転してイメージ通りの状態になった。


 両手で鎌を手に取ると、ずしッとした確かな重みが手に加わった。しかし、穂香が想像していたほど重くはなく、だいたい1kgくらいの重さだ。それよりもその刃の刀身に目を奪われる。


「すごい綺麗。よく研がれた包丁の刃みたい」


 白刃蟷螂の鎌は、その名の通りむき出しの刀身をさらしていた。怪しく光る鎌が木を切断してしまうほどの切れ味を持っていることを思い出して、穂香はごくりと唾を飲んだ。

 鎌をよく見てみると根元の部分は刃にはなっていなかった。おそらく関節の継ぎ目の部分なのだろう。少しだけへこんでいるのがわかる。


「……これって武器を装備してることになってるのかな?」


 鎌を手に持った状態で、装備画面開いてみる。しかし、何も装備していることにはなっていなかった。


「ん~、これじゃダメなのかな? それとも装備の仕方があるとか……」


 穂香が武器という項目に意識を向けると『白刃蟷螂の鎌を装備しますか?』とポップアップ表示が出てきた。


「わぁ! 当たった。装備します!」


 穂香がそういうと装備画面の武器項目に白刃蟷螂の鎌が記載された。


「じゃあ、次は防具……何も出ない。まぁ、そうだよね。あと一応装飾はっと……え!?」


 穂香は驚きの声を上げた。そして思わず手に持っていた鎌を手から滑らせてしまった。そして、鎌はするりと落ちて穂香の脚近くの地面に突き刺さった。


「ひゃっ!」


 鎌は落ちた高さからでは考えられないほど深く地面に刺さっていた。それを見て、穂香はもし自分の脚に当たっていたら大変なことになっていたかもしれないと冷や汗をかいた。


「ものすごい切れ味……。流石にこのままじゃ使えないし、危ないから今は装備しないでしまっておこう」


 穂香は恐る恐る鎌を引き抜き、穂香はすぐに装備を解除して白刃蟷螂の鎌を収納にしまった。

 鎌をしまって人心地ついた穂香は、もう一度装備画面を見つめる。防具同様に装飾も装備できるものがないと思っていたのに、ポップアップには『瑪瑙の勾玉を装備しますか?』と表示されたので驚いてしまったのだ。


「勾玉って、お祖母ちゃんから出雲行ったお土産にもらったこの勾玉のことだよね?」


 穂香は自分の首にかけている紐に付けた勾玉を手のひらに乗せた。それは、濃い緑色をした3cmくらいの勾玉で、ふっくらとして丸みを帯びている。穂香は知らないが、そのコロンとした形状は出雲型勾玉の特徴である。だが、なぜこの勾玉が装備できるものになっているのかはわからなかった。


「まぁ、いいや。装備できるなら装備しておこう」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<装備>

 武器:なし

 防具:なし

 装飾:瑪瑙の勾玉

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 勾玉を装備することによる効果はわからないが、せっかく装備できるなら何かしら役に立つことがあるかもしれないと穂香は勾玉を装備するのであった。

読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ